タイトル未定2026/04/12 02:29
梅雨時期の前、小学校一年生の教室の窓から見えた新緑は眩しく、このまま夏が来る錯覚を起こしそうな気候だった。
マスターは、大門が通う学校の教室で机を挟んで大門の担任と向き合っていた。
大門の担任は、四十代半ばの女性だった。
大門は自分の机の席に座り、宿題をやっていた。
最近は家庭訪問がなくなり、保護者が学校に出向いて面談を行なっている。
今まさにマスターは、大門の保護者として大門の教師と向き合っていた。
教師の話しによると、学校で過ごしている大門はしっかり授業に取り組み、休み時間は友達と楽しく遊んでいると言うことだった。
「友達と楽しく遊んでいる」
この教師の言葉に、マスターは胸をなで下ろした。
大門には、既に両親がいない。
両親との記憶も無く、新しい世界に踏み込むことを恐れている。
常にマスターの側にいる大門だからこそ、クラスの児童と仲良くやっているか、それが一番心配だった。
「大門君に……」
目の前の教師の口調がかわり、マスターは慌てて教師を見た。
「大門君に、お父さんと呼ばせないのですか?」
教師の思いがけない言葉に、マスターは言葉を失った。
「大門君が、血の繋がりのない息子さんと言うことは、承知しています。でも……本当の父親でなくても、大門君が呼び捨てで呼ぶというのは……」
教師の言葉に、反論が出来ないマスターだった。




