FA宣言
好きな球団は今も昔もあの球団だけだ。
これは、金満球団からのメジャー挑戦ではなく、幼い頃から憧れるユニフォームを着るためにFAを行使した『野球小僧』のはなし。
「君は本当にいいのかい?このまま残留すれば、将来的にそれ相応のポストを用意するとオーナーからも承諾を得てるけれど。」
「はい、後悔はありません。右も左もわからない俺を12年間ここまで育てていただき、ありがとうございました。」
「そうか、残念だよ。」
そうして、球団社長や監督、コーチ陣から散々残留を願われたが、俺『長江鯉太郎』はFAを行使することが決定した。翌日の各紙には大々的に取り上げられた。
『長江鯉太郎、FA宣言へ。一体、日本の至宝はメジャー挑戦か。それまた、国内か。』
今回、俺が取得した海外FA権を行使したことにより、国内球団はもちろんメジャー数球団も俺の代理人に接触をしてきた。しかし、意中の球団だけ一つの連絡もなかった。そこで、その球団に在籍している高校の先輩にあたる山田先輩に連絡をした。
「久しぶりです。長江です。」
「おう!鯉!久しぶりやな。どないした急に。今お前忙しいんちゃうんか。」
「その件で、連絡したんですけど。率直に聞きますけど、そっちの球団に掛け合ってほしいんですけど…。」
「はぁ?お前メジャーいくんちゃうんけ。なんでうちなんかの貧乏球団に用事があんねん。」
「それは、もちろん俺が行きたいからに決まってますよ。ハハハ。」
そうして、俺の来季プレーする球団がトントン拍子で決まった。
『長江、メジャーでもなく広島に行くことを決断。その決断はなぜ!!!』(某スポーツ紙の一面)