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盤上の翼  作者: なぎさ
3/4

第3話 初めての友達


  藍川さんが帰った後。

 俺はオムライスの残りで簡単に食事を作り、自分の部屋でゴロゴロしていた。

 今日は大変だったな。

 ボドゲ部のことを、いまだに考え込んでしまう。

 あのボドゲは楽しかったけど……入部するとなると話は別だ。


 すると――


「お兄ちゃん!」


 泰葉がベッドの横に座った。

 今日は本当に助けられたな。


「今日はありがとな」


「別にいいんだよ?

 私なんか、気にしなくても」


 首を傾げる俺。


「だから、部活。

 入りたいんでしょ?」


 参ったな。

 泰葉には隠し事ができない。


「まあ、正直にいうと、そうだな」


「私、お兄ちゃんがいなくても大丈夫だし。

 明日からお兄ちゃんのお弁当と朝ごはんは私が作るから」


「でも、泰葉。部活に入ったら、俺がいなくなる時間が増えるぞ?」


「わかってる。

 悲しいけど、私は受験生だよ?

 勉強もしなきゃいけないから、お兄ちゃんがいなくても頑張れる。

 家事もこなしてみせる。

 だから、安心して学校生活を楽しんできて」


 俺は泰葉の頭を撫でる。

 泰葉は優しい子だな。


「ありがとう、泰葉。

 ちょっと考え直してみるよ」


 泰葉が出て行った後、俺は目を閉じて考え込む。

 泰葉の優しさを無駄にするわけにはいかないな。


***


 泰葉は昔から、俺と同じで友達作りが苦手だった。

 中学一年の頃、悩みを誰にも話そうとしなかった。

 俺は先生に相談して、泰葉の友達を作ることができた。


 それ以来、泰葉は俺に気を遣い、心配させまいとしてくれていた。

 だから俺は、常に泰葉の面倒を見続けていた。

 不満を覚えたことは一度もなかったし、むしろ楽しかった。


 そんな泰葉が、こんなことを言ってくれるなんて――

 本当に泣ける。


***


「お兄ちゃーん!!

 そろそろ起きないと遅刻するよ!!」


 体をゆさゆさ揺さぶられ、目を擦る。


「う、ん?

 泰葉、おはよう」


 ぼやけた視界で最初に目に入ったのは――

 エプロン姿の可愛らしい泰葉だった。


「泰葉、本当に作ってくれてたんだな」


「当たり前でしょ。

 料理は主婦の基本ですから」


 鼻を伸ばす泰葉に、思わず笑う。


「はいどうぞ。

 今日は多めに作っちゃった」


「だいぶ豪勢だな。どれも美味そう」


 魚をひと口。


「……うまい。

 うまいぞ泰葉」


「もう泣かなくていいじゃん。

 あと、お弁当も作っておいたから、まだ開けちゃダメよ。

 お兄ちゃん、めっちゃ喜ぶと思うから」


「えー、なんだろ楽しみだな」


 準備を済ませ、家を飛び出す。

 小走りしていると――

 ん?啜り泣く声がする。

 昨日もこんなことあったな。


 角を曲がると――マジかよ。

 蹲っている藤平。


「藤平、遅刻するぞ!!」


 俺を見ると、安心した表情を浮かべる。


「琥太郎ぉ、聞いてく――」


「いや、今無理」


 藤平の腕を強引に掴み、角を曲がりきる。


「おい、あとチャイムまで一分だけど大丈夫か?」


「おわた」


***


「お前らまた遅刻か!!

 あとで職員室こい」


 ……クソ、藤平を置いてけば絶対間に合ってたわ。


***


 二連続遅刻かぁ。

 昨日やんわり注意してくれた須田先生も、今日は結構キレてた。

 成績に響くよな……すると、遅刻の元凶が俺の前の席に座ってきた。


「よお、琥太郎。

 さっきはやばかったな、須田もあんなにキレるんだな」


「で、また名も知らない女の子に告ったのか?」


 藤平は首を縦に振る。

 こいつ、諦め悪すぎだろ。


「藤平、忠告するけど、もうそんなことしない方がいい。

 付き合えるわけないし、評判も下がるぞ」


 泰葉に作ってもらった弁当を前にして、迷惑そうに言う。

 流石に、やめるだろう……。


「ああ、そうだな、やっぱり俺って駄目な奴だよな」


「駄目な奴じゃないですよ。

 ただ馬鹿ってだけで」


「おい!慰めの一つくらい入れろよ!!」


「毎日告白してる奴に慰めはいらんでしょ」


 本当なんだ、この人は……


 弁当の蓋を開けると――

 開けた瞬間、電光石火で閉じる。

 泰葉の意味がわかった。

 確かに喜ぶけど、これは……キャラ弁!!

 しかも俺の大好きなやつ!!


「ん?どうした、琥太郎。

 弁当をすごいスピードで閉じて……何かあるのか?」


「いや、何もないっす、藤平さぁん」


「怪しいな、弁当見せてよ」


「いや、別に……あ、トイレ行ってきます」


「トイレなら弁当持つ必要ないだろ!」


 俺の必殺技「便所飯」が封じられた……。


「怪しいな、さっきから何隠してる?」


「……だから何も隠してないって!

 あー、弁当奪わないでください!!」


 一瞬で弁当を取られてしまう。

 ……まずい、まずすぎる。


「さてさて、何かな〜」


 もう開けられる。

 万事休す。


「え?琥太郎、これって」


 終わったな。


「琥太郎、すごいな。

 お前もこれ好きなのか?」


「え?」


「俺も好きなんだよなぁ。

 お前、この何部が好き?」


 こ、こいつ……知ってる。


「藤平も見てるの?」


「ああ、見てる見てる。

 あれめっちゃ好きなんだよね」


 今、確定した。

 こいつは俺の友達だ。


「俺は7部かな、藤平は?」


「わかる〜。

 7部も捨て難いけど、俺は主人公が好きな2部かな」


 手を突き出す俺。

 こいつはわかってる。


「でも、なんで隠してたんだ?

 こんな上手なキャラ弁、俺だったら見せびらかすけどな」


「いや、普通に恥ずかしかったから」


「恥ずかしがることねえって!

 むしろこの弁当で琥太郎の好感度上がったぞ」


「そういうもんかね?」


「お前、敬語やめろよ」


「え?」


「俺らもう友達だろ。敬語なんていらねえよ」


「確かに、敬語っておかしいよな」


「おかしいって何だよ、おかしいって」


 少し変わったやつだが、いい奴。

 俺の初めての――友達だ。

 

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