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1月9日 とんちの日
「ハシじゃなくて真ん中を通ればいいんだよ。」
「え?」
「だからハシじゃないからいいんだよ。」
目の前で何からさえずっている頓珍漢坊主の前で俺は目を白黒させた。
「皆さんこの橋通れなく困っていたんで、解決法を言ったんですよ。」
何かウィンクでもしそうな雰囲気だった。
「いや、危ないからこの橋渡るのは。」
「だから、端じゃなくて真ん中わたっているんですよ。」
「いや、そういうトンチじゃなくて。」
「皆さんも真ん中ならわたって大丈夫なはずですよー」
坊主が煽り、渡ってきそうになっている人を慌てて止める。
「危ない!止まって。」
人波を抑える事が出来ずに皆一斉に橋を渡り始めた。
ミシミシと音を立てている橋をぼんやりと眺める事しか出来なかった。
『やれることはやったし仕方ないのか』
そう自分を慰めていた。