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タイトル未定2026/04/12 03:26

 よく晴れた土曜日。

 繁華街の待ち合わせ場所で、若菜と流花は落ち合った。

「スイ!髪型!」

 第一声は、流花のそれだった。

「短大生になったから、イメチェン?でもないけど」

 照れながら言う若菜の髪型は、高校生の時からのトレードマークのツインテールの髪型を、トップで縛り更にうなじの辺りで一つに縛って長い髪を垂らしていた。

「おかしい?」

 髪型を気にする若菜に、流花は言った。

「ううん。大人っぽい!」

「ありがとう!」

 若菜は笑顔で言い、更に流花に言った。

「お腹すいた!シロちゃんと行きたい店があるんだ」

 若菜は、流花の腕を組みながら言った。

 いつもの若菜に流花は、ホッとしていた。


 若菜が流花を連れて行った店は、人通りが少ない路地裏にある、さびれた中華屋だった。

 お世辞にも綺麗とは言えない店内で、客層も近所の五十代くらいの男性が四名いたくらいだった。

 女性客は、若菜と流花の二人だけだった。

 男性客や店のスッタフが若菜と流花の出現に驚き、二度見をしたほどだった。

 店内が一気に、華やいだ。

 若菜と流花は隅のテーブル席に座り、若菜は流花にメニュー表を渡し、セルフサービスの二人分のお手拭きとお冷を取りに行った。

「ありがとう」

 流花は、若菜からお手拭きとお冷を受け取った。

 中華屋とうたっていたが、メニュー表には中華意外にも、一品料理や丼ものや定食いろんな料理名が書いてあった。

 流花は思わずメニュー表に釘付けになり、若葉に小声で言った。

「ここ、本当に中華屋?」

「私も、最初そう思った。でも、どの料理も期待を裏切らないよ」

「わぁ、それは楽しみ!」

「シロちゃん、何にする?」

「そうねぇ……チャーハンに、しようかな」

「じゃあ、私も同じのにしようかな」

 若菜は店のスッタフを呼んで、チャーハンを注文した。

「電話、ありがとう。髪型と言い、スイなんか感じが変わった。短大楽しい?」

「親しい子はいないけど、同じグループの子たちと楽しくやっているわ。シロちゃんは?」

 若菜が言った「親しい子はいない」と言う言葉。

 思ってもいなかった若菜の言葉に、流花は小さく驚いた。

「私も、楽しくやっているよ」

「でも、シロちゃんといるときの方が楽しい」

 流花は何も言わず、微笑んだ。

 近況報告をしていた時、チャーハンが運ばれた。

 お手拭きで手を拭いたあと、早速食べだした。

「……美味しい」

 チャーハンを食べた流花は、驚きの声を上げた。

「でしょ!私も初めて食べた時、驚いた」

 それからは、無言のまま食べだした。

 食べている間、客たちは居なくなり、若菜と流花の二人だけだった。

 チャーハンを食べ終えた後、若菜は顔をゆっくり上げて言った。

「馬場さんから赤井さんの出張先を聞いて、赤井さんに会いに行ったの」

「赤井さんに……赤井さんに会えた?」

「もう一度、やり直したいって、自分の気持ちを伝えたくて」

「それで、伝えたの?」

 若菜は、首を横に振った。

「赤井さん、女の人と一緒に歩いていた」

「女の人……一緒にいたからって」

「新しい彼女だよ!」

 流花の言葉を、若菜はさえぎった。

「新しい彼女だよ。手を繋いで仲良く歩いていた」

 流花は何も言えず、若菜を見つめていた。 

 若菜と流花の間に、沈黙が流れた。

 そんな時店主が、二人の側にやってきた。

「可愛い、お姉ちゃん達だねぇ。これサービス」

 店主がテーブル席に置いたのは、プリンだった。

 店主にお礼を言い、店主が居なくなると若菜が言った。

「このプリン、美味しいの。嬉しいぃ」

「そうなの?」

 昔ながらの少し硬めのプリンを食べた流花は、目を細めた。

「……美味しい」

「でしょ!」

「もしかして、この店赤井さんと一緒に来た店?」

「うん」

「そっか。だから、スイはこんなチープな店を知っていたんだ」

「美味しかったから、また食べに行きたかったんだ。今度は、シロちゃんと一緒に食べたかったんだ。今日は、凄く嬉しい」

 ……ホントは、赤井さんと行きたかったんでしょ。

 思わずそんな言葉が出そうになった流花は、笑顔で言った。

「良いお店教えてくれて、ありがとう。料理は美味しいし、店主は優しいし」

 流花の最後の言葉を聞いていた店主は、真っ赤になって両手で顔を覆った。

 その姿を見た若菜と流花は、声を低くして笑った。

 笑いが収まると、若菜が突然切り出した。

「マスターって、シロちゃんをいつも見ているよね。短大の入学式に着ていくスーツをマスターに見せに行った時、シロちゃんマスターと楽しそうに笑っていた」

「あぁ、あの時か。馬場さんと友光さんの掛け合いが楽しくて、そのことをマスターに話して、つい笑っちゃった」

「シロちゃん、知ってる?マスターは、声を上げて笑ったりしないよ」

「えっ……」

「シロちゃんの前だから、マスターは自然に声を上げて笑えるんだよ」

 ……マスターが、声を上げて笑う。

 それはいつしかあたりまえのように感じ、深く考えたことがなかった。

「シロちゃん、マスターのこと好き?」

 以前若菜は流花に「マスターのこと、どう思っているの?」と、聞いたことがあった。

 今日初めて若菜は、ド直球な質問を流花にした。

「そんなこと……考えたことなかった」

「アタシが言うのも変だけど、誰に気兼ねなんてすることないんだよ。マスターが好きなら、素直に好きって言って」

 ……私は、マスターが好き……?

 流花は、初めて自分に問いかけた。

「マスターと一緒になる相手がシロちゃんなら、アタシ応援しちゃう!シロちゃんじゃなきゃ、嫌だ!」

 そう言った若菜はバックから、ピンク色の縁結びのお守りを出して流花に手渡した。

「これは……」

「神社で買った縁結びのお守り。アタシには、もう必要ないから」

 流花は手の中の縁結びのお守りを、見つめていた。

「マスターと一緒になってね。アタシは、大丈夫!保育士になったら、またツインテールに戻すんだ。可愛い恋人たちに囲まれるのが私の夢!」

 泣き笑いの顔をして楽しげに言う若菜を、流花はじっと見つめていた。

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