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勇者タカユキと魔王の戦い~異世界パンツ英雄譚~  作者: 月見七春
第一章 はじめまして、パンツ
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第六話

 06------>>




 つやつやした顔のクルルが着替えをする間に、俺は脱いだパンツを探そうとした。

 ……ん?

 妙な違和感を覚えつつ、腰を見下ろすと鎮座するマイサン。

 ……あれ?

 部屋に設置された鏡で自分の姿を見る。

 全裸だ。そりゃあそうだ。やることやったってのに、パンツ装着してたらおかしい。

 あと染みが出来る。唯一身に付けたパンツに染み。これ以上の屈辱があるだろうか。いやない。

 そうじゃない。


「なあ、クルル」

「なあに?」

「……俺のパンツ、永遠に脱げないとか言ってなかったか?」

「言ったけど、それがー?」


 どう言おうか凄い悩んだけど。


「……脱いじゃった」


 これ以外の言い方が思いつかなかった。


「え? あっ!」


 どたどた、と足音を立てて駆け寄ってきたクルルが跪き、マイサンを睨む。


「ちょ、おま」


 そんなに見つめられるとおっきしちゃうだろ。


「――……あ」


 血の気が引いた顔をしてマイサンを見つめるクルル。

 どうしたらいいんだ。

 いや、そうじゃない。


「どうしたんだ?」

「き、昨日、飲んで盛り上がったわよね。冒険者たちと」

「……ああ、まあ。お前が奢るって言ってからは特に凄かったな」

「その時……宴会芸的に、魔法を使ってあなたを燃やしたの、覚えてる?」


 そんなことされたっけ。

 なんて気軽に考えるところじゃない。


「お前なにしてくれてんの」

「ま、ままま、まって! まだあるのよ、話の続きが……」


 視線で促すと、クルルはマイサンの前で指を突き合わせながら困ったように上目遣いで見上げてきた。


「その時、パンツが燃えちゃった」

「お前なにしてくれてんの!」


 思わず両手人差し指をクルルのウサミミの中に突っ込む。


「あっ、あっ、あっ」


 もぞもぞするだけで恍惚の表情になりながらヨダレを垂らすクルル。


「あーーーーっ!!!!」


 がくがくと痙攣して倒れた。

 ミミが弱点なのは、何発もいちゃついて調査済みだ。


「まったく……どうすんだよ。他のパンツ履けないんだぞ」

「ううっ……め、女神さまになんとかしてもらえないかしら」

「困ったときの神頼みか……まあ、それしかないか」


 やれやれ。

 女神のパンツを掲げてみる。


「……そんなんで呼べるの?」

「知らないけど、やってみる価値はある。ごほん! あー、あー」


 喉の調子を整えてから、天井に向かって呼びかける。


「おおい、女神。出てこないとパンツの股布部分を執拗に舐めるぞ」

「やめろばかー!!!」


 天井にぼんやりとした光が現われたかと思うと、後光を背にして女神が顔を出してきた。


「ほら、来た」

「方法に問題がある気がするけど……黙ってる。なんだか正気を疑いたくなるし」


 半目でなんともいえない表情になるクルルはそっとしておくとして。


「悪い、冗談だ。それよりさあ」

「そんな軽く流す問題? 女神のパンツその程度の扱いなの? ひどくない? いや大事にされるのも困るけど――」

「いいかな。話し続けても」

「あ、うん。うん。そうね。長くなっちゃうもんね。しょうがないから続けて」


 こいつも大概適当だよな。まあいいけども。


「パンツが燃えてなくなってさ。他のパンツ履けないし困ってるんだけど」

「おう。道理で粗末なものをぶら下げ……でかっ。え、でかくね? 勇者でかくね?」

「いいから。ていうか女神なんだから恥じらえよ」

「女神とは関係ないナニだからどうでもいいんですー! って、おい! 女神に下ネタ言わせんなばか!」

「自分で言ったんだろうが! ああもう、疲れるからさっさと教えてくれよ」

「しょうがないにゃあ」


 それは見抜きOKという意味……うっ、頭が。


「勇者はねー。勇者専用装備しかー。身に付けられないだにゃあ。可哀想だにゃあ」

「てめえなめてんのか」

「なめてないにゃあ。可愛さアピールだにゃあ」

「うざっ。っていうかあのパンツ勇者専用装備かよ。ブリーフだぞ」

「ある意味勇者! 着方次第で変態仮面。なんつってー!」


 ひゅううう! いええ! なんて歓声が女神の周囲から聞こえるのがうっとうしい。


「まあ変態仮面になられても困るからね。勇者だし。勇者だけに全裸で行くのもまた一興? 勇気を出して全裸で歩くべし!」

「ふざけんな!」

「んー。勇者専用装備を手にするか、或いはとある方法を用いれば全裸じゃなくなるけど」

「なにそれ」

「女子のパンツは履けるよ」

「……わっと?」

「だからー。女子のパンツは履けるよ?」

「…………なんて?」

「もー何度も言わせないでよー。女子のパンツなら履けるっていってんの。あ、脱ぎたてのヤツ限定だから気をつけてね」


 そんな補足聞きたくなかった。


「おお神よ、なぜそのような試練をこのわたくしめにお与えになるのですか」

「あ、混乱してる。タカユキ混乱してる。めっちゃうけるー! ふうううう!」


 HAHAHAHAHAHA! そんな大爆笑が後光から聞こえるのが実に腹立たしい。


「っていうか女神、お前一人じゃないんかい! 誰が笑っているんだ、直に抗議してやる!」

「え? え? わからない、え? 女神しかいませんケド?」


 途端に目が泳ぐ女神にパンツを突きつけて叫んだ。


「こっちこい、お尻叩いてやる!」

「え、あ――」


 ぼすん、と光が弾けて消えた。

 その途端、目の前に女神が現われた。

 どうする?

 尻を叩く。


「きゃああああ! 抱えないで触らないでけだもの全裸最低男-!」

「こんの!」


 手を振り下ろした時にはもう、女神は消えてしまった。

 またしても天井に後光つきの女神が現われる。


「ふう、あぶないところだった」

「……ちっ」

「あの、タカユキ。女神相手に本気の舌打ちやめて。こわい」

「……ったく。で? 勇者専用装備ってのはどこにあるんだ?」

「んー。そこのウサミミに聞いて。かつて世界を救った勇者の祠がいくつかあるから、そこを巡れば手に入るんじゃない? 的な的なてきなー! でも村を救うのも忘れないでねー! さっすが女神、忘れないねえ指摘できるねえ! いけてる女神だねえ! ふううう!」


 苛立ちゲージとストレスゲージがマッハで極値なんですけど。


「じゃ、またね! あ、あとあたしのパンツ履いたら酷い呪いをかけるから! ついでについでに、あたしのパンツの機能制限かけたからな! 悪用すんなよ!」

「女神のパンツ使ってすげえ力出せるかと思ったら全然だったの、お前の仕業かよ!」

「ふうううううー!」


 両手の人差し指をこっちに向けてどや顔、という妙なポーズで女神は光と共に消えた。


「……はあ」


 心底疲れたため息を吐くクルルに思わず尋ねる。


「なあクルル。なんで会話に入ってこないんだよ」

「なんか……女神と関わると頭が悪くなる気がして」


 女神につくべき「さま」が消えた件について。


「っていうかお前のせいだからな! パンツ燃やしてどうしてくれんの!」

「いたいいたい! 頭を掴まないで!」

「まったく……じゃあ、ほら」


 手を差し伸べたら、クルルはきょとんとして首を傾げた。


「ほらって、なに?」


 いやだから。


「パンツ脱げ」

「……ちょ、え? さんざんしたのにまだしたいの?」


 赤面しながら目をあちこちにさ迷わせるな。


「そうじゃねえよ! 全裸で外を歩きたくないから、お前のパンツを寄越せと言っているんだ!」

「わ、私のパンツ履くの? この変態!」


 あわてて逃げ始めるクルル。まだ外套をつけていないから、短いスカートがひらりと翻って見える縞パンが露わに。

 なんだろう。

 わくわくする。

 すごくわくわくする。


「ひゃっはー! 女の縞パンをうばえー!」

「めが! めがこわい! いやああああ!」


 ばたばた逃げ回るクルルに大分して押し倒し、身を捩るクルルと転がっていたら、なんだかお互いに盛り上がってきて……

 ま、まあとにかく。

 白ブリーフから縞パンにチェンジ。

 ノーパン状態が落ち着かない様子のクルルがぼそっと、


「っていうか私が男物を買ってきてさ? それで履いて脱いで渡せばさ? タカユキの見た目の変態度が増さずに済むし、こんなことにならなかったのでは? そう思うのですよ……」


 と言った。


「おう……」


 あまりにもその通り過ぎて、しかも考えつかなかった自分はうっかり者だ。


「た、確かに」

「えっちばかへんたい、しんじらんない」

「ま、まあ。その……すまん」

「いい……ゆるす」


 涙目で見つめられると罪悪感がやばい。

 結局、旅立つのは夕方になりました……。

 白ブリーフ → 全裸 → 縞パン → トランクス。

 もう何も怖くない。




 つづく。

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