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 時は2030年。

 アメリカの年度は州ごとに異なるものの、大体8月の終盤から9月の頭で次の年度に移行するのが一般的なのだ。

 そんな年度の切り替わりで忙しくなりがちなのは一般企業だけでは無く、警察でも書類整理や色々な雑務等が絡み合っているのだった。

 それはアメリカの西海岸はロサンゼルスから、2400キロ東に行った所にある15年前に現れた新興都市である、港湾都市として栄えているテキサス州のヴェハールシティ警察でも同じだった。


 それも、このヴェハールシティ警察では新たな部署が発足しようとしていたのである。

 とは言え、まだそれは準備段階の為にオフィスの用意をしたり装備品の手配をしたりとあたふたしっぱなしな毎日をマドック・フロックハートは送っている。

(あー、これもやらなきゃいけないのか)

 ヨーロッパ旅行の長期休暇が終わってヴェハールシティに戻って来たマドックに課せられたミッションは、その新規部署の立ち上げに携わる事だった。

 新興都市故に相変わらず小さな事件は後を絶たないものの、マドックが出るまでも無いしそこまで人手不足な訳でも無い。

 なので新規部署の立ち上げメンバーとして色々とやる事がたまっているこの現状なのだが、そんな彼にアジアから魔の手が迫っていた。


「終わったのか?」

「あらかたな」

 でもまだまだこれからやる事が沢山増えて来る筈だ、とマドックは声をかけて来たニコラスにぼやく。

 設備やオフィスを用意するのは勿論刑事である自分の仕事では無いのだが、用意されるだけで細かいセットアップや追加設備の要望等は自分でしなければならない。

 ニコラス・イースデイルはマドックの数少ない友人の1人だ。

 そもそもこの2人は警察学校時代の同期であり、配属された部署も一緒である。

 同期である為この2人でコンビを組まされる事は今まで無かったものの、辛い時には御互いに愚痴を言い合ったり一緒に遊びに出掛けたりすると言ういわば腐れ縁である。


 その腐れ縁であるニコラスから、気になる情報がもたらされたのはそんな時だった。

「そうだマドック、シェアしておかなければならない情報がある」

「……俺に?」

 一体何を共有するのだろうかとマドックは不思議に思いつつも、ニコラスの口が動くのを待った。

「このヴェハールシティに、最近アジア人達の集団が多く流れ込んで来ているのは知っているか?」

 そのクエスチョンに、マドックはああ……と記憶を手繰り寄せながら頷いた。

「ヨーロッパでも逐一この街の情報を仕入れていたから知っていると言えば知っているが、何かそれに関しての事件があるのか?」

 マドックのその返しに、ニコラスは若干口ごもりながら答える。

「ん、んー……正確に言えば前兆、かな」

「前兆?」

 何だか曖昧な言い方だなぁとマドックは思わざるを得なかった。

 その前兆とは何の事なのかをはっきりさせておかねばならないので、更に詳しく説明する様にニコラスに求めるマドック。

「勿体ぶらないでしっかり教えてくれ。俺も刑事なんだから何か協力出来る事はあると思うが」

「そうだな。……最近シティの各地で車の盗難が多発しているんだ」

「盗難事件か……」

 武器や麻薬の密輸ならかなり頻繁に起こっているが、意外と侮れないのが自動車窃盗事件である。

 2030年になってセキュリティが強化されたとは言えども、そのセキュリティを解析して解除して盗み出すのもまた良くある話だからだ。


 しかし何故、それがアジア人に繋がるのだろうか?

 自動車窃盗事件はアメリカ人でも起こす犯罪なのに、アジア人に限定するのは一種の差別的発言と取られてもおかしく無い。

 その事をマドックがニコラスに指摘すると、理由を言う代わりに数枚の写真をジャケットの内側から取り出してマドックに渡す。

「そこに写っている連中が、その自動車窃盗事件の主犯格と思われる人物達だ。信頼出来るメディアから高値で買い取ったから信憑性は高いぞ。港湾区域の近くの倉庫街で撮影されたらしい」

 ニコラスのセリフを聞きつつ写真に目を向けるマドックのその目には、数人のアジア系の男女が写っているではないか。

「実際にやってる所をスクープしたのか?」

「そこまではまだだ。だが車を盗まれた被害者達の何人かがこう言ってた。最近家の周りでアジア系の連中がウロウロしている……ってな」

「成る程な」

 それでも証拠としては全く当てにならない、ただの憶測での話だ。


「でもまだまだ捜査しなきゃならない。アジア系の連中なんてアメリカには大勢居る。ひとまず自動車窃盗が多いって言うんなら大体の調べ先の目星はついてるんだろ?」

「ああ。シティ内の全てのカーショップを洗って、不審な車が整備や修理で持ち込まれていないかどうかを調べよう。それから盗んだ車を解体して船に積み込んで運び出す事も考えられるから港湾区域の警備強化と聞き込み、後はこの写真の連中の目撃情報も集めたい所だな」

 マドックの質問にそう答えたニコラスだったが、彼は余りこの先で捜査に参加出来ない様だ。

「あ……そうだ、すまないが俺は俺で新規部署の立ち上げで色々と呼ばれてるんだ」

「えっ? ならもしかしてこの事件は……」

「協力出来る時は協力するが、しばらくはお前1人で頼む」

 警察学校時代からの同期の男の頼みに、マドックは面倒そうに前髪を掻き上げた。

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