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盤上の翼  作者: なぎさ
2/5

第2話 藍川さん


「どうしたもんか」


 無理矢理誘われて仕方なくボドゲをやった帰り道。

 正直、今部活に入るほどの余裕がない。

 なんてことない理由だ。

 家で一人の妹を俺が養わなければいけないというのも理由の一つにあるが、もう一つは……


 単純にアニメとかラノベとかを見たいなどが理由にある。

 まあ、その理由に関してはほんの少しだけだけど。

 いや、本当だからね?

 割合で言うなら、妹が七割。

 アニメとラノベが三割だ。

 ……いや、三割って結構多いな。

 俺は両親に信頼されて妹の面倒を託されている。

 その期待に応えないわけにはいかないのだ。

 その瞬間。

 聞き馴染みのある声が俺の背後から聞こえてくる。

 

「ねえ、西條くん」


 それは同じクラスの女子。


「ど、どうしたの?

 藍川さん帰り道こっちだっけ?」


「まあ、いいじゃん。

 ちょっと話そうよ」


 より一層嫌な予感が増した。

 俺はそれよりも女子と喋る経験が泰葉くらいしかないので若干ドギマギしていた。

 こういう時どういう質問すればいいんだ。


「えーと、じゃあ藍川さんはボドゲ好きなんですか?」


「うん、好き。

 ボドゲは勝ち負けがあるから一番楽しくて好きだな」


「それにしても西條くん。

 さっきのカタン凄かったね」


 なんだ?

 言葉の節々に妙な圧を感じる。


「いや、カタンなんて運要素もありますし勝ったのなんてたまたまですよ」


「西條くん。

 私はね例えそれが運で勝ったとしても……ぐやじい」


 え?

 なんで泣いてんのこの人。

 たった一回カタンしただけだよね?


「あ、藍川さん。

本当にたまたまですからそんなに泣かないでください」


「そういう問題じゃないから」


 藍川さんからの冷たい目が俺を責め立てる。

 ……なんなんだ、この人。

 

「藍川さん、俺家着いちゃったからそれじゃあね」


 ガチャ。

 ドアノブを捻る音が俺の背後でする。

 不意に嫌な予感。

 一番合わせたくなかった相手が……

 

「お兄ちゃんお帰りなさい。

 って、え?

 どちら様ですかもしかしてお兄ちゃんの……」


「違うからね!

 泰葉たまたまクラスメイトが帰り道で一緒になっただけだから」


「どうぞどうぞ、家に入ってください!!」


 あー、駄目だ。

 この状態に入ったら泰葉は止められない。

 まあ、今日初めて喋った男の家に行くなんて行為そんなするわけ無いよな。


「いいんですか?

 じゃあお言葉に甘えて」


「へ?」


「いや、ちょっと待って――」


 ズカズカと俺の家に踏み入る藍川さん。

 ……くぅ、だが正直ここまでは別に構わない。

 だが、俺の部屋だけは何があっても見られてはいけない。

 俺の学校でのクールで真面目なイメージが一瞬で破壊されてしまうからだ。

 俺は泰葉がリビングに案内している間に俺の部屋に鍵を閉める。

 我ながら完璧な作戦だ。

 だが……なに?

 泰葉と藍川さんが二階に上がろうとしている。

 少し強引だがこれしか方法はない。


「お兄ちゃん!!

 そこどいて」


「駄目だ!!

 ここだけは泰葉の願いは常になんでも叶えたいと思っているけどこれだけは駄目なんだよ」


 泰葉と藍川さんの視線が冷たい。

 すると、先程までと打って変わって泰葉は天使のような微笑みで。


「お兄ちゃん。

 あーけーて♡」


「なにいいいいい」


 あまりの泰葉の笑顔の破壊力に腰を抜かす。

 ガチャ。

 あぁ、もう終わった。


「へえー西條くんの部屋、意外と綺麗じゃん」


「ほへ?」


 俺の予想した感想と違いすぎる。

 確か、部屋には沢山のアニメやラノベのグッズやポスターなど趣味全開な部屋だったはずだ。

 まさか。

 目を疑った。

 目の前に広がる光景は――


「綺麗だ」


 趣味丸出しの俺の部屋は見事なほどに綺麗になっていた。

 泰葉を見るとウィンクしながらグーサイン。

 あー、もうマジで愛してるぞ泰葉。

 助けられたな。


「お兄ちゃん

 夕飯の準備を今日は藍川さんにご馳走しなきゃ」


「いや……もう、帰ってもらった方が」


 ギロッ。

 ヒィ、そんな怖い顔をしないでくれよ。


「わかったよ。

 じゃあ夕飯作るから藍川さん座っててよ」


 はあ、全く今日は厄日だ。

 俺は卵に火を通してグツグツと夕飯の準備を進める。

 

 ***


 今日はお兄ちゃんの初めて連れてきた女の子友達。

 お兄ちゃんは優しすぎる。

 だから私が見極めないといけない。

 目の前にいるのは、茶髪が印象的な綺麗な女の人。

 今日はこの藍川さんという女性がお兄ちゃんに相応しいのか確かめてさせてもらいます。


「藍川さん?

 お兄ちゃんとはどういうご関係で?」


「まあ、普通にクラスメイトだけど?」


「今日は何故お兄ちゃんとご一緒で?」


「うーん、まあ部活帰りみたいなもんかな

 西條くんをボドゲ部に誘ったんだけど頑なにこだわってさぁ、そんなに私にボコボコに負けるのが嫌なのかな」

 

 ……ボドゲ。

 その単語に息を呑んだ、

 それは琥太郎にとってタブーの言葉。

 あの惨劇を絶対に思い出させちゃ駄目だ。


 ***


「はい、できたよ。

 オムライス」


 泰葉と藍川さんの二人用のオムライスが作り終わった。

 うん、なかなかの出来栄えだ。

 泰葉はともかく藍川さんは食べて早く帰ってほしいな。

 二人はオムライスを口に運ぶ。


「う〜ん、幸せです。

 お兄ちゃん」


 藍川さんの方はどうだ?

 若干藍川さんの表情が一瞬だけ曇る。

 うん?

 口に合わなかったか?


「う、うまあぁあああい。

 感動したよ西條くんこんな料理作れるなんて」


 さっきのカタンの件といいこの件といいこの子感情表現の起伏が激しいな。

 すると、藍川さんはとてつもないスピードでオムライスを食らい尽くしていく。


「西條くんおかわりしてもいいかな?」


 マジかよ。


 ***


 結局、藍川さんはオムライス三杯行った。

 流石に食べすぎでしょ。

 俺は内心に留めつつ食器を洗っていく。

 はあ、藍川さんもそろそろ帰るだろうし部屋でゆっくりするか。

 二階に上がろうとした瞬間、後ろから手を掴まれた。


「藍川さんかどうしたの?

 もう、帰らないと家の人心配しちゃうよ?」


「わかってるって。

 いや、なんか今日は色々ありがとね。

 本当はボドゲ部に勧誘するために行ってたんだ。

 やっぱり西條くんボドゲ部に入らない?」


「……」


「ごめんね、やっぱりそうだよね」


 藍川さんは一呼吸置いてから。

 

「でもね。

 私は絶対諦めないよ琥太郎くん」

 

 


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