【乱戦】
空中から爆発が降り注ぐ 委員会の新型機による攻撃だ
地鳴りと共に革命者の機体がいくつもスクラップになる
「厄介だな」
デストロイアが体を傾ける 背中のミサイルランチャーが開き、中から弾頭が顔を覗かせた
噴煙が巻き起こり、ミサイルが放たれる
命中、直撃 寸分違わすミサイルは、空中の敵を花火にした 残骸と破片が大地に真っ逆さまに落ちていった
キャタピラ型によるミサイル攻撃が始まる ゆったりと前進しながら、委員会の部隊は腕部のミサイルガンを前に向けた
一秒程のロックオン 数え切れないミサイルの嵐が革命者の部隊を襲う
が、革命者も新型の機体を使用していた その機体はミサイルを楽々と回避して、反撃のキャノンを撃つ
腕と一体化したキャノンから撃たれた砲弾は、目にも止まらぬ速さで目標の目と鼻の先に着いた
砲撃の餌食となった委員会機を尻目に、革命者機は次の敵を倒そうと歩き出す
その頭上を、委員会の新型が通り過ぎた その飛行機体は地上にロケットランチャーを発射 地上に着弾したそれは敵を破砕し、革命者の勢いを削いでいく
「クソッ!対空砲火だ、急げ!・・・ぎゃああっ!」
死の雨に怯えた部隊長が空中にアサルトライフルを乱射するも、背後から空爆を食らい倒される
味方の盾になるように、脚の太い革命者の機体がマシンガンを構えた 連続で放たれる弾丸を、委員会の新型機は華麗に避けて見せる
その勢いのまま、飛行型が脚の太い革命者機に急降下爆撃を敢行した 機体の胸部の機銃が、下半身とは不釣り合いな細い上半身を砕いていく
穴だらけになり、後ろから倒れた味方機の横に立った革命者の新型に、委員会の新型機はロケットランチャーを発射する
しかし新型機は足を折り曲げ、腰を落とした 瞬間、革命者機が跳び上がる 低空飛行していた飛行型に、反撃のキャノンをお見舞いした
しかし戦況は革命者側が不利である
空爆隊により革命者の陣形に穴が開いた その隙を突くように浮遊型が突撃する
「怯えるな!陣形の穴に食いつけッ!」
全速力で移動し、ホバークラフトの機体はグレネードを発射した 迎撃しようとした敵機を貫き、グレネードの爆風が大地に花開く
「・・・あ、あれは!?」
委員会部隊の一機が一際巨大な敵機を確認した
それは傭兵の愛機
デストロイアが爆風の向こうからミサイルを大量に撃つ ミサイルと正面衝突したホバークラフト機体が無様に爆散していく
「部下の仇ィィィィッ!!!」
避け損ねた味方を振り向いた一機が、ミサイルガンを構えた
そこに、黒い人型機動兵器が飛び込む その機体は爪先を引き、そのまま膝で体当たりをかける そして、ミサイルガンに引き金をかけた腕を蹴り飛ばした
衝撃で明後日の方向に向けられる銃 黒い機体はそのままブースターを噴射し、委員会の新型機にガトリングを撃つ
ここで、デストロイアが右腕を向ける そこに握られていたのは、大型のマシンガンである
「無念・・・ッ!」
弾幕によりもぎ取られた上半身を置き去りに、浮遊型の下半身がデストロイアに向かっていく
その時にはレールガンのチャージは完了していた
赤い四つ脚の左手が、機械音を立てて変形する 躊躇いもなく向けられたその左手から、躊躇いもなく光が飛び出した
磁力を利用した超高速の特殊合金製の弾が、暴走するホバークラフト脚と委員会の地上戦艦を貫通した
否、最初から目標は地上戦艦であった たまたま射線上に、自機にぶつかりそうな物体があっただけ 一石二鳥だ
「キリがないな・・・これが人型機動兵器による大部隊戦が」
しかしいくら幸運が重なろうとも、戦いに勝たなければ意味がない
タナトスが近場の飛行型を粗方撃墜した頃、二人に通信が入る
メアリだ
「聞こえるか!?未確認の敵影だ、傭兵の機体がそちらに向かっている!」
「何?」
「親父、囲まれてるぞ!」
「何!?」
アレックスの警告虚しく、デストロイアは完全に包囲された マイケルが歯軋りをしながら、立ち回りを思考する
一番手っ取り早いのは、タナトスに助けてもらうことだが
「見つけたぞ!【死神】ッ!」
「僕達兄弟の名を知らしめる為に、ここで死ねぇッ!」
二対一のあの状況では、援護は望めないだろう
「くっ・・・!」
マイケルが呻いた と、同時、委員会の機体が武器を向けた
「死神、無事か!?」
予想外の事態に、代理オペレーターのメアリは叫ぶ
やはり自分では無理だったのか メアリは強くそう感じた
今回の相手は二対一 いくら死神の渾名を持つあの傭兵でも、今回ばかりは危ないだろう
メアリの額に脂汗が滲んだ
「ちょっ!ミシェルさん、無茶ですよ!」
「今は安静にしてなって・・・あっ!」
その時、ディアーズとジョナスンの声が聞こえた
その直後、死神の本来のオペレーターが、ふらつきながらメアリに歩み寄る
過労のせいで、足取りが怪しく目の焦点が合っていない
が、その右手にははしっかりとメモ書きが握られている
「メアリ・・・これを・・・あの人に・・・」
「ミシェルッ!?」
ついに倒れ込んだブロンドの淑女を抱き留め、メアリはそのメモ書きを片手で受け取る
中身を見て、メアリは更に驚くことになる
「これは・・・ッ!?」
元パイロットの彼女は、自分はオペレーター向きではないと心底理解した
タナトスは追い詰められていた 青い敵機体はそれぞれタイプが違っていた
兄の機体は攻撃を、弟の機体は足止めを
まさか動き出す前に、弟の機体による網がタナトスを捕らえるとは誰も思うまい その網はかなり頑丈で、死神と呼ばれた機体のパワーでも引きちぎることは叶わないようだ
「捕まえた!兄さん!」
「よくやった弟よ!」
兄の機体は、全身にガトリングを備えていた そう、まさに全身に
頭、手、腰、胸、背中、肩 そこから前方に向けて、ガトリング砲が伸びている
あの量では、タナトスと言えども蜂の巣
しかしいくら逃げようとも、反撃しようとも、網がその行動を阻害している 弟機が網を持っている限り、タナトスは身動きひとつできはしない
しっかりも狙いをつけ、兄の機体がガトリングを構えた
そこから弾が吐き出されてしまう、その寸前だった
死神の切り札が解除されたのは
「な、何だあれは!?」
タナトスの肩辺りから、二基のユニットが分離した それは自立飛行しながら先端を兄機に向ける
重いガトリングを大量に装備した機体は、その場から離れることはできなかった
そのユニットの名前は、『独立飛行型自立攻撃砲台』 全身スラスターに続く、タナトスのもうひとつの切り札だ
二基のユニットから、ミサイルと機銃が放たれる それは寸分違わず兄機を襲った
「兄さんっ!」
兄の方を見た弟が、一瞬網を持つ手を緩めてしまう 死神がそこを見逃すはずはなかった
別の切り札が起動する タナトスの各部からスラスターが出てきた 点火されたスラスターが、機体に莫大な推力をもたらす
「ぐわぁっ!」
網を振り払った黒い機体が、空中へと踊る 自立ユニットも追従する その様子は、呑気にもまるでペットと飼い主のようにも思える
眼下には、傭兵の機体が二機
「し・・・しまったぁッ!」
兄弟のどちらかが叫ぶ 最早どちらの台詞かも関係ない
独立ユニットのミサイルが、独立ユニットの機銃が、ガトリングが、バズーカが、肩内部のロケット砲が、愚かに死神に楯突いた者共に向けられる
「ぬおっ!」
射線からデストロイアが逃げ出した
トパーズのようなカメラアイが光る
委員会の機体が武器を撃った
それは頭部に直撃した
しかし、もう遅い
ドクロの目玉が一瞬光った
そして、タナトスの目の前には灰しか残らなかった
大陸の全残存戦力を集めた委員会は、逃げる場所もなく革命者の迎撃で全滅 ここに大陸の組織は一つ消えた
しかし革命者もまたその戦力を半分減らし、防衛しようとした鉱石場を空爆により失った
死神と破壊者のコンビは、またもや敵を倒したが、同時に味方にも損害を与えてしまった
ベッドに横たわるミシェルの横に、椅子に座ったパイロットスーツ姿がいた
器用にリンゴの皮を包丁で剥く
「ねえ・・・」
ミシェルが寝言を呟いた 傭兵はリンゴの皮を剥いている
「よかった・・・生きてて・・・」
暫くして、リンゴを剥き終った傭兵が、オペレーターの頭を撫でていたのは、誰も知らない




