タイトル未定2026/04/12 03:15
最終のバスに乗った流花は、バスに揺られながら、携帯を眺めていた。
そこにはマスターのマンションに行った時、自分が撮ったマスターと大門の動画や、マスターが撮った、波打ち際で流花と大門と一緒にはしゃいだ動画があった。
動画を眺めていると、ラインの着信音が鳴った。
流花はラインを開いた。
自分がマスターに「しばらくバイトを休む」と送った、ラインの返事だった。
「承知しました。身体に気をつけて、無理はしないでください」
ラインの文章は、マスターの優しさが溢れていた。
……何故、強がったんだろう。素直に、マスターに甘えれば良かった。
昼間、渚にコーディネートをしてもらった洋服が入った紙袋を流花は見つめた。
その紙袋を両手で抱えると、声を殺して泣き出した。
数時間後、店から上がったマスターは、マンションのリビングにいた。
リビングには大門専用の大きな棚があり、マスターは棚から買ったばかりのゲーム機を出した。
ゲーム機が入ったケースのファスナーを開けると、ゲーム機本体とソフト以外に、コントローラーが二つ入っていた。
マスターは、エスカレーターに乗っていた時、同年代の男女と楽しそうに歩く流花を思い出していた。
自分と流花の年の差を、ハッキリ思い知らされた。
大学入学式後、流花も「二人で出かけたい」と、マスターの気持ちに寄り添った。
ところが今夜流花は、「二人で出かけるのは、少し考えさせてください」と手のひらを返したように言い出した。
大学に行き、同年代の友人と付き合うようになり、やはり同年代の友人たちと会うほうが楽しいと思えるようになったのか。
それは、凄く自然なことだ。
自分は流花と年が離れていて、血の繋がりのない大門を養子に迎え、育てている。
同年代の友人たちの付き合いを大事にしたい流花の気持ちがよくわかる。
マスターは、手の中のゲーム機をずっと見つめていた。
本来なら、大門と流花の三人でゲーム機を買い、買ったあとはゲーム機本体をテレビに接続をして、三人でゲームをやるはずだった。
マスターは、ゲーム機の本体が入ったケースを棚にしまった。




