球春到来!
前乗りキャンプも順調にこなしていき、野球のお正月と呼ばれる2月1日を迎えた。
今年から広島は新しい監督にかわっていた。そして、この新しい監督は俺が最も好きだった選手であった黒井監督だ。
「よう、長江。今年からよろしくな!」
そう、黒井監督から言われた。黒井監督は選手を引退してから3年間某局のリポーターとなって去年から1軍の打撃コーチをしていた。そして、前監督の勇退から引き継ぐ形で後任となった。
(うわぁ契約の時にも会ったがやっぱりかっけー)
そう内心で、野球少年の心になっていたが主力としてしっかりしたところを見せないといけないからしっかりと返事をしといた。
「はい。監督を男にするために頑張ります。」
そうして、監督との対面が終わりキャンプが始まった。
(一応、契約によってレギュラーは確保されているけど打順や守備位置は未定だから頑張らないと。)
長江鯉太郎という男は内野であればどこでも守れるユリティープレーヤーであって、コンパクトなバッティングもでき、またここぞという時に一発も打てる選手である。実際に、なぜ彼が日本の至宝と呼ばれているかというと前球団でチーム状況が毎年変わりいろいろな守備位置をしないといけなく、またその状況においても毎年ゴールデングラブ賞を受賞していたからだ。
(毎年、各チームの主力を引き抜いてはレギュラーを確保させておいて、生え抜きの俺はそのしわ寄せを喰らっていたが、そのおかげで成長できたからまぁいいか。)
しかし、なぜ長江が守備位置や打順を契約時に確定させなかったというと彼は一ファンであるため様々な位置を練習、試合に出ることによってチームの底上げをしようとしていたのだ。
そうして、キャンプが順調に進み、長江と一緒に練習してきた若手はレベルアップをしていった。
オープン戦も次第にはじまっていき、開幕が近づいてきたことを桜の開花宣言とともに知らせていた。