31 ティトマークⅡ
「これから街に行こうというのに、その様に軽率に動かれては自ら危険を招き入れるようなものですよ。まずはご自分の特殊さを⋯⋯」
俺とイリナは正座でヴァルタさんの説教を聞いていた。
まぁ、イリナはまだ俺に包まれたままなので正座とは言えないが。
イリナの魔法の効果はてきめんで、説教をされている俺達の後ろでは、セイガさんとノエルがいそいそと残りの土砂を運び出してる。
もうほとんど崩れる前の状態だ。
「ヴァルタ殿、それくらいにしておきましょう。戻られる事を決めたくらいですから、急いでおられるのではありませんか? 子供たちのフォローは大人の私たちがいたしましょう」
「それは⋯⋯確かにそうですね。領主様を教育していた時を思い出して、少し熱が入ってしまいました」
セイガさんの進言でヴァルタさんの説教から解放された俺とイリナは安堵の息を吐く。
「それから⋯⋯」
「(はい)」
「その包んだ状態はどうしても必要なのでしょうか。さすがに目立ちすぎてしまいますので」
ヴァルタさんの指摘で考えてみる。
これから街まで長い距離があるので、疲れたイリナを運ぶ時にはまた使いたいが、別の方法も考える必要はあるだろう。
この姿はイリナを守ったり逃げたりには便利だが、確かに街の中をこのまま歩くのは無理がある。
(もう少し自然な感じにしなきゃ駄目ってことだよな)
とりあえずはイリナを出そう。
包んだ状態を解除してイリナを解放するとイリナがへたり込む。
急に自分の力で立たなければならなくなってか、立ち上がってもフラフラしていた。
「うー。立つのつかれるのー」
(イリナをあんまり楽させるのはマズイかも。怠惰なイリナになっちゃってるよ)
そうは言いつつ、今度は動きをアシストするイメージでやってみる。
まずはイリナを立たせて頭に飛び乗ると、棒人間の様に体を伸ばしてイリナの体に添わせる。
そして、関節の部分だけを保護するように丸く包んでいく。
イメージはSFに出てくる外骨格だ。
テイムのお陰でイリナの思考に合わせることは出来るので、これなら目立たずにアシスト出来るはずだ。
(イリナ、試しに自由に動いてみて)
「わかったの。あっ、体がかるいの!」
イリナの動きに合わせてるのは成功しているようで、違和感無く動いている。
本人の能力以上に早く動く事は出来ないと思うが、足の裏からジャンプをアシストしてやれば、通常より高く飛び上がる事が出来た。
「高いの! 早いの! 強いの!」
(今度は、あの岩を持ってみて)
「持つの! イリナ最強になったの!」
力に関してはイリナの関節を痛める心配がないのでフルに能力を使えた。
関節をつないでいる部分の太さに依存してしまうがなかなかのものだ。
デザイン的にも、少し近未来的に見えなくはないが、関節部分がリング状のぷるぷるになっている程度でそういうファッションだと言い張れないでもないはずだ。
(我ながら会心の出来だな)
俺が満足していると後ろから怒気のような圧を感じる。
「ティト様? 私の言ったことが理解できていないようですね?」
(ええっ、がんばったのにー)
「まぁ、落ち着きましょうヴァルタ殿。見た目はさっき程よりは全然マシですよ。力さえ押さえればマントで隠すことも出来ますし目立ちません。力さえ押さえれば」
(押さえます。押さえます)
「だいじょうぶなの。あんしんするの」
セイガさんが庇ってくれたので俺とイリナは慌てて頷いた。
「まぁ、街に戻ると言っても距離はありますから、その間によく言って聞かせることにしましょう」
そういったヴァルタさんの目は、言葉とは裏腹に少し楽しそうだった。
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