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40話

 通りの騒がしさに気を取られて、ようやく4人が起床した。

 連日の移動と緊張状態が、いままでに経験のない疲労を与えていたので、全員が昼前に起きる事態になった。


 「……朝飯抜きになったな」


 現状を正確に述べるが、誰も反応しない。寝ているわけではなく、せっかく作ってくれるご飯が食べられないのが悔しいようだ。

 宿は1泊5,000ユグ取るだけあって、なかなかご飯が豪華なようだった。

 移動中は侘しい食事になってしまい心苦しいが、誰も料理はできない。

 結果として食事を楽しみにしていたが、昨日は晩飯を逃し、そして今に至る。


 5,000ユグ払ってやったことは睡眠だけだ。払い損だよ。


 「……昨日までの干し肉があるからそれで食い繋ごう。夜になれば食べられるから。な?」


 こいつら全員強いと言っても、13歳と11歳だ。

 ちょっとしたことで機嫌が悪くなるから、気苦労も多い。


 「……うん」

 「……はい」

 「……そうね」


 反応は薄いが全員了承してくれる。

 全員でモソモソと干し肉を噛み、飲み込む。

 ……そこまでおいしくない。というより飽きた。



 テンションが低いまま外に出る。太陽はほぼ真上にあり、眠りこけていたことが分かる。


 ちょっときついけど、お金は必要だ。

 稼がないと死んでしまう。


 その前に、


 「先にノールの剣を見に行こう。具体的な金額を決めから迷宮に入って稼ぐぞ。」


 「よっしゃ!早く行こうぜ!」


 ノールだけは今の話を聞いて興奮気味になっている。

 ノールに連れられ人が多い場所に赴くと、運よく市場に出た。


 義勇兵斡旋所があるだけあって、武器屋が多い。もちろん食料や日用品も置いてある。

 人は多く店舗を構えて営業している所もあるようだ。


 前は適当な露店を選んで購入していたが、今回は高い金を払うので良さそうな店舗に入る。


 店舗を外から覗き込むと、食料品店だったり武器屋だったりと他にもいろいろあった。

 

 4人はキョロキョロとしながら市場の奥に入っていき、人の少ない店舗に入店した。



 店の中は暗いが、多種多様な武器が並べられている。

 店番はいないようだが、奥からは大きな音が断続的に続き、精力的に働いていることが分かる。


 「すいません!!」


 奥に向かって大声を出すと、ガチムチのおっさんが姿を現した。


 「あん?なんだ餓鬼ども。」


 めっちゃ顔が怖い。腕の太さは父さんといい勝負だ。

 アイラとアイビスその姿の異様さに声を失い、閉口している。


 しかし、うちのノールは勇者である。


 「おっちゃん!俺の武器が欲しいんだけど作ってくんない?」


 「あん?てめぇのだと?」


 おっちゃんはノールをじろじろ見て値踏みしている。

 あんな眼光にさらされたら俺なら即刻土下座して、退去している自信がある。


 「なんだよー、だめなのか?」


 「……小僧、レベルを言え。」


 ノールは俺を見て何も言わない。速く自分のレベル言ってよ。

 オッチャンもこっち見てんじゃん。


 「ボス?俺のレベルは?」


 「ん?あっ、そうか」


 最近レベルなんて教えてなかったわ。

 結構戦闘したし上がってるかもな。

 ついでに全員確認するか。


 『解析』



名前:ネクロ

 歳 :18

 性別:男

レベル:19

スキル:スナッチLv4

    強化Lv10

    火炎魔法Lv18

    剣術Lv22

    解析Lv18

    体術Lv18

    生命力Lv5

    索敵Lv13

    隠密Lv12

    毒耐性Lv10

    剛腕Lv10

    付与魔法Lv10


名前:ノール

歳:13

性別:男

レベル:13↑(1)

スキル:双剣術Lv17


名前:アイラ

歳:13

性別:女

レベル:11

スキル:弓の加護Lv16


名前:アイビス

歳:11

性別:女

レベル:18

スキル:暗殺術Lv28


 ノールだけ上昇していた。

 基本ノールが前線で戦ってるから当然なんだけど。


 「の、ノールのレベルは13です!」


 オッチャンに向かって報告する。緊張してちょっと噛んでしまったのはご愛嬌だ。


 「……13か。スキルは持ってんのか?あん?」


 「ノールは『双剣術Lv17』を所持しているであります!サー!」


 次は完璧に報告をしてご機嫌をとらせてもらった。

 普通はスキルなんて他人に喋っていいもんじゃないのに、怖いから喋ってしまった。

 しょうがないじゃん、怖いんだもん!


 「あん!?嘘ぶっこいてんじゃねーぞ!」


 ひええぇええっぇ!

 顔を近づけ迫ってくる。見る人が見たら涎を垂らしてガン見している状況だ。


 「う、嘘じゃないっすよ。解析系スキル持ってるんすよ、俺。

 今確認したばかりっすよ。」


 「あん?解析持ちだと?じゃあ、俺の名前言ってみろ。」


 「うっす!」


 『解析』


名前:ジェイク

 歳 :52

 性別:男

レベル:8

スキル:なし


 「ジェイクさんですね!ヨロシクっす!」


 「マジで持ってたのかよ。そっちの小僧のこともホントだろうな!?」


 疑われている。確かに、解析系を持っていても嘘を言わないとは限らない。


 「そこに関しては信じてもらうしかないっすけど……」


 「まぁいいわ。金さえあれば客はえらばねぇ。」


 さっきの問答は何のためにやってたんだよ。


 「んだよ、信じてねーの?」


 ノールが口をとがらせて不満を言う。

 ちょっとやめて!


 「あん?そんなもんはどっちでもいーだろうが。お前が本当に『双剣術』を持っていなくても俺の仕事は変わらない。違うか?」


 「ん?そういやそーだな」


 「だろう?」


 そうして二人はガッハッハ!と笑いながらお互いを軽く叩いている。

 どこのタイミングでなかよくなったんだ?


 「おっちゃん、剣2本な!良いやつ!」


 「おめー、金持ってんのか?幾らだせんだよ?」


 「ボス?」


 ノールが金額のことを聞いてくる。


 「ノールが差している短剣が1本25,000ユグっす。最低でもこれ以上の性能の短剣2本欲しいっす。

 1本10万ユグくらいが予算っす。」


 「全部で20万か。結構使うな。形はどうする?」


 ノールは2本を差し出す。


 「形はこんなのでいいよ。これに慣れっちゃたし。長いのと短いのね。」


 「了解だ。10日後に来い。前金で10万貰うぜ。バックれても困るからな。」


 そりゃそうだ。




 この町も斡旋所がある事から分かるように、近くに迷宮がある。

 迷宮はそれぞれ階層で出現する魔物が変化する。


 基本1層からレベル8が出現し、階層ごとにレベルは1ずつ上昇する。

 レベル1ではないことから、戦闘経験のない素人が突然挑戦しても酷い目にあい、最悪死んでしまう。


 しかし、重要なのはスキルでありどの魔物がどんなスキルを持っているかが、生死の分け目となる。



 「今日はとりあえず5層から行く。レベルは基本13だ。油断するなよ」


 迷宮に入り5層まで行く間は、適当にやりすごしここまで到達した。


 「俺も何が出るかは知らない。斡旋所に行って聞いとけばよかったな。」


 「……何やってるのよ」


 ジト目を向けられやや興奮する。


 ……嘘だし。

 しかし、こうゾクゾクするものがある。


 「大丈夫だって。先にこっちが魔物を発見するんだ。先手を取るのはこっちだ。な?二人とも」


 しかし二人を見るとやや浮かない顔をしている。

 まるで初めての体験をして、戸惑いを覚えたような顔だ。


 「どうした?」


 「匂いがしない」

 「匂いがしません」


 「なんだと?どいうことだ」


 今までこんなことはなかった。

 戦術的に先にこっちが発見し、敵を奇襲するのが基本だったのに。  

 

 「そんなこと二人に聞いてもしょうがないでしょ。」


 「……そうだな。今回は『索敵』を使う。範囲は2~30mだ。

 ノールとアイラほどじゃないが、近づいてくる敵位ならわかる。」


 「4層に戻った方がいいんじゃねーの?」


 正論だ。何がいるか分からない状況だ。……しかし、そうでもないか?


 「いや、今まではどこに居るかが分かっていただけだ。今の状況はそこまで大きな問題でもない。

 それに上に戻れば魔石の買取価格が下がる。お金が欲しいし、最初の1匹さえ確認できれば、いつもと状況は変わらない。」


 「……いいわ。戻るのも面倒だし、早く行きましょ。」


 アイビスの一声で皆行ってしまう。なんだよう……




 3分ほどさまようと『索敵』の端に反応があった。

 

 「この先の右に曲がったところに1匹いる。何かは不明だ。」


 3人とも頷き慎重に右を曲がると、丸い透明な塊がいた。


 「スライム?」

 

 誰からともなく呟いた。ゴブリンレベルで有名な魔物でだが、あまり見たことがない。

 他の魔物にやられてしまったりして、迷宮の外ではあまり見かけない。


 しかし、ここは迷宮。スキルはないようだが、レベルは13。

 ここまで強いスライムも滅多にいないと思う。



 スライムもこっちに気付き、戦闘態勢に入った。ように見えるだけだ。

 違いが分からない。


 スライムは透明な自分の体から幾つもの触手をはやし、鞭のように振るっている。

 声は出していないが、気合だけはあるようだ。


 ゆっくりと近づき攻撃範囲に俺たちを入れようとしている。


  

 「誰が行く?」


 ぜひ女性陣に行ってもらい、触手プレイをしてほしい。


 「俺が行く!」


 あっという間に飛び出し真正面から触手を迎え撃つ。


 右に左に襲い掛かってくる幾多の触手をノールは2本の短剣だけで叩ききっている。

 周りには切られた触手が散乱し、激戦を物語っている。


 残りの3人は後ろから黙って応援しているが、変化に気付き始める。


 切られた触手がゆっくりとではあるが、スライムに戻り始めている。

 自分の体から離れても再生できるのか。便利。

 ……どうやって倒すの?


 疑問はアイビスが解消してくれた。


 「ノール、核よ!スライムの薄水色の球体を壊せば倒せるわ!」


 スライムの体の中心にぼんやりと、丸いものが見える。

 あれを壊すと倒したことになるのか。


 「了解!」


 アイビスの言葉を受け、向かってくる鞭を切り裂きながら核を突き刺す。


 スライムの全身が振動したかと思うや、魔石だけが残りゼリー状の体は消えてしまった。

 どこから魔石が出てきたんだ。


 ノールが魔石を回収し戻ってきたところで、感想を述べた。


 「なかなか強かったぜ。1匹ならあの数のムチに対応できるけど、何匹か来たら先に矢か魔法で数を減らした方がいいな。」


 そうさせてもらおう。

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