エピローグ 第二王子殿下の婚約事情
今年の秋のセムラート王国新聞各紙は、ひとつの話題に熱狂していた。
秋の恒例行事たる王家主催の狩猟大会で、優勝した第二王子殿下が、表彰台で、ひとりのご令嬢に狩りの名誉を捧げ、その場で跪いてプロポーズしたのである!
ご令嬢は、アディンセル伯爵家のアイリーン嬢。かつて『二妖精姫』と称えられたエミリア夫人に似た美しい紫色の目の可憐なご令嬢で、王太子妃殿下の従妹にあたる。
彼女は殿下からのプロポーズに慎ましく頬を染めながら頷き、主催者としてその場にいた王太子夫妻はもちろん、なぜか表彰式に顔を出した国王王妃両陛下も、惜しみなく祝福を送った。
会場は歓喜に包まれ、王室に近く加わるであろう新しい期待に、快哉が叫ばれたそうだ。
この春に彼女と第二王子殿下が連れ立って社交の場に出ていたことを取り上げていた新聞社は、その記事を振り返り、当時から二人は友好を深めていたのであろう、と報じた。
表彰式の壇上でのプロポーズは、ロマンティックな名場面として、各新聞雑誌が競って銅版画に起こした。
わけても繊細な描写と緻密な表現力で人気を博したウィルモット社の雑誌紙面を、さるご令嬢はいそいそと切り抜いてスクラップブックに貼っていたのだが――さすがにそれは、余人のあずかり知らぬところである。
これにて完結です。ありがとうございました!
数本短編を上げたい気持ちもありますが、それはまた機会があれば。
短編や次作については必要に応じて活動報告でしようかと思います。




