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7.ハイパワーマシンvsコンパクトマシン

 サーキットとして生まれ変わった首都高だからこそ、気兼ね無くこうして飛ばす事が出来る。

 24時間営業のサーキットだけあって、昼でも夜でも今の首都高は走り屋達で賑わいを見せてくれる。

 そして俺の様に、急ぎで何処かへ向かわなければならない場合にもサーキット区間の首都高は重宝している。

 実際、ヤビツ峠に向かう時だってこのサーキットを通って一般道の東名高速に合流したからだ。

 ……まあ、その東名高速で事故による渋滞に巻き込まれてしまって、結局はサーキット区間を制限速度関係無しに駆け抜けたアドバンテージが無くなっちまったけど。


 その制限速度無しの首都高で今回バトルしているだけあって、俺もエイアルさんも勿論アクセル全開である。

 しかしこの時間帯は走り屋の車がなかなか多い上に、単純に首都高からの夜景を楽しみたい車がゆっくり走っているのもあって、アクセルを踏みたい所で踏めなかったりする。

 エイアルさんのS55は少し先を走っているものの、遅い車に引っ掛かっている為ドンドンその姿が大きくなって来る。

 そしてエイアルさんが自分で言っていた通り、夜の首都高を攻める等と言う事はしていないらしく、ドライビングテクニックに関しては素人なのは間違い無いらしい。

(壁が怖いのかなるべく道路の中央を走っているし、カーブじゃスピードをかなり落としているから、意外とついて行けてるな)


 こっちはヴィッツのコンパクトなボディを活かして、他の車の隙間を縫ってエイアルさんに着いて行く。

 汐留のS字カーブを抜けて、その後の下りの直線で少し離されるものの、トンネル内のS字カーブで再び追いついた。

(イン側に寄ろうともしないし、スポーツドライビングとはマジで無縁らしいな)

 直線では負けるもののカーブで追いつける。

 しかし、この銀座区間を抜けて日本橋方面に向かうと長い上り坂が待っているので、何とかしてそこまでに前に出ておきたい所だ。

(ただでさえ二百馬力と五百五十馬力でパワーに差があるのに、あそこの上り坂は長い直線だからそこで一気に差を広げられたら追いつけないかも知れないぜ!)


 だったら何としてでもそこまでに前に出ておきたい俺は、この下り坂の直線から二車線になるのを利用して一気にエイアルさんに食らいつく。

 片側の車線に車が居ればそれだけで一車線しか使えなくなる上に、エイアルさんは他の車をかわすのも余り得意では無い様で何だかもたついている。

(うおーしゃ、ここだっ!!)

 他車を抜くのにもたついているエイアルさんの横をギリギリですり抜け、俺はオーバーテイクに成功して前に出る。


(ふん……やっぱりなかなかやるみたいだね。だけどここからだよ!)

 抜かれたエイアルは自分の前に出たカイザムのヴィッツを冷静に見据えながらも、体勢を立て直してS55のアクセルを踏み込んだ。

 銀座線には中央分離帯を作っている橋ゲタがあり、そこにS55を当てない様に気を付けながら自分との距離を引き離しかけていたカイザムをパワーにものを言わせて抜き去った。

(どうだ、そんな国産車でこのベンツに勝てる訳が無いのだよ!)

 子供の頃に見ていたテレビ番組の影響で「医者はベンツに乗るもの」と言うイメージを持っているエイアルは、知らず知らずの内にメルセデス信者になっていた。


 そのメルセデス信者のエイアルさんに抜かれた俺は、ついにやって来た上りの直線で一気に突き放される。

(くそっ、まるでこっちが止まっているかの様な感じだぜ!)

 三五〇馬力の差は大きいというのを実感させられつつも、この先に待つのは江戸橋ジャンクション。

 C1内回りでも特にきついカーブと言われており、しかもかなり狭い。

 そこに先に差し掛かったエイアルさんはキッチリと減速し、一般車並みのスピードまでスピードを落とす。

 対する俺は軽さを活かした突っ込みで突入し、ギリギリのブレーキでエイアルさんのイン側に飛び込んだ。

「あ、危なっ!!」

「脇が甘い!」


 そのまま抜かれたエイアルさんをバックミラーで確認しつつ、その先の細かいカーブが連続する区間をほぼ全開で駆け抜ける俺。

 こうしたカーブの連続するセクションでは、パワーよりも取り回しの良さが武器になるのでエイアルさんの大柄なS55のボディでは切り返しが忙しくなる。

(くそっ、このまま逃げられたら私の負けだ!!)

 バックミラーに見えるのは俺に抜かれて闇雲にアクセルを踏み込むエイアルさんだが、有り余るパワーに振り回されて危うくスピンしそうになっている。

 一方の俺のヴィッツは軽くてコンパクトなボディで余り切り返さなくても抜けられる区間だし、アクセルをガンガン踏んで行けるので他の車に気を付けさえすれば、エイアルさんがバックミラーから消えるのにそう時間は掛からなかった。

(だけど最後まで油断は出来ないからな。向こうの方がパワーがあるし……出来るだけ前を見ながら走り続けるだけだ!!)

 俺はその後も次のトンネル、その次のトンネル、赤坂の少し長い直線とエイアルさんの追撃に注意しながらヴィッツを走らせ続け、芝公園の出口を降りて下道に戻った時にはエイアルさんと一二秒もの差がついていた……。

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