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49話

 『隠蔽』


 主に3つの効果があると言われている。


 ①自分を『隠蔽』する

 セーイコングが使っていた効果である。

 自分の存在を認識されづらくなる。ただし、対象の距離が近いと効果が低くなり発見されやすくなる。

 視覚に訴えかけている。


 ②物的証拠を『隠蔽』する

 何かしらの痕跡を消すことを可能にする。

 足跡などが代表的なもの。


 ③スキルを『隠蔽』する

 自分が『隠蔽』持ちであることを『隠蔽』できる。

 もちろん他のスキルも『隠蔽』できる。

 見破るためには解析系スキルを長時間使用する必要がある。

 実質見破るのは不可能に近い。



 「……という非常に優れているスキルなんだよ」


 「へー、かなり使えるな」


 あれから2日経っている。

 『スナッチ』を使いすぎて次の日は体を動かすのが億劫だったので、移動を見送った。

 その次の日には良くなったので、東へと移動している。



 「んじゃ、使ってみようか」


 『隠蔽』


 「……どう?」


 目の前にいるノールに効果のほどを聞いてみる。


 「……微妙。この前のゴリラほどじゃねーな」


 「……そうか」


 やっぱり使いこなせていない。

 これではっきりしてしまった。『スナッチ』で奪っても最大限の効果を発揮できていない。

 特に『隠蔽』は酷いな。

 レベル25もあるのに微妙と言われてしまった。


 「基本はスキルを隠しておくか」


 この前30人近くに俺が複数スキルがあるのがばれた。

 支部長には『スナッチ』は喋ったけど、大丈夫でしょ。大丈夫だよね?

 まあ、『剣術』『火炎魔法』『付与魔法』以外は隠蔽だな。

 あとレベルも弄る。

 全部1~3にしよ。


 隠すだけでも『解析』でばれないから何かと使える。

 今までは『スナッチ』が勝手に見られてないか不安だった。




 名前:ネクロ

 歳 :18

 性別:男

レベル:20

スキル:スナッチLv4

    強化Lv11

    火炎魔法Lv19

    剣術Lv23

    解析Lv18

    体術Lv19

    生命力Lv7

    索敵Lv13

    隠密Lv12

    毒耐性Lv10

    剛腕Lv11

    付与魔法Lv12

    誘導Lv1(NEW)

    隠蔽Lv25(NEW)


 また2週間程度かけて東まで行った。

 基本このあたりは自然が手つかずなので、雄大な自然が俺達を迎えた。


 入り口付近なので何かと人が多い。

 人間と獣人地域の境目みたいな感じだ。


 「この先ってどうなってるんだ?」


 アイラが答えてくれる。


 「基本は自然ばかりです。獣人も多いですが、人間も一定数います。」


 「そうなんだ。知らなかった」


 「迷宮の周りは木を切り倒して、ちょっとした町ができています。

 そこには人間と獣人が入り乱れています。」


 「斡旋所もあるの?」


 「ありますよ」


 「そうか」


 さて、金はある。迷宮に行く必要もない。

 どうするか。


 「3人ともどっちから行く?ノールとアイラは場所がある程度分かるんだよな?」


 「俺はどっちでもいいぜ。今更早いか遅いかなんて関係ないだろ」


 そう言ってプラプラそこら辺をウロチョロし始めてしまった。

 それでいいならいいけど。


 「私はアイビスちゃんの親を探した方がいいと思います」

 「えっ!?」


 アイラが答えるとアイビスが驚いて、ギョッと見つめている。


 「だがどうやって探す。調子こいて帰すなんて言ったが、どうしようか悩んでいたんだ」


 「……ネコを訪ねます」


 「「ネコ?」」


 「……獣人は基本6つのグループに分かれています。

 イヌ、ネコ、クマ、ウサギ、クジラ、ネズミのどれかに必ず所属しています。

 アイビスちゃんは猫なので、親も猫のはずです。

 ネコ代表を訪ねて誘拐された人がいないか探させます」


 「……そう上手く行くか?代表なんてかなり偉いだろ?会ってもらえるのか?」


 疑問を口にするとノールがひょっこり戻ってきた。


 「いやいや、ボス。それが上手く行くんだな」


 「どういう事だ?」


 アイラの顔はちょっと悲しげな顔だ。


 「……アイラ、言っていいの?」


 何かを言う前に確認をとる。なんだ?


 「いいよ。アイビスちゃんを帰すためだもん。

 それに使えるものは使わなくちゃ。」


 「……そっか。ちょっと変わったな」


 「そうかな」


 「そうだよ」


 2人だけ勝手に通じ合っていると、ノールが説明を始める。


 「ボス、アイラのスキルは?」


 「は?『弓の加護』だろ?」


 「そう。これを初めて知った時どう思った?」


 「小便ちびるかと思った」


 「「「……」」」


 冷めた目になってしまった。


 「な、なんだよ。それくらい凄いって事だろ」


 「……ま、そういう事。これってそうそうある事じゃない。」


 「そうだな」


 この前の『天通眼』はほとんど天災だ。

 ホント辞めてほしい。


 「でだよ。これってさ、神に愛されてるに等しい存在って事になるんだよ、俺達の間では」


 「……だろうな。俺でもモフモフするよ」


 「それは置いといて」

 

 なんだよ


 「アイラはかなり特殊な立ち位置にあるわけ。アイラ様的な?」


 「ん?あ~。なるほど。コネクションはあるわけだ」

 

 「そうだけどさ。あいつらかなり鬱陶しいんだよ。アイラはあまりそういうの好きじゃないんだ。

 もはや崇拝の域に達してるね」


 「それはウザいな」


 「……アイラはそれでも行くっていうの?」


 アイビスがアイラに不安げに尋ねる。


 「……その内に会う事になるしね。早いか遅いかの話なの」


 「……そう。……ありがとう」


 下を向いて小さい声でお礼を言う。


 「ふふ、どういたしまして」


 ニコリと笑ってアイビスの手を優しく包みこんだ。





 「とりあえず行きたいが、馬車で行くか?」


 通り道はあるが、目的地がこの道の上にあるか知らない。


 「目的地に行くには徒歩です。途中まで馬車で行きます」


 「……そうなんだ。とりあえず切り開かれたとこまで行こう」


 

 パッカラパッカラ馬を走らせること半日程度、最初の開拓地らしき場所にたどり着いた。


 「ここで馬車は終わり?」


 「そうですね。ここからは森をかき分けて猫の集落を探さないと……」


 「マジ?探すの?」


 「あの人たち結構気ままなんで、定住しないんです」


 この森どのくらいの広さがあるか分からないんだけど。


 「歩いてればその内どこかの集落にぶつかりますから、大丈夫ですよ」


 「……ならいいや。今日はここに泊まって明日移動するか」


 「「「はーい」」」



 翌日


 この森には不快感というものがない。

 空気は澄んでいて、湿度も快適。

 地面は乾いて歩行しやすく、植物が生い茂っている訳ではない。

 森の中に入り込むという忌避感がない。


 馬が背負ってくれる分の食料と水を買って開拓地を出た。


 「情報ではここからさらに東にいるらしい(・・・)けど……」


 整備された道ではなく獣道とまでは行かないが、人の手の入らない道なき道を行く。


 「……どうでしょう。居るかは運ですね」


 「いいじゃん、楽しんでいこうぜ」


 ノールは馬の前を歩き、両手を頭の後ろに添えお気楽にそう言った。


 「そうは言ってもだな……」


 「えー、早く見つかったらあっという間にお別れだぜ?ボスは寂しくねーの?」


 「まぁな。見つかったら俺何しようかな?みたいなのはあるな」


 「だろう?基本暇だからな」


 「うっさい」


 前でカラカラ笑った後、唐突に提案してきた。


 「じゃあ、ボスは俺達の村にでも住むか?」

 「「!!!」」


 「あ?んー……」


 それも悪くないか?迷宮あるなら稼げるけど。


 「ナイスよ、ノール!そうしましょ!お兄ちゃん!」


 凄い勢いで近づいてきて賛同を求めてくる。

 目は煌めき希望に満ちている。


 「お、おう……そうか、……考えとくよ」


 「……あ、……う、……」


 後ろでアイビスが何事かを呻いている。


 「どうした?アイビス」


 ちょっと様子が変なので心配になってきた。


 「あ、あの……わ、わた、私も……」


 しどろもどろになりながらも、懸命に自分の意図を伝えようとしている。

 ロリコンには見せられない。お持ち帰りされる事請け合いだ。


 アイビスの主張にアイラがいち早く飛びつき歓喜の声を上げている。


 「ホント!?アイビスちゃんも来てくれるの!?やったぁ!!」


 アイビスの手を取ってぴょんぴょん跳ねる。


 ……なんという美しい光景だ。ここが桃源郷だったのか。

 軽く百合が入ったな。




 あんな事があったが、今はそれどころではない。


 「……さっきから魔物多くない?」


 ちょっと歩くと戦って、あまり経たずに魔物にまた遭遇している。

 今までこの遭遇率の高さはなかった。


 「そりゃそうだよ。ここに騎士団いないし」


 「え?マジ!?じゃあ巣の魔物放置されてんの?」


 「そゆこと」


 嘘。そんなの聞いてない。

 これからこんな事ずっと続くの?


 「じゃあ『スキル持ち』もあまり討伐されてないから、数が多い?」


 「そうなんじゃねーの?知らねーけど」


 「何で知らないんだよ。故郷だろうが」


 当然の疑問をぶつける。


 「ここで『スキル持ち』と戦った事ないんだよ。ボスとのポイズンスパイダーが初めて」


 そういえば戦闘経験なかったって言ってたわ。


 「……なんで戦ってないんだ?無理しなければ倒せるだろ?」


 「危ないからダメだって。万が一アイラ様に何かあったらどうするんだ!みたいな」


 「……そんなに過保護なのか。せっかく『弓の加護』があるのに」


 「ボスもそう思う?

 俺もさ、『双剣術』があるならアイラ様を守れ!みたいな事言われて結局は戦ってないんだ」

 

 「ノールは私の騎士だもんね?」


 「おい!それ言うなよ!」


 怒ってアイラに詰め寄っているが、アイビスを盾にされて手出しできなくなっている。


 「騎士ねぇ……」


 1回くらいはノールの事をそう思った事があった気がする。


 「ちょっ、もうこの話題終わり!」


 こちらを見ないでズンズンと先に行ってしまった。




 俺達は何かトラブルを呼び込むようなスキルでも持っていただろうか?

 

 河原で休憩していたところに、突如大声が上がる。


 「いた!いたっス!今度は視えたとおりっス!おーい、助けて欲しいっス!!」


 走りながら黄金色の髪の狐が走り寄ってくる。


 たくさんの魔物を連れて。


 ふざけんな。

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