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28-2

「リュート様!お夜食ここに置いておきますね」

「うん、ありがとう。いってらっしゃい」


今夜は夜会だ。

普段のリュート様のお夕食は、私が業務を中抜けして食堂の厨房の片隅で作り、それを顧問室に運んで二人で一緒に食べている。

夜に社交がある時にそれは難しいので、その時は作り置きだけしてリュート様のご都合のいい時に召し上がってもらうことにした。


顧問室を出た後、3班長に声をかけられる。

「あー、カレンさん今夜社交か!明日朝イチで相談したいんだけどいい?」

「承知しました!明日よろしくお願いいたします!」


最近は週に一度くらいのペースで社交が入るため、補佐官業務が疎かになっている気がする。技術部の皆さんに申し訳ない。

家に戻ったら、溜まっている業務と今後の社交のための情報収集、どっちをやろうかな……?


そんな事を考えていたからだろうか。



ふわり、と一瞬だけ身体が熱くなったが、すぐに沈静化する。……しまった。


《ベスさん、どうしましょう。多分盛られました》

《どうしましょうってどういう意味?》

《自己治癒で無意識に治してしまって、薬品の特定とか何もできないと思います……》

《あちゃー》


夜会中。少し休んでいるフリをして付き人部屋で待機しているベスさんと通信を繋ぐ。社交に慣れてきて気が緩んでいたらしい、完全にやってしまった。


《多分、興奮剤のようなものだと思います。お酒で必要以上に酔わせて恥をかかせよう、みたいな……》

《随分チャチな嫌がらせね》

《参加者に再従姉妹の友達で、学園の同級生だった子がいました。さっき顔見て思い出しました》

《…………本当にチャチな嫌がらせだったのね》

ベスさんの口調に苦笑いしそうになるが、必死に堪える。


一応報告したけれど、これ、報告書書かなきゃダメかなぁ……?


よくないことが起きる日というのは、立て続けに色々起こるものらしい。

帰りは見知らぬ馬車に分かりやすく尾行された。

ベスさんが呼んだ『矛』の方が駆けつけた途端、すぐに離脱していったが。


直帰のはずが技術部棟に戻り、報告書をしたためる。

部長は紳士倶楽部に呼ばれているらしく居なかった。


ベスさんと二人、報告書を書くために小会議室に籠っていたら扉が開く。


「カレン」

「リュート様っ」

――ああ、やっぱりリュート様のお顔を見ると、帰ってきた気がして安心する。


リュート様は私達の手元をチラリと見る。

「報告書終わった?夜食ちょうど食べようと思って。一緒にお茶でもどう?」

「よろしいんですかっ?」

「もちろん」

相変わらず、リュート様はいつもより優しくて、いつもより少し遠い。

それでも嬉しくて、ついつい頬が緩む。

こんな風にリュート様と一緒にいる機会が増えるなんて。

今日はやっぱり良い日だったらしい。



――ふと目が覚める。

リュート様とご一緒した後、家に帰って休んでいた。

……リュート様の居ない、一人ぼっちの家。


まだ部屋の中は暗い、時計を見たら、寝台に入ってから1時間しか経っていなかった。


「……またかぁ」

思わず溜息を吐く。


最近、睡眠導入の術式が効かない。というか、効果が切れるタイミングで目が覚めてしまう。


うまく眠れないせいか仕事中の些細なミスが増えてきた。朝起きても、体を動かすことがひどく億劫なこともある。

何か、朝までしっかり睡眠を取れて体を休める方法は……。


「……あ」


アレがある。手術の時などに使う術式だ。

昏睡状態になるが時限性なので、あれなら指定した時間までしっかり眠れるだろう。

ほっと安心しながら、朝までの時間を計算して自分に施す。


これで、寝不足で皆さんに迷惑をかけることはないはずだ。

仕事を任せてくださるリュート様や班長達にも、早朝鍛錬に付き合ってくださるベスさん達にも、ご迷惑をおかけしなくていい。


そう思うと、すごく気が楽になった。

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