表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
170/172

56-2

新年拝賀。

国の主要貴族などが呼ばれ、陛下のお言葉を賜る式典。

「る、ルト様、お支度は済みましたか?」

「うん。あとは向こうでマティアスさんとアレンに直してもらう」

リュート様と二人で身支度し、階下に降りる。

護衛であるベスさんとシュウさんと合流して、馬車に乗る。

新年のよき日、今日はリュート様の叙爵後二回目の社交だ。



「クレア。あまりキョロキョロしないように」

父にそう言われて、ついむくれて返してしまう。

「お父様。私、こう見えて宰相府文官ですの。それくらい分かってます」

私はクレア・ジェビオラ。子爵令嬢だ。

昨年の春にデビュタントしたこともあり、今年は新年拝賀への参加のお許しを頂いている。


「……何だか近衛に落ち着きがないな」

「ああ、なんでも今年は珍しい方が参加されるそうですよ」

周囲の近衛兵の方々がピリピリしている。

その事に気付いた父が不思議そうに呟いたので、さっきのお返しに仕事中に聞いた話を披露する。

「ほら、一年ちょっと前に叙爵されて男爵になった方がいるでしょ?あの方が参加されるんですって」

「……は?」

何故か父が驚きではなく動揺を示した瞬間、「いらしたぞ」という固い声と共に会場の近衛に緊張が走った。

こんなに空気が変わるなんて、いったいどんな方なんだろう?


そうこうしていると、アレン様と一緒に近衛に誘導された男女が見えた。

「……え」

一瞬、母が男装しているのかと思った。

世の中には、よく似た人が三人いると聞いたことがあるが、アレがそうだろうか。

それくらい母に似ているが、あの長身と髪と瞳は……父のそれだ。


一緒にいるのは、銀髪の女性。

私でも知っている、以前は鉄屑と呼ばれていた方だ。

と言っても、聖女様の実妹であり上位貴族に認められたあの方をそう呼ぶ人は、大分減ったけれど。

ストックリー夫人は何度か社交の場でお見かけしたことがある。じゃあ、やっぱりあの男性が……。


「リュート・ストックリー男爵……」

ポツリと呟いただけで、絶対聞こえないはずの距離と騒がしさなのに、赤茶色の瞳がこちらを向く。

あまりにも父そっくりの瞳と視線がかち合って、思わずビクリとしてしまう。


向こうも少しだけ驚いたような顔をして……そのまま何事もなかったかのように歩いていってしまった。

私の婚約者であるアレン様が、こちらに小さく手を振る。

普段はそういうことをされない方だ。おそらく、いまの男爵の反応を誤魔化すためにわざとやったのだろう。


ざわめきを見送って、気が付いたら止めていた息をゆっくり吐いた。

なんだったんだろうあの人、というか……。

ゆっくりと父の方を見ると、気まずそうに目をそらされた。

「お父様。念のため聞きますけど、不貞してませんよね?」

「……他所で作った子が、あんなに母さんに似てるわけないだろう」

溜息と共に、衝撃的な言葉が父から飛び出してきた。


――ぐったりとした様子の父には悪いが、これは聞くことが沢山あるらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ