タイトル未定2026/04/12 02:55
冷酒をゆっくり飲んでいた馬場は、少し真面目な顔をして聞いてきた。
「ずっと、気になっていたけどんさぁ」
冷酒を飲んでいた流花は、馬場をみつめた。
「シロちゃん、マスターのことどう想ってんの?」
馬場の言葉に、流花は小さく笑った。
「……流花ちゃん?」
馬場は、怪訝な顔をした。
「スイにも、同じこと聞かれた」
「そうか。スイちゃんにも、同じことを聞かれたんだ。で、スイちゃんになんて答えたんだ?」
「一緒にいて、楽しいって思うだけって、答えた」
「本当に、そう思っている?」
冷酒を飲みほした流花は、短く息をついてから言った。
「一緒にいて、楽しい。ホント、そう思っている。マスターのことが好きとか、そんなこと自分でもわからない。ただ……」
「ただ?」
「バイト先がマスターの店だから、私はマスターと一緒にいる。そんな私を、スイは嫉妬をしていた。スイから嫉妬をされていることを知って、私はスイに申し訳ない気持ちになっている」
冷酒を飲んだ馬場は、再び真剣な顔をして言った。
「シロちゃん、マスターといて楽しいんだろ?」
「楽しい……うん……楽しい」
「それで、いいんだよ。それが、シロちゃんなんだから。申し訳ない、なんて思うな」
流花は、馬場をじっとみつめた。
居酒屋に入った時の後ろ姿の頼もしさと言い、本音で語る馬場が、いつものお調子者キャラの馬場と違い別人に思えた。
「……馬場さん。まるで、騎士みたい」
「な……なんだよ」
顔を背け、照れくさそうに言った。
「嬉しいことを、言ってくれるなぁ〜今夜俺は、シロちゃんの騎士だよぉ」
照れて言う馬場を、流花は見つめていた。
居酒屋を出た流花と馬場は、繁華街に出る、街灯が少ない薄暗い路地裏を歩いていた。
二人の目の前を、千鳥足で歩くサラリーマンの二人組が歩いてきた。
二人組は流花と馬場に、からかうような視線を投げてきた。
流花は、馬場の背中に隠れるように歩いた。
すれ違いざま二人組は、流花と馬場に向かって言葉を投げた。
「見せつけるねぇ」
「可愛い姉ちゃんだな。俺たちにも、わけてくれよ」
馬場が睨みを利かせると、二人組は、馬場に向かって罵声を投げたが、馬場は涼しい顔でやり過ごした。
「大丈夫。今夜俺は、シロちゃんの騎士だよ」
うつむいていた流花は、馬場の洋服を握りしめていた。




