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盤上の翼  作者: なぎさ
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第6話 部長


 例の事件から数日後。

 やっと学校に戻れる日が来た。

 泰葉は毎日来てくれていたが、学校というのもあり午後にしか会えなかったこともあり、暇を持て余していた。

 ……これ、喜んでもらえるかな?

 この数日間で作ったプレゼントを握りしめる。

 席に着くと、クラスの視線が一斉に俺の方に向かう。

 うん、なんだか……人気者になったみたい!!

 なんて言える立場じゃないんだよな。

 クラスでは暴力沙汰を起こしたなどの目撃情報から俺が要注意人物になっている。

 流石にこの高校から近すぎたからか。

 すると、俺の前の椅子に慶賀が座ってくる。


「うっす、琥太郎調子はどう?」


「おお、慶賀がか、ありがとなこの前は」


「いいってことよ、俺ら友達じゃん」


 俺は鞄の中から例のプレゼントを探す。


「まあ、慶賀……その例ってわけじゃないけど。いや、いらなかったら全然いいんだけどさ……これ、はい」


 それは慶賀の顔をしたぬいぐるみだ。

 くぅ、我ながら完璧な出来だが喜んでもらえるかな。


「ま、まあ、あれだこの入院期間暇すぎたしさ三十分ぐらいで作ったんだよ……うん」


 本当は夜通し作っていたが恥ずかしいので言わない。


 すると……慶賀は。

 俺の肩をガッシリ掴みハグをする。


「琥太郎、お前って奴は本当いい奴だなぁ〜」


「ちょ、声でかいって……しかも、泣かないでよ本当にお礼だから、ま、まあ喜んでもらえてよかったよ」


 よっしゃあああああ。

 よかったあ、喜んでもらえて徹夜して作った甲斐があったよ。

 その時だった。

 第二の刺客が俺に近づく。


「……へぇ、それ琥太郎君が作ったんだ。よく出来てるねじゃあさ私と望月先輩のも作ってよ。明日、生徒会がボドゲ部を部内調査するらしいからさ。その前フリとしていいよね、それ」


「え?」


「いいじゃん、三十分で作ったんでしょ?」


「ちょ、ちょっと待っ――」


「いいの期待してるよ琥太郎くん」


 急に突きつけられる絶望。

 絶対に無理だとわかってるよね。

 三十分で出来るわけないでしょうが。

 そんなの信用するの……慶賀くらいだよ。


「――藍川も結構可愛いな」


「絶対、やめとけ」


 ***


「お、来たな西條くん。実はね陽葵から聞いていたのだが私たちのぬいぐるみを作って――ってえ?」


「……あ、望月先輩こんにちは〜」


 フラフラと部室に入っていく。


「ちょちょ待ってよ。大丈夫?琥太郎くんクマがすごいことになってるけど!?」


「……あ、これですか?余裕ですよ余裕こんなの全然へっちゃらなんで……アハハハ」


「うーん、これは重症だな」


「望月先輩……これどうぞ」


 望月先輩にそっくりなぬいぐるみを渡す。


「す、すごいな。本当に私そっくりじゃないか」


「先輩、部内調査っていつくるんですか?」


「そ、そうだな。ざっとあと一時間くらいか?」


「……そうですか、じゃあちょっと少し気絶してきます」


「気絶って言っちゃってるし……本当に気をつけてよね」


 俺は椅子に腰掛け一秒足らずで意識が落ちる。


「てか、本当によく出来てるな……これ」


 ***


「琥太郎くん、ねえ、琥太郎くんってば」


「起きてるよ藍川さん」

 

 まだ、完全には回復していないが先ほどよりは楽になったと思う――多分。

 それは突然だった。


 ドンッ。


 勢いよく扉を開ける音が部室内を響かせる。

 眼鏡を掛けた体が大きい女子が凛とした表情で立っている。

 ……確か、あの人は。

 同じクラスの―


「私は一年生徒会に所属しています天城雫と申します。わかってるとは思いますが部内調査を実施しますいくつか確認させてください」


 部室に緊張感が走る。


「ではまず、ボドゲ部を放課後ゲーム部との合併の件です……私は次の部内調査までに最低でも四人いなければいけないと申しましたが……どうやらいらっしゃらないようですね」


 ……合併だって?

 そんなの聞いてないぞ。

 そんなに切羽詰まってたのか。

 

「確かにここには三人しかいない。だが、いる……我らボドゲ部の部長がね」


 ……部長。

 確かに望月先輩は副部長と言っていた。

 ボドゲ部長か一体どんな人なんだ?

 

「暴力沙汰を起こして謹慎した男ですか……その部長というのは」

 

「え?」


「ええ、そうよ。だけどねあの人は立派なうちの部長よ」


 話はハイスピードで進んでいく。部長の謎について行くことができなかった。

 部長のことを喋る望月さんは妙に迫力があった。

 その圧に負けたのか……やれやれという感じで。


「……わかりました。来週、また部内調査をしましょう。その時にその部長がしっかりいるのなら合併は取り下げボドゲ部としての活動を認めましょう」


 望月さんの目には満ち満ちとした顔とは裏腹に凄く悲しそうな目をしていた。

 嫌な予感がする。

 何か面倒ごとに巻き込まれそうなそんな予感が――。

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