14話
朝ごはんを食べて、お風呂に入り、迷宮に潜る準備をする。
さて、今まであまり気にしていなかったが、大した武器を俺は持っていない。
防具と呼べるものは持たず、武器も木刀のみ。
父さんからナイフはもらったけど、魔石をとるためのものだ。
どうするか。残金は6,200ユグ。
武器も防具もかなり高いはずだ。最低でも、10,000ユグは要るだろう。
人一人が1か月生きるのに3~4万ユグ必要なことを考えると、かなり高い。
……中古はどうだ?
現状、攻撃力・防御力に不安はない。『強化』『剣術』『体術』があれば、そこまで後れをとらないはずだ。
一番ダメなのは、木刀が折れることだ。攻撃手段が『体術』か『火炎魔法』しかなくなる。
『体術』は敵に近づかないといけないから、あまり使いたくない。非常手段だ。
『火炎魔法』は使っている間動けないから、サポートなしには使えない。使っても先制攻撃だけだ。
俺のスキルの中では『剣術Lv22』が最強だ。刃物さえあればかなり有利に戦えるはずだ。
中古の剣を買おう。
買えなきゃ木刀でやる。
市場に行くか。
市場は毎日開いている。建物を構えるのではなく、敷物の上に商品を並べてそれを買い手が買う。
場所をあまりとらないから、たくさんの商人がいるし、安い中古の武器もあるだろう。
市場をうろつくと、若い兄ちゃんの露店に目が止まる。
新品と中古の武器・防具を扱ってるみたいだ。
「この武器はだれが作ったんだ?」
兄ちゃんに尋ねる。
「おっ、いらっしゃい。俺ん所の親方だ。
俺はそこの弟子で、朝は資金集めをしてるんだ。」
「新品を買うほどの金はないんだ。中古の武器はいくらするんだ?」
「そうか。何を使うんだ?」
「剣だ。」
「ちょっと待ってな。」
そう言うと後ろを振り向いて、武器がたくさん入った樽を持ってくる。
「武器の種類によって中古でも値段が変わる。
金がないなら新人か。いくらだせる?」
いくらまで出すか……。
「……そうだな。4~5,000ユグが限界だ。」
「そうなると、刃の長い剣は無理だな。8,000ユグはいる。
短剣ならその値段でいい。」
「4,000ユグで譲ってくれ。」
「4,500」
「……」
ジッとこっちも見てくる。
いい度胸してるな。4~5,000って言った俺が悪いか。
「……わかったよ。それでいい。」
「いや~、助かるよ。少しでも高く売らないと親方がうるさいんだ。
防具は買わないのか?なんも身に着けてないみたいだが。」
「金がないんだ。余裕ができたらまた来る。」
新人相手に毟り取ろうとするな。
「そうか。約束だぜ?」
4,500ユグ払う。残り1,800ユグ。
何もしなければ1週間も持たない。
10,000ユグ貰ったのに、どこ行ったんだ。
宿から出る前に、おばちゃんからどこに迷宮があるのか聞いておいた。
東側だそうだ。10分も歩けば洞窟みたいなのが見えてくる。
周りにもちらほら義勇兵がいるな。
『解析』
……やっぱり、『スキル持ち』は少ない。いや、いない。
だからこそのパーティーだ。
ゴブリンは倒せるようになったんだ。恐れる必要はない。俺は『スキル持ち』だ。
迷宮に突入する。
今までに勉強したところによると、下層に行くほど強くなるらしい。
何よりの特徴が、『スキル持ち』の割合が多いことだ。
『先天的スキル持ち』が生まれる可能性は、0,2%と言われている。
これは、人も魔物にも共通する話である。
しかし、迷宮産の魔物はそうはいかない。
3倍の0.6%の『先天的スキル持ち』がいるという。これに『後天的スキル持ち』が加わると、もっと多くなるだろう。
上層でも下層でもこの割合が変わらないので、経験の少ない新人が命を落とす。
だいたい2~300匹に1体の割合で、『スキル持ち』に会う計算だ。
もちろん、『スキル無し』も強いので結局は敵戦力の見極めができるかが、生き死にを決める。
「けど、俺にとっては好都合だ。」
『スキル持ち』がいたら、奪ってやる。
1層に入って約10分。まだ魔物に会わない。
買った短剣も中古だが、いい品だ。手に馴染む。
歩いていると奥に犬のように四つん這いになっている魔物を見つける。
『解析』!
名前:コボルト
レベル:8
スキル:なし
コボルトか。街道では見かけなかったから、初めて見る。
前身は体毛に覆われ、防具はなし。手には包丁のようなものを持っている。
……負ける要素はないはずだ。レベルだって勝ってるし、奴はスキルを持っていない。
怖いのはあの包丁だ。
くそ。長剣を買えれば、こんなこと考えなくてよかったのに。
『火炎魔法』を使うか?
でも、この先剣で戦うことができなければ、義勇兵を続けられない。
コボルトがこちらを振り向く。
!!気づかれた!
くそ!やってやる!
「うおおおお!」
「ウォウ!」
奴の包丁を短剣で、弾く!弾く!弾く!
奴が組み付こうとしてきて、無様だが地面を這いながら避ける。
落ち着け!奴はこの前殺ったサウロより弱いはずだ。
冷静になれ。
奴は強いか?いや、強くない。
奴の剣技は脅威か?そんなことはない。
俺はクールだ。周りが見えてくる。奴の動きが見える。
俺が怖がっていたのはあの包丁だ。
純粋な殺意を異形の者にぶつけられて、怯んでいただけだ。
奴の包丁を落す。
手の腱を切りつける。俺には『剣術Lv22』がある。絶対にできる。ただの小手だ。
コボルトがこちらに全速力でかけてくる。
包丁を振り下ろしてきてる。
冷静だ。見切って手首を切りつける。
「ハッ!」
「ギャン」
奴は落とした包丁を逆の手で拾おうとしゃがみこんだ。
それは悪手だ。
奴の顎に『強化』した蹴りを入れてやる。
3mほど飛んで微動だにしない。
気絶したか。
近づいて首と胸に短剣を振り下ろす。
これで死んだはずだ。
「ふー……」
最初にビビりすぎたな。思い通りにいかないと焦る癖がある。
父さんのナイフを取り出して胸を切り裂く。切れ味良いな。短剣以上だ。
魔石は人間でいう心臓の位置にある。
適当に当たりをつけて、魔石を取り出す。
少し凸凹した紫色の石が出てきた。いくらするんだろ?
これで感触は分かった。『スキル持ち』でもない限り、『剣術』の敵じゃない。
次からは『火炎魔法』も使っていこう。
あれから、休憩を入れながらコボルトを30匹倒したところで迷宮を後にした。
外はすでに日が傾こうとしている。
6時間くらい潜っていたかな。
1時間あたり5匹か。
思った以上に少ない。もっと魔物がたくさんいると思った。
効率的にやるなら『索敵』が欲しい。
ないものねだりしても仕方ない。
斡旋所に行こう。
「セラさん。こんにちは。」
会話したことのあるセラさんに換金を依頼する。
「ネクロさん、こんにちは。換金ですね。」
30個の魔石を鑑定台に乗せてもらう。
「コボルトですね。1個200ユグで買い取らせていただきます。」
6,000ユグ!こんなに稼げるのか!?そりゃ、迷宮行くよ!
「1層のコボルトの魔石をとってきたんですね。
1層上がるたびに50ユグ買取価格が上がります。
30個も取れるなら2層に行って、もっと稼いでみてはどうですか?」
「そうなんですか!?めっちゃ稼げるじゃないですか!」
よし!2層に行こう。明日行こう。
「じゃあ、明日行ってきます。期待しててください。」
いいとこみせよ。
「……そうやって調子に乗って、帰ってこない新人が何人いたか……。」
「…………。」
空気が。重い。
「……それじゃあ、失礼します。」
「……気を付けてくださいね。」
宿に帰って、ご飯と風呂をとる。
600ユグでこれは本当に安いな。
部屋に戻って息をつく。
「ふぅー」
これでお金の心配がなくなった。
普通に考えたら明日はだいたい7,500ユグ稼げるはずだ。
1ヶ月で20~30万ユグ程度の収入だ。父さんが60万ユグ稼ぐから多く感じないが、これはすごい。
王国の平均収入が8万ユグだから、約3倍だ。命を懸けてるからどうともいえないが、これは多い。
しかも、下層に行くほどもっと収入は上がるんだ。父さんに追いつくのもそう遠くない。
明日は今日行った露店で皮鎧を買うか。これで基本は大丈夫だ。
今日の反省をするか。
最初はビビりすぎたな。あれからはそうでもないが、慣れていかないと。
あとは、『火炎魔法』だ。基本的に「矢」のイメージで使っているが、今のところこれ以上の工夫は思いつかない。
「矢」が直撃すればあとは放置するだけで死んでいた。もっと使いたいけど、敵の気を引く仲間がいないと無理だ。
……奴隷が欲しい。今日迷宮で何回も義勇兵とすれ違ったが、ソロで潜っている奴はいなかった。
どこかのパーティーに入れてもらおうと思ったが、『スナッチ』のことを考えるとあまりよろしくない。
必要だ。奴隷が。エロいことは考えてない。……考えてない。
奴隷なら『スナッチ』のことは口外禁止と言えば、言えくなるはずだ。
本当に厄介なスキルだな『スナッチ』。生き方を限定されてるよ。
まあ、いいことはある。エロいことじゃないぞ。
『スナッチ』と『譲渡』のコンボだ。
最強のパーティーになるな。
妄想が捗る。
『譲渡』のリンゴはどこかのタイミングで欲しいな。
しかし!結局は金!金が必要だ!
明日も頑張るか。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。
評価してくださると、一段と頑張れます。




