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第二話 買い出しにて

久しぶりですね

 翌朝。二人は宿で朝食を取り、ノヴァリアの中央市場に来ていた。


 中央の広場には、今日が祭りかのように果物の屋台や軽食の屋台、雑貨の屋台が数多く並んでいた。少し中心を離れると専門店やランチを取れる場所が広がっている。


「すごく大きいのね。こんなに大きいのは私もそんなに見たことないわ。」


 この世界で2番目に大きな市場は、その称号に相応しい賑わいだった。

 旅支度を買いに来た二人は、旅の者たちがよく使う店へと入った。


「なんだか独特な匂いがするのね」


「ああ。革と香草の匂いだ。旅の者たちに好まれるのは、長持ちする香草を使った乾燥食料と、頑丈で使うほどが味が出る革製品なのさ。」


「なるほど。詳しいのね。」


「まあな。少し前まで俺も旅ばかりの生活だったからな。旅支度なら任せろ。とりあえず食料などは買っておく。欲しいものがあったら持ってこい。」


「わかったわ。」


 二人はなかなかに広く、三階建ての店内を回る。


「ここは三階建てで、央都で一番大きい。一階には旅の消耗品や必需品、初心者向けのキットなんかが売っている。ほかにも掘り出し物なんかがあるから、ここは見るべきだな。まずは見てみるか?」

 アルヘナはきょろきょろしながら、


「うーん、とりあえず全部説明してもらえるかしら。」


「わかった。じゃあ、次に二階。ここは主に防具や剣なんかが売っているな。」


「あの革でできている鎧は?」


「初心者向けの軽い加護付き革装備だな。金貨10枚、十万Gだな。」


「あっちの白っぽい金属の鎧は?」


「エンチャンテッドミスリルの一式だ。危険な旅をする人や貴族の親衛隊なんかが着るな。」


「それはおいくらぐらいするのかしら?」


「大体1200万Gだな。大金貨12枚だ。大体、泊まっている宿が銀貨20枚、だから、6000日は泊まれるな。飯もついて。欲しいか?」



「16年分…え、遠慮するわ」


「そうか。軽くて、防御力も高いんだがな。」


「え、ええ。探しておくわ。」


「……っと。話がそれてしまったな。次は3階だ。ここには魔道具や魔導書、杖やスクロールがある。ここで杖と魔法教書を買うと良い。」


「それはどんなものなの?」


「魔法教書は魔法の仕組みを説明するもの、魔法の詠唱が書いてあるものと大体二種類に分かれている。」


「魔法の仕組みを理解すれば、どんな感覚で魔力を集め、放出するかがわかる。最終的には詠唱がいらなくなるな。」


「詠唱って昨日やったやつよね。『湧き出よ』だったかしら。」


「そうだ。だが、詠唱だけでは魔法は出ない。魔力を手に集中させ、詠唱で放出すると水が出たり、火が出たりする。」


「なんで詠唱がいらなくなるのかしら?」


「そこまでは知らんな。だが、魔法を発動する感覚を、自分でやるんだと認識している。」


「逆にそれを簡単にしたのが詠唱なのね。」


「ああ。俺はある程度魔法を使えるが、君ほどの才能はない。俺は君ほど使えるようになるまで、10年ほどかかった。俺もどちらかというと魔法は得意なほうだ。それをはるかに凌駕する才能が君にはある。」


「本当?なんだかうれしいわね」


「どんどん練習すれば、どんどんうまくなると思うぞ。」


「それなら…杖にはどんな意味があるの?」


「発動時間の短縮とマナの節約になるな。」


「それは大切ね。買ってもらおうかしら。」


「それがいい。」

 

ルナリスは店員に話しかけた。


「店員、ちょっと来てもらえないか?魔法教本が欲しい。魔法理論の本と、詠唱が書いてある本だ。どちらも第一節から、第十節まで書いてあるものがいい。」


 店員は少し考えたあと、「魔法論」と「万唱集」という本を渡してきた。


「こちらそれぞれ20万Gとなります。重さが軽い魔道具版もありますが。」


「それでいい。アルヘナ、自分に合った杖を探すといい。心に聞くんだ。」


「わかったわ。」


 ルナリスは店員に向き直り、


「汚れを防ぐ魔法もかけておいてくれ。」


「承知いたしました。この本を買うとは。学校の先生なんですか?」


「いや、違う。ただのしがない冒険者だ。」


「そうでしたか。こんな本を買うのは教職についている人ばかりなもんでね。」


「構わん。ありがとう。よし。次は旅支度だな。」




 ***




 アルヘナはルナリスのもとを離れ、杖売り場に来ていた。


「いろいろな杖があるわね。」


 アルヘナは小さい杖を買うつもりだった。


「この初心者向けの杖にしようかしら。短くて扱いやすそうね。」


 取り合えず目星をつけた後は、一通り回る。


「こっちはセットが売っているみたいね。」


初心者向けのローブと杖のセットから、魔法学園の指定制服までいろいろなセットがある。

 少し外れたところに、目を引く杖とローブのセットがあった。


「お嬢ちゃん、いいのに目を付けたね。綺麗だろう?」


「本当にきれいね。これを買ってもらおうかしら。何て言うの?」


「それはただ一つしかないもので『夜空の杖』と『夜のローブ』と言う。なんの柄かわからないが綺麗だろう?」


「本当にきれいね。これを買ってもらうことにするわ。」


「ゆっくり見ていきな。」


 その柄はまるで星のようだった。この星のない世界で、初めて星を見つけた。

 この世界には星が無い。夜空を切り取ったようなこのローブと、いつか図鑑で見た【冥王星】のような色の魔石。

 懐かしい気持ちになりながら眺めていると、会計を済ませたルナリスがこちらへ来た。


「いいものは見つかったか?」


「ええ。これが欲しいわ。」


「『夜空の杖』と『夜のローブ』か。良い名前だな。よし。これをくれ。いくらだ?」


「ありがとうございます。大金貨40枚になります。」


「40枚か……なるほど、逸品なわけだ」


 値札を見るのを忘れていた。こんなに高いとは予想外だ。彼も少し驚いたような顔をしたあと、


「よし。これでいいかな。」


 ルナリスは笑顔で白金貨を1枚出し、店員に手渡した。


「ありがとうございます。白金貨なんて久しぶりに見ましたよ。近頃はギルドの口座払いがはやりですからね。」


「そうなのか。それはよさそうだな。」


「お釣りの大金貨10枚と、領収書です。」


 すごく高価だが、ただ一つの星の手がかりともなりそうなものだ。彼に今更高いからほかのにするとは言えない。


「ありがとう。よし、アルヘナ。旅支度は買っておいた。行くぞ。」


「わかったわ。」


 頼りになる背中を追いかけ、私たちは荘厳な雰囲気の店を後にし、市場の中心へと戻った。

誤字脱字は何度も確認しましたが、見つかったら教えてくれると嬉しいです。

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