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23.直すの?

「ちなみにですけど……直すんだったらどの位の時間が掛かります?」

「そうだな、結構大きな修理になるし、他のお客の作業も控えているからハッキリと断言は出来ないけど、一週間位かな」

 そうなるとエルトルとの約束は守れないかも知れないと考えつつ、俺は買い替えの場合の日数についても聞いてみる。

「一週間ですか……じゃあ、新しいのに買い替えるんだったら?」

「それだったら直すよりも時間が掛かるよ。同じ型のヴィッツの在庫が無いから、さっきも言ったけど知り合いの中古車屋とかオークションで君が気に入った物を選んで貰って、そこから書類作成だとか各方面への手続きだとか車庫証明を取ったりしなければならないから、二週間って所だな」


 ゼイオスさんからこの比較の話を聞いた時、俺の答えは決まった。

「直す方でお願いします」

「え……本当に良いの?」

 俺とゼイオスさんのやり取りをそばで黙って聞いていたサザートさんが、まさかと言う表情で口を開いた。

「はい。流石に自分の二週間も車が使えないのは困ります」

「代車だったら出すけど?」

「それはありがとうございます。しかし、あの車で何時もお客さんの所に行ってるんで、なるべくならまたあの車で行きたいんですよね」


 俺の言い分を聞き、ゼイオスさんとサザートさんが顔を見合わせた。

「うーん、まあ君がそれで良いって言うなら俺も社長も止めないけど」

「それで構いません」

「分かったよ。じゃあ代車はあそこに置いてある赤いミラを使って。それから寝泊まりなら前と同じくここですれば良いよ。その代わり君の仕事が無い時は店は手伝って貰うよ」

「分かりました。よろしくお願いします」

 こうして話が纏まったので、俺は早速その代車のミラに乗って東京タワーへと向かう。

 何時ものヴィッツでは無いので違和感が凄いが、車の中をじっと見られない限りはあの連中にも俺の行動がバレる筈が無いだろうと考えていた。


 そう思いながら東京タワーの下へとやって来た俺だったが、俺を先導していたE320ワゴンの姿は見当たらない。

(むー、やっぱりあの銃撃戦で……)

 思わず最悪の展開が頭を過ぎるが、そもそも俺はあのエルトルと言う奴とスマートフォンの番号やアドレスすら交換してもいなかったので、連絡を取る以前の話である。

(と言うか、何でこんな東京タワーの下なんか指定したんだろう?)

 時間の指定が出来ないってのはあの状況だったから仕方が無いにしても、俺はその後一旦東京タワーから離れて飯を食いに行ったり、ザルスやエイアル以外の客に対して色々と連絡をしたりして三時間待っていたのだが、結局その日はエルトルは現れなかったので三鷹まで帰る事にした。


(少なくとも待ち合わせをするんだったら連絡先の交換もそうだし、それでなくても時間と日時を指定しておかなきゃ待ち合わせの意味が無いよな……)

 一先ず本来の「仕事」をしながらゼイオスさんの店も手伝い、一週間毎日東京タワーまで来てみようと決める。

 今でもあのエルトルと言う傭兵に対しての不信感は拭えないが、俺の命を救ってくれた人物でもあるし、俺を守るのが使命だと言っていたからもしかしたらまだ俺の知らない「何か」を知っているのかも知れない。

 そのモヤモヤが晴れる切っ掛けをあの男が作ってくれるなら、また会いたいと言う気持ちしか俺には無かったのだ。



 ◇



 そして店の手伝いをしながら待つ事一週間。

 自分の仕事もこなしつつ、そして東京タワーにも行きつつだったのでなかなかハードな日々だったが、今までの嵐の日々がまるで嘘の様に平和な毎日を過ごしていた俺にゼイオスさんとサザートさんから声が掛かった。

「良し、直ったぞ」

「おー、凄く綺麗に……ありがとうございます!」

 あれだけボコボコにされて見るも無残な姿になっていた青のヴィッツが、俺の目の前にピカピカの状態で鎮座していた。

「それじゃ代車をガソリン満タンにして返してくれ。それから試運転がてらちょっと頼みたい事があるんだけど、良いかな?」

「え、このヴィッツでですか?」


 ゼイオスさんに言われてガソリンを入れに行こうとした俺に、気になる一言が掛かった。

「そうだ。ちょっと俺は別のお客さんの所に行かなきゃいけなくて、サザートにその間は店番して貰うんだ。だけどここに来てちょっとお得意さんの所に荷物を届けに行かなきゃならなくなってね。だから悪いんだけど、俺達の代わりに指定したこの場所にあの段ボールの荷物を届けに行ってくれないか?」

 ゼイオスさんが指差す先には、大きめの段ボールに入っている荷物がドンと鎮座している。

「分かりました。それ位だったら別に良いですよ」

「そうか、助かる。それと支払いの件なんだが、それについては君が届け物に行ってから決めるよ。明日はちょっと忙しくなりそうなんでね。修理し終わってからで悪いんだけど、実はまだ請求書の発行が出来てないんだ」

「そうなんですか。支払いだったら俺も色々金の都合をつけなきゃならないんで、じっくり話し合いたいです」

 金の話はデリケートな問題でもあるので、そこを慎重に決めたいのは俺もゼイオスさんも同じなのかも知れない。

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