後編
他の例で言えば。
私が町の学校の最高学年だった頃、三日に一度くらいのペースで嫌がらせをしてきていた同学年の女子がいたのだが、その女子は卒業した数日後に親と喧嘩して家出したところ不審なおじさんに声をかけられついていってしまったために命を落とすこととなってしまった。
父の年の離れた姉の娘である女性は元よりなぜか私を良く思っておらず、私が小さい頃から睨んできたり変な贈り物を押し付けてきたりとたびたび変なことをしてきていた。しかし彼女もまた勝手に滅んでいった。彼女はある時一人の男性に惚れたそうなのだが、実はその男性が詐欺師で、男性に協力したという罪で拘束され後に処刑された。
……などもある。
私に嫌な思いをさせた者は滅ぶ、それは絶対的なことだ。
べつにそうなってほしいと望んでいるわけではないのだが、なぜか自然とそうなるのだ。
私の敵にはいつも似たような結末が待っている。
「加えて、お前の物の食べ方も嫌いだった! 食事を始める時、いちいち、いただきますとか何とか言うだろう? あれが鬱陶しかったんだ! いい子ちゃんぶっていて不愉快過ぎる! それに、集中して食べようとしている時にいただきますが聞こえてくるからイライラするんだ。もう少し考えて行動しろよ。相応しくないとはいえ一応婚約者なのだから、俺が嫌がっていることくらい察するべきだろう!」
「いただきます、は、普通に言うと思います」
「そういうところだ! いちいち言い返してくる! そういうところ、大減点! もちろん、いただきますも大減点! ダサいくせにいい子ちゃんぶっているところも、大大大大大減点!」
ブリーブは延々と私の悪口を直接言ってくる。
これは一体どういう時間なのだろう……嫌がらせ?
大事な話が終わったなら早く帰りたいのだけれど。
「いただきますとか言う余裕があるならもっと俺に気を遣えよ、と言いたい。そうやってくだらないところにばかり気を配ってるから俺の心を読み取れないのだろう? 無能か!」
そんな感じで悪口大会は二時間以上続いたのだった。
◆
婚約破棄から二年半、私は今、穏やかな幸せの中に在る。
先日式を挙げ手続きも終えて正式に夫婦となったのだけれど、夫となってくれた彼はとても良い人だ。
彼との出会いは町の喫茶店。たまたま隣町から遊びに来ていた彼と席が隣同士になったことがすべてのはじまりだった。隣の席だからといって別段何か話をするわけでもなかったのだが、彼がテーブルの上に置いた腕時計を見失い探し始めたことをきっかけに言葉を交わすこととなり。一緒に探し、数分後テーブルの下の溝で発見。そんなことをしているうちに、まるでずっと昔から知り合いだったかのように親しくなっていた。
そこからたびたび顔を合わせるようになる。
話をしていく中で共通の趣味がいくつかあることも判明。
それによってさらに仲は深まって。
特別なことは何もなかったけれど、心と心は通じ合い、いつしか純粋に想い合う関係へと発展していった。
彼と出会い、仲良くなり、結ばれるところまで進展できたこと。
それらはとても幸せなことだった。
だからこそ、手の内に在るこれらの幸せを、永遠のものとできるよう大事にしていきたいと考えている。
生きていればきっといろんなことがあるだろうけれど。
どんな壁も共に乗り越えてゆく決意で。
目の前の幸せを当たり前と思わず、手に入れた尊いものを抱き締めて、一歩ずつ前へ進んでゆきたい。
ちなみにブリーブはというと、あの後不運な出来事に連続して見舞われたそうだ。
まず、婚約破棄を告げた翌日の昼頃に外出先で財布を落としてしまい見つけられなかったという出来事。
次に、財布を落として落ち込んでいるところに見合い相手からのお断りの手紙が何通も届いてきてさらに落ち込むという出来事。
さらに、庭をうろついていたところ母が大事に育てていた花が植わっている植木鉢を誤ってひっくり返してしまい家から追い出されてしまうという出来事。
……などなど、彼には無数の不幸が降りかかったようだ。
◆終わり◆




