最終章 新たな日常
それから一年後。
王国では、最も奇妙で最も効果的な「コンビ」が活躍していた。
悪役令嬢の身体を持つ聖女エレナは、貴族社会の影響力を利用して、大規模な慈善事業を展開していた。孤児院、病院、学校…彼女の名前がついた施設は王国中に広がった。
聖女の身体を持つ元悪役令嬢クラリッサは、その純粋なイメージと、実は鋭い交渉術を駆使して、社会改革を推進していた。労働者の権利保護法の成立には、彼女の尽力が大きかった。
そして二人は、毎週水曜日に「レッスン交換」を続けていた。
「エレナ、また孤児院に全財産寄付しようとしてるでしょ!ダメよ、慈善も計画性が大事!少しは自分のためにも使いなさい!」
「でもクラリッサ、あなたこそ、また過激な改革案を出して貴族たちを敵に回しているのでは?もう少し穏やかなアプローチも必要です」
「ふん、敵が増えたって平気よ。だって私には、最強の味方がいるんだから」
二人は笑い合い、また新しい計画を練り始めた。
王子のアルベールは、執務室の窓から二人の姿を見つめ、微笑んだ。
「あの日、霊の入れ間違えが起こったときは、大混乱になるかと思ったが…むしろ、王国にとって最高の出来事だったな」
側近がうなずいた。
「はい、殿下。あの二人がいなければ、王国は戦争に巻き込まれ、多くの人が苦しんでいたでしょう」
「そうだな…ところで、そろそろあの『聖女』に、正式なプロポーズを考えている」
「エレナ様にですか?それともクラリッサ様に?」
アルベールは困ったように笑った。
「それが…まだ決めかねている。どちらも素晴らしい女性だ。まあ、時間をかけて考えよう」
そして王国は、二人の「入れ替わり」から始まった大混乱を経て、以前よりも平和で豊かな国へと成長していったのだった。




