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4月4日 ピアノ調律の日
「違うよその音。」
そう言われて僕は不思議な思いをした。
「それより少し下げて。」
「でも、これだった。」
「なに?」
「いや、この音であっているような気がするんですが。」
「違うって。聞いてみる?」
「はい。」
そう言われて、先輩が取り出した機械から出てくる音を聞いてみる。
最新モデルの機械で音が狂わないやつに常にアップロードされている。
そこから出てくる音を聞く限り、確かに先輩の言っている通りだった。
「な?」
「いや。でも。」
「なんだよ。」
「その機械って合ってます?」
「なんだお前、俺は昨日も調律しているの。久々の出社で耳おかしいんじゃねえか。」
「そうですかね。」
「そうだよ。」
絶対音感を持つ僕の感覚は正しかった。
少しずつ音はズレていっていた。




