タイトル未定2026/04/12 03:09
土曜日の午前の診療を終えたマスターは、午後の診療が休診なのを利用して、大門と二人で繁華街に出かけた。
マスターと手を繋いで歩いていた大門は、不満気な声を上げて言った。
「七海と流花お姉ちゃんの三人で、ゲーム機を買いたかったなぁ」
「勉強で、忙しいんですよ」
マスターが言った言葉を理解をしていたが、それでも納得がいかない大門だった。
「あのね……」
「どうしました?」
「……コントローラーも、欲しい」
「コントローラー……?」
マスターは、大門に聞きながら歩いた。
流花に送ったラインは、既読のままだった。
その頃、繁華街の待ち合わせ場所で流花と渚と佐野と田中の四人が揃った。
流花は、渚達に言った。
「ごめんね。せっかく飲みに行こうって盛り上がっていたのに、今夜のバイト断るのを忘れちゃって」
「気にするなって」
佐野が明るく言うと、渚も言った。
「四人で、こうやって出かけるの初めてでしょ。画材道具買いに行きたかったし」
どこの店に行くのか、予め決めていたので、流花と渚が並んで歩き、その後を佐野と田中が歩いた。
繁華街にある、ショッピングモールの家電コーナーで、マスターと大門はゲーム機を選んでいた。
ゲーム機本体は、通常モデルを選んだ。
ゲーム機本体を入れるケースと、コントローラーを二本選んだ。
最後は、ソフトが売っているコーナーに行った。
「大門、ソフトは決まっているんですか?」
「うん!……あの……」
「なんですか?」
「ソフト二つ、欲しいんだけど……」
「かまいませんが、どんなソフトですか?」
マスターの言葉に、大門は嬉しそうに答えた。
「パーティーとぉ」
「パー……ティー……?」
「いろんなミニゲームが、入っているんだよ」
今ひとつ理解をしていないマスターに、大門はさらに続けた。
「後、カートのソフトが欲しい」
「カート……?車のレースのゲームですか?」
「うん!自分の好きなキャラで、車も選べるんだよ」
「そう……ですか」
そう言った大門は、ソフトを探しに早足で歩き出したので、マスターは慌てて追いかけた。
流花達は画材道具専門店に行き、授業で使う思い思いの道具を選んでいた。
専門店だけあり、様々な道具に流花達は、目移りをしていた。
時間はあっという間に経ち、四人は買い占めた画材道具を手にしていた。
「これから、どうする?夕飯には、まだ早いよな」
佐野の言葉に、渚が真っ先に言った。
「流花ちゃんと、洋服を観たいねって、言い合っていたんだ」
「そうなんだ。じゃあ、移動するか」
佐野がそう言うと、流花と渚は先頭をきって歩き出した。
流花達は繁華街のショッピングモールに行き、有名なブランド名の服の店が連なっているフロアに行った。
「流花ちゃん、あの店に行こう」
渚が言うと、佐野も言った。
「俺らも適当にそのへんを、うろついているよ」
流花と渚は店に入って行き、佐野と田中は肩を並べて歩き出した。
佐野は派手なティーシャツが並んだ店を見つけ、店に入って行った。
「おっ、これいいな。買おうかな」
派手なティーシャツを見て、佐野が言った。
「買うのか?」
「う〜ん、保留」
「買わんのか」
田中の「買わんのか」の言い方に、佐野は笑った。
「なぁ……」
田中の声で、佐野は田中を見た。
「ナギちゃんと、付き合っているのか?」
「付き合っては、いないよ。気持ちも伝えていないし。そう言う田中は、流花ちゃんのことが気になるんだろ」
田中は、何も言わなかった。
「俺は、ナギちゃんに気持ちを伝える。田中は、どうなんだ?」
何も言わない田中に、佐野は続けた。
「そうだよな。barのマスターの話を聞いたら、言いづらいよな」
黙っていた田中は、やっと言った。
「それでも、俺はちゃんと自分の気持ちを言う。何もしないで、終わるのは嫌だ」
「男だね〜」
茶化すように言う佐野を、田中は睨んだ。
渚は初夏に似合う、ワンピースを選んでいた。
「ねぇ、こっちも良いよね」
渚が流花に見せたワンピースは、先程違う店舗で見たワンピースと同じようなデザインだった。
「そうね。さっきのは白色だったけど、この水色のワンピースの方が、ナギちゃんにぴったり」
「わぁ、嬉しいな」
「買うの?」
「うん!買っちゃう!」
レジに行って、水色のワンピースを購入した渚は、買わずにずっと商品を眺めながら歩いていた流花に言った。
「流花ちゃんは、買わないの?」
「私は……いいや」
渚は流花をじっと見つめた。
大学はおしゃれをしに行く所ではないが、流花はいつもティーシャツにジーパン。
ティーシャツの上には、フード付きのパーカーを羽織り、スニーカーを履いていた。
「流花ちゃん、いつもその格好だね。背が高くて、モデル体型なのにもったいない!」
「だって、これが一番着やすくて、落ち着くから」
「もう!何、言っているの!私が、コーデしてあげる!」
「えっ、ちょっと!」
驚く流花の腕を渚は強引に引っ張り、店を出てフロアを歩いた。




