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初登校

俺――神原湊は今日、この魔獣学園に入学する。

俺は愛車である騎獣グレードボアに乗ってきた。


騎獣置き場に行くとイカした改造騎獣がたくさんあった。

「どれもいい音しそうだ!」

「特にこの、しゃこたんバッファローはセンスがいい!」

「お、この毛を紫に染めたウォーウルフは悪くはねぇな!」


騎獣を降りて、俺はゆっくりと校舎を見上げた。

春の風が剣を揺らす。

そして、その向こうに見える校舎は――ひどかった。

所々崩れている壁。

そして、その壁には落書きと血痕。

窓ガラスはあちこち割れ、板で塞がれているところまである。


正門の横には、

『窓を割るな! 壁に血を付けるな! とどめを刺すな!』

という教師のものらしい張り紙。

「……いい学校じゃねえか」

思わず笑う。


魔獣学園。

冒険者を育てる高校はいくつもあるが、その中でもここは有名だった。

もちろん、いい意味じゃない。

他の学校に入れなかった落ちこぼれ。

問題を起こして追い出されたやつ。

喧嘩ばかりしているやつ。

そんなクズばかりが集まってくる、最低ランクの冒険者高校。


「この学校のてっぺんは、俺が取る」

まずは――。

クラスのやつらから締めてやるか。

教室の扉を開ける。

「…………」


予想以上だった。

机の上に足を乗せて寝ているやつ。

朝っぱらから剣を振り回しているやつ。

机を壁にぶつけて叫んでいるやつ。

窓際には、明らかに授業を受ける気のないモヒカン男たちが固まっていた。


全員、目つきが悪い。

「やばそうなのばっかりだな」

まあ、俺も人のことは言えないか。

俺は教壇の前まで歩くと、そのまま蹴り飛ばした。

そしてクラス全員を見渡す。


「おい!」

騒がしかった教室が少し静かになる。

「俺はスライム中学出身、神原湊だ!」

何人かがこっちを見る。

「よろしく!」

完全に静かになった。


数秒後。

「……神原?」

「知らねえな」

「スライム中学ってどこだよ」

「おまえ、どこの暴獣族に入ってんだ?」

男が聞いてきた。

俺は鼻で笑った。

「属す?」

くだらねえ。

「群れるやつは雑魚だけだ」


教室の空気が変わった。

「今日からお前ら、俺に従え」

「…………あ?」

何人かが立ち上がる。

その中でも、一番でかい男が前へ出てきた。

でかい。

横にもでかい。

腕なんか俺の脚くらいありそうだ。


「おめえ……舐めてんな?」

男が俺を睨む。

「この教室今日から誰が仕切ると思ってんだ?」

「知らねえ」

「ゴリラ中学締めてた、この立花たけし様だ!」

「…………」

「知らねえな」

「なんだと?」

「今日から俺の下だ。このゴリラ」


教室がざわついた。

「ゴリラって言ったぞ」

「あいつ終わったな」

「中学もゴリラだから仕方ねぇところもあるけど」

立花の額に青筋が浮かぶ。

「おめえ……剣抜けよ」

「いいぜ」


俺は剣を抜いた。

「軽く斬ってやるよ」

「その言葉、後悔すんなよ!」

立花が教室の後ろへ歩いていく。

そこに立てかけてあったのは、馬鹿みたいにでかい大剣だった。

両手で柄を握り、一気に持ち上げる。

「おらぁ!」

ブオンッ!

大剣が横薙ぎに振られた。

俺を狙ったわけではない。

威嚇だ。

だが、その一振りだけで近くの机が三つまとめて吹っ飛んだ。

ガシャァン!

机と椅子が床を転がる。


「うわっ!」

「また机壊しやがった!」

「机壊すなは書いてなかったから、いいんじゃないか?」


立花は大剣を肩へ担いだ。

「これ見ても、まだやるか?」

俺は吹っ飛んだ机を見る。

それから立花を見た。

「大したことねえよ」

「……てめえ!」


立花が踏み込んだ。

今度は本気だ。

頭上から大剣が振り下ろされる。

俺は剣を振り上げる。

ガァン!

刃と刃がぶつかる。

教室中に金属音が響いた。


「なっ……!」

立花の目が見開かれる。

俺は片手で受け止めていた。

周囲から声が上がる。

「たけしさんの剣、受け止めたぞ!」

「マジかよ!」

「すげえぞ、あいつ!」

俺は立花を見上げた。

「だから言っただろ」

「大したことねえって」

「なんだとぉ!」


立花は力任せに大剣を横へ振り払った。

俺はジャンプした。

大剣が足元を通り過ぎる。

剣を振る。

着地する。

一瞬遅れて。

どさり。

床に何かが落ちた。

立花の右腕だった。


「…………え?」

さっきまで大剣を握っていた腕が、床を転がる。

切断された肩口から血が噴き出した。

「う、うわああああああっ!」

立花が膝をつく。

教室が一気に騒然となった。

「たけしさん!」

俺は剣についた血を振り払う。


「大したことねえな」

「て、てめえ……!」

立花が歯を食いしばって俺を睨む。

俺はその前にしゃがんだ。

「覚えとけ」

立花の肩を軽く叩く。

「お前は今日から俺の下だからな」

「ぐぐぐ」

俺は教室を見回した。

全員が黙って俺を見ている。


「誰か、こいつ教会室に連れてってやれ」

「…………」

誰も動かない。

「おいおい、早く連れてかないと死ぬぞ」

「お、おう!」


ようやく数人が駆け寄ってきた。

立花を担ぎ上げ、そのまま教室を飛び出していく。

俺は空いた席へ向かい、椅子に座った。

教室はまだ静まり返っている。

さっきまで好き勝手騒いでいた連中が、一人残らずこちらを見ていた。


俺は机に頬杖をつく。

「で?」

誰も答えない。

「次、誰がやる?」

一人の男が声を上げた。

「俺はやる気はねえが、お前の下につく気もない」

「なんだとてめぇ、そんなこと許されると思ってるのか?」


「あいつ今度こそ死んだな」

「ああ、死神中のよしきに絡んでる」


湊はよしきの机をけり飛ばす。

「おめーなめてんのか?」

胸倉をつかもうとしたら右手がない

「なんじゃこりゃー」

腕があった場所から血が噴き出していた。


よしきが言った。

「お前も教会室行きなよ、死んじゃうよ」


入学初日。

どうやらこの学校。

思っていたより楽しめそうだ。

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