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7-2

「私の補佐官に、何か?」

外だからだろう。いつもより硬い口調でリュート様が淡々と話す。


大叔父は自分の右手を訝しむように見た後、警戒したようにリュート様の方を向く。

「貴様、いま、儂になにをした?」

「……なんのことでしょう?」


流石に男性2人が相対していたら目立ったらしい。

こちらの様子に気が付いた何人かが近寄ってくる。

全員、瑠璃色の髪か瞳をもつ、サンビタリア一族の人間だ。ルークを見に来たんだろう。


どうしよう、ここで騒ぎになったらリュート様の今後の外出許可に影響があるかもしれない。

せっかく、最近少し軟化していたのに。

つい胸元でメモを握りしめる。


――まただ。私は、いつも、誰かの邪魔になる。

大叔父の言う通り、恥晒しは外に出ない方が正しいのだろうか。


そんなことを思って視線をずらすと、試合をしているはずの弟と、何故か目が合った気がした。

それとほぼ同時に、弟の魔力が跳ねあがる。


「ルーク……っ?」

嫌な予感がした。あの子は魔力が暴走しやすく、自分の腕を焼いて死にかけたことがあるくらい、瞬間火力が高い。


瞬間、ビリビリと凄まじい音を立てて雷系魔術が会場を蹂躙し、見学席を覆っていた防御術式が砕ける音がした。

そのまま雷光が見学者たちに降り注ぐ、その刹那。


――リュート様から、小さなため息が聞こえた気がした。


途端にふっと雷は消失し、会場中が一瞬静寂に包まれる。

そして次第にざわめきが広がっていく。

「なに?」

「何が起こったの?」


ルークが心配で慌てて競技場を見る。

弟と、審判役を務めていた古参の宮廷魔導士が、真っ青な顔でこちらを……リュート様を見ていた。


「き、貴様、いったい何をした!?」

大叔父がリュート様に声をかける。こんなに狼狽した大叔父を見るのは初めてだ。


一切の予備動作・補助動作なしでの初見魔術の無力化。

しかもこの会場規模で、緊急対応にも関わらず範囲・精密さともに完璧。


魔術をかじったことのある人間であれば、いまのリュート様の芸当が、どれだけ常識外れなことか分かる。

大叔父だけじゃない。親族たちも顔面蒼白でこちらを見ている。


「……なんのことでしょう?」

リュート様は相変わらずの無表情で淡々と答え、私に向き直る。


「サンビタリア、残りの出場者、誰?」

「は、はい、こちらが名簿です……」

リュート様に名簿を渡すと、「ふぅん」と興味なさそうな相槌が返ってきた。


「……ルーク・サンビタリア以外は去年と面子一緒か。帰るよ」

「え?は、はいっ……」

歩き始めたリュート様に慌ててついていく。


「ま、待て!」

「……ああ、忘れてた」

呼び止めてきた大叔父に向き合うのかと思ったら、リュート様は会場全体を一瞥する。


一瞬、ほんの一瞬だけ目を細めたリュート様から、鋭い魔力を感じると……会場の防御術式が復旧した。

「な、……なっ!?」

今度こそ言葉を失い、大叔父は立ち尽くす。親族の男がひとり、力が抜けたようにへたり込んだ。


会場に展開されている防御術式は、宮廷魔導師たちが三日かけて充填した魔力で起動している魔導機構だ。

それを、一瞬で再充填し起動させてしまう魔力量。遠隔起動できてしまう術式把握力と精密さ。


――本物の、天才。


「いくよ、サンビタリア」

呆けていたら、なんでもないようにリュート様がまた歩き出すので、慌ててついていく。


ちらりと競技場を見ると、ルークが泣きそうな顔でこちらを見ていた。

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