40 お使い
(ふあぁ~。眠い)
結局、昨日の夜は警戒したまま一睡も出来なかった。
しかも、緊張した状態で魔力探知を使い続けていた影響か、神経がすり減ってしまってとにかく眠い。
そのせいで、晩餐が成功したお礼をヴァルタさんから聞きいている最中も俺は欠伸を繰り返していた。
「ティトおねむなの?」
(うっ、うーん。大丈夫だよ、イリナ。それより今後のことを考えないとね)
「エルフの手がかりと言えばイリナの持っていた金貨と、マルス共和国にエルフがいるって情報くらいよね」
「じゃあ、マルス共和国にすぐ向かうのかな?」
「ゆっくりでいいの。冒険なの!」
「さすがに直通の馬車はありませんが、イリナ様用の馬車なら手配いたします。この度は大変ご助力いただきましたので、それくらいは当然でございます」
ヴァルタさんが丁寧に礼をする。
セイガさんがそれを見て頷き、こっちを見た。
「急ぎでないのなら、まずはこの街でしばらく冒険者をしてみたらどうだ? ヴァルタ殿に色々便宜を図っていただけるだろうし、慣れるにはうってつけの土地だろう?」
「私としてはどっちでも良いわねー。ダーリンの判断にまけせるわねー」
(うーん。イリナの故郷がマルス共和国で確定しているってわけじゃないし、途中で故郷の場所が分かる可能性もあるから、ゆっくり行くのは良いと思うけど、セイガさんは付いてきてくれるのかな?)
当初の目的には、セイガさんや大人のサポートも考えていた。
正直、馬車の存在よりも重要なのだ。
俺の意見を聞いてノエルがセイガさんに尋ねてくれた。
「お父さんはこの後どうするの? 付いてきてくれるの?」
「ああ~、そうだなー。⋯⋯ノエル達は心配なんだが村でやってることを放り出すわけにもいかんしなー」
「大丈夫だよお父さん。イリナちゃん達はボクがしっかり守ってみせるから!」
「ノエルの実力は心配してないさ。だが、イリナ様もノエルもマルス共和国がどこにあるのかわかっているのか?」
「「⋯⋯⋯⋯?」」
イリナとノエルが見つめ合って首を傾げ合う。
森から出たことのない俺も含めて、期待はできそうにない。
(まずは地図を買ってからルート決めだな)
「地図を買いにいくのー」
「おー」
ヴァルタさんに地図を売っている店までのルートを書いてもらった。
お金の方は、ヴァルタさんは事情を知っているので、俺の出した野菜を買い取って貰った。
今後の事も考えて、俺の生産物をお金に変える手段も必要だと思った。
街を歩いている途中、魔力探知を使って周囲を見ると、少し離れたところにセイガさんがいて見守っていた。
(いや、初めてのおつかいじゃないんだから! まあ、ありがたいんだけども!)
「どうしたのティト?」
(んー。なんでもない)
俺はイリナに抱え上げられながら、突っ込みを入れた。
しかし、セイガさんが付いてきてくれている安心感と、昨日の疲れから完全に油断していた俺は、周りの異変に気が付くのが遅れてしまった。
(待ってイリナ! ノエルは?)
「あれ? ⋯⋯いないの」
(おかしいぞ? いくらなんでも周りに人がいなさすぎる)
地図を見ながらイリナが何個目かの路地を曲がった時のは、セイガさんはおろか、ノエルの姿もなくなっていた。
そして、路地の先に道を塞ぐように一人の男が立っている。
それは、昨日の晩餐会で俺の視線に気がついた、あのシルクハットの男だった。
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