タイトル未定2026/04/12 03:04
短大の授業が終わり、日もすっかり暮れてネオンが散らばり、繁華街は夜の世界に移っていた。
若菜が指定をした場所は賑わっていて、若菜は馬場とちはると会っていた。
「急に呼び出して、すみません」
若菜は、馬場とちはるの前で頭を下げた。
「スイちゃんが、友光にラインを送るなんて珍しいな」
「なんだか、二人に会いたくなって」
「嬉しいこと、言ってくれるじゃない。近くにファミレスがあるから、そこでも良い?」
ちはるの言葉に、若菜は笑顔で頷いた。
「じゃあ、行こう!」
ちはるは、若菜の肩を抱いて歩き出した。
二人の後を、馬場が歩いた。
数日前、短大から帰って来た若菜は自分の部屋に一人でいた。
短大の課題は山のようにあるのに、手を付けられないでいた。
なんとなく携帯を眺めていた若菜は、ちはるに会いたいとラインを送った。
ちはるから、仕事終わりに会おうと返事が来た。
ちはるは馬場を連れて、若菜が指定をした待ち合わせ場所で、会ったのだった。
ファミレスも繁華街同様、時間的にも賑わっていた。
なんとか奥の席に座ることができ、それぞれのメニューをタッチパネルで送信をした。
「前にも三人でファミレスで、食事をしたよね」
短大の帰り道、仕事帰りの馬場とちはるに偶然出会い、三人でファミレスに行ったことがあった。
懐かしむように若菜が言うと、馬場も思い出したように言った。
「おう、行ったな。あの時は、バナナサンドのパンケーキを食ったなぁ。あれは、美味かった!今日は、王道のチョコパフェに、したもんね〜」
「酒飲みのくせに、甘いもの好きなんて、変わってる」
ちはるに小バカにされた馬場は、言い返すように言った。
「なんとでも言え。酒と甘いもんは、切っても切れない仲だ」
馬場とちはるのやり取りを、若菜はぼんやり眺めていた。
そんな若菜に馬場は気が付き、声をかけた。
「ぼんやりして、スイちゃんどうした?」
「切っても、切れない仲……アタシは、赤井さんとはもうダメだ……」
若菜の言葉に、馬場とちはるは顔を見合わせた。
さすがに心配そうに、ちはるは若菜に言った。
「赤井と、何かあった?」
「ラインを送っても、ずっと未読のまま。無視されている」
思いがけない若菜の言葉に、馬場とちはるは顔を見合わせ黙り込み、重い空気が漂った。
重い空気を、ちはるが跳ね除けた。
「スイ、赤井とちゃんと向き合いたい?」
「マスターのことは好きだけど、もうどうにもならない。マスターにスーツを見せに行った時、それがよくわかった」
短大の入学式の時に着ていくスーツを赤井が選び、そのスーツを赤井の目の前で若菜はマスターに見せたのだった。
テーブルを挟んで、若菜の向いに座っていたちはるは、若菜をじっと見つめて言った。
「ねぇ、なんでマスターにスーツを見せたの?」
「赤井さんにスーツを選んでもらって、嬉しくて。マスターやシロちゃんにも見てほしくて」
「赤井は、スイがマスターに惚れているのを知っているから、余計に嫉妬しているんだよね」
「うん……マスターを追いかけるのは、もうやめる。赤井さんと、しっかり向き合う」
「……あのさぁ」
それまで黙っていた馬場が、突然口を挟んだ。
若菜とちはるは、馬場の方を向いた。
「こんなとこでグチグチ言い合っていないでスイちゃん、赤井の所に行ったら?赤井の出張先教えてやるよ」
「そうね。それが一番だわ」
ちはるがそう言うと、馬場と若菜は携帯を出し、ライン交換をした後、馬場は赤井の出張先の住んでいるアパート名と住所のラインを送った。
食事が終わった頃、馬場は幸せそうにデザートのチョコパフェを食べていた。
その姿をコーヒーを飲みながら、しらけた目つきでちはるは見つめていた。
チョコパフェを食べ終えた馬場は、アイスティーを飲んでいる若菜に聞いてきた。
「スイちゃん、シロちゃんと会っててる?」
「最近、会ったよ」
「そっか。シロちゃんって、男嫌い?」
「異性に、あまり興味がないみたい」
「あぁ〜やっぱ、そうか」
「シロが、どうしたって言うのよ」
ちはるが口を挟んできた。
「シロちゃんと居酒屋で、飲んだんだ」
思いがけない馬場の言葉に、ちはると若菜は声を上げた。
「馬場、シロと飲みに行ったの?」
「シロちゃんって、お酒飲むの?」
ちはると若菜の大きな声を聞きながら、馬場は続けた。
「仕事帰り偶然会って、シロちゃんと飲んだんだ。シロちゃん、酒に強かった」
「シロがねぇ……大人っぽいとは思っていたけど、やっぱ飲むんだ」
ため息交じりに言うちはるに、馬場が若菜に聞いてきた。
「シロちゃんいつもはクールなのに、酔っ払いの男とすれ違っただけで怯えていた。スイちゃん、そんなシロちゃん見たことある?」
馬場は、若菜に問いかけた。
「シロちゃんが?ううん、見たことない。初めて聞いた」
信じられない気持ちで、若菜は言った。
「シロにも、苦手なものがあったんだ」
ちはるも、驚いて言った。
数時間ファミレスで過ごした後、若菜は馬場とちはるに言った。
「馬場さん、ちはるさん。今日は、ありがとうございました」
「スイが元気になって、良かった」
ホッとしたように、ちはるが言った。
「おかげで、元気が出た。アタシ、赤井さんに会いに行ってきます」
若菜の言葉に、馬場は頷きながら言った。
「おう、行ってきな」
「赤井に自分の気持ちを、しっかり伝えるんだよ」
「はい!馬場さんちはるさん、おやすみなさい」
若菜は、繁華街の中を歩き出した。
小さくなっていく若菜の後ろ姿を見つめながら、腕を組んだちはるが言った。
「全く、世話が焼ける」
「よく言うよ、頼られて嬉しいくせに」
「まぁ……ね。まだ早いし、飲みに行こうよ」
「おう、行くか」
馬場とちはるは、肩を並べて歩き出した。




