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何度洛陽を迎えても  作者: 赤羽テイト
第1章 邂逅と契約
10/31

第10話 ★

# 第10話


 彼女も夢で俺に似た人物に会っていたというのは非常に気になったが、日が沈みかけてきたのでギルドへの報告に行くことを優先した。


 その後特に何もなく俺達はギルドまでたどり着き、扉を開けてクエストカウンターへと向かう。


 朝クエストを受理してくれたアンジェリカがまた対応してくれた。


「あっ、テイトさん! 無事でよかったです。想定より戻るのが遅くて心配しましたよ! もう少ししたら携帯に電話をかけていました……」


 そういって彼女はカウンターからこちらへ身を乗り出し俺の顔を覗き込んできた。


 クール系の美人顔が目の前に迫ってドキッとする。それに森林浴をしている時のようないいにおいがしてドキドキする……。


「アンジェリカさん、心配かけたみたいですみません。不運にも魔獣と遭遇してしまって……」


「えっ、魔獣ですか!?」


――ザワッ


 思わずといったように叫んだアンジェリカの声が聞こえた、ギルドに居る冒険者達が騒ぎ始める。


「おい、聞こえたか」


「あぁ……魔獣ってまじかよ、ここ最近で一体何件目だ?」


「確かここ半年で言うと四件目だな……。一年に一度現れるかどうかの魔獣がこうも出てくるとはな……」


「あぁ……流石にここまで多いと、噂通り魔王が既に誕生しているのかもしれん」


「確かに最近魔族の中でも過激派がきな臭い動きしているらしいからな、ありそうだ」


「それに流石に魔王とは無関係なはずだが、最近ダンジョンダイブ中に神隠しがよく起きるらしくて、因果関係があるのかと思っちまうぜ」


「あぁ、俺も最近よく聞くがアレは――」


 冒険者の声に耳を傾けていると、硬直していたアンジェリカが慌てた様子で再度口を開いた。


「ならすぐにギルドマスターに連絡して討伐依頼を出さないといけないじゃないですか! ウィンドウルフのクエストで遭遇したということは、魔獣のランクは恐らく最低B以上ですよね? なら討伐依頼するランクのパーティーも最低B以上じゃないといけないし、パーティーの確保も――」


「……テイトに近いから離れて。それにアンジェリカ……さん、少し落ち着いて。魔獣ならもうテイトが討伐してるから」


 そういってリビアが後ろから肩をつかんで後ろに引っ張りつつ会話に参加する。


「えっ、討伐済み!?」


 アンジェリカが再度叫ぶことでまたギルド内がざわついた。


「……っとすみません。ちょっと驚きの連続でビックリしてしまいました。……ところで貴方は初めましてですね」


「ん……私はリビア」


「リビアさん、よろしくお願いします。テイトさんが魔獣を討伐したというのは本当ですか?」


「本当。テイト、魔獣石を出して」


「わかった。アンジェリカさん、これが俺が倒したウィンドウルフの魔獣から取れた魔獣石です」


 俺は背負っていた袋から魔獣石を取り出しクエストカウンターの上に置いた。


 それをアンジェリカは慎重に手に取って本物か確かめる。


「これは……石から魔力が発生していますし本物ですね……。ということは本当にテイトさんが魔獣を……」


「ふふん、テイトならあのくらいの魔獣は余裕」


 なぜリビアがどや顔をする。あと俺を不用意に持ち上げるのはやめてほしい。


「いえ、余裕ではなかったんですがたまたま色々と嚙み合ったみたいで……。ひとまず討伐が終わり脅威は無くなったので、報告だけして今日は帰ろうかと思ってます」


「そうですね……討伐されてない場合は最適な討伐隊編成の為、すぐに遭遇場所や魔獣の能力の特徴など教えて頂く必要がありますけれどね。討伐されている事を魔獣石が証明してくれるので、今日はゆっくり休んでいただき明日に詳細な報告をお願いします」


「わかりました。明日はお昼過ぎくらいに来ると思うのでよろしくお願いします」


「はい、こちらこそよろしくお願いします。……その、改めてご無事でよかったです。見たところ傷も無さそうですし、今度どうやって討伐したのかご飯食べながら話してくれませんか」


 表情を見るによっぽど心配してくれたんだろうな。心配かけた代わりということでご飯くらいいか。


 そう思い返事をしようとしたところリビアからのカットインが入る。


「だめ、テイトとご飯食べるのは私。お腹すいたからもう行こう」


 そう言って彼女はすごい力で俺をギルド入り口の方へ引っ張りだした。

 え、何この力、全く抵抗できずにカウンターから離されるんだけど。


「ちょっ、どうしたんだリビア!すみません、アンジェリカさん、ひとまずまた明日!」


 そうして引きずられるようにギルドの扉をくぐるとき、すれ違った冒険者二人組のつぶやきが聞こえた気がした。


「兄さん、あの人魔獣を一人で倒せるくらい強いみたいだし……」


「あぁ……俺も同じことを考えていた」


「それに隣の獣人の女の子、すごく可愛かった……」


「お前可愛い女の子好きだもんな……」






 ギルドを出た後、俺達は俺がいつも行く料理屋へと入る。そして店員さんに魔獣の肉を半分渡して何か料理を作ってくれるようお願いした。


 今日はいつもよりもお店に客が入っている事から、料理が出来上がるまでしばらく掛かりそうなので、今のうちに聞きたかったあれこれを質問する。


「それじゃあそうだな……リビアは何故あの洞窟にいたの?」


「ん……一ヶ月前にヒノモトに来たって話したと思うんだけど、この国に来るのが目的で特に行先は決めてなかった。けどなんとなくこっちに向かうべきだという直感があって……そして歩き疲れた時に洞窟があったから奥の方で休んでた」


「そっか……俺もクエストを選ぶ時に何かが起きそうだと思った物があって、それを受けた結果、魔獣と遭遇してそれが原因でリビアと出会った。同じように夢でお互いに似た人物に会っていたことと、直感は関係があるのかもな……」


「ん……もしかしたらそうかも」


「リビアにポーションを使っている時、俺に魔獣に勝てると言ったけれど何か根拠があったの?」


「夢の中のテイトがいつも強くて私のヒーローだったから。だから洞窟でテイトを見た時にこの人なら勝てるって思えた」


「――ヒーロー……か。それなら庇う必要はないと思うけど、どうして庇ってくれたんだ?」


「ん……なんて言うか……あの時はとっさで……うまく説明できない、ごめん」


「いや俺こそごめん、庇ってくれたのに理由なんて聞いて。ということは君が倒れた時に、よくわからない力が溢れてきたのを感じたんだけど、それについては何も知らないよね? 夢の中の俺がなんか言ってたりしない?」


「力の名前かは分からないけれど……夢の中のあなたは『魂の契約(エンゲージリング)』って単語を何回か話していた」


「エンゲージリング……」


 妙に馴染む名前だったので、ひとまず俺も同じようにそう呼称することにする。


 そしてなぜあのタイミングで能力が発現したのか……。夢の中と同じようにリビアを目の前で失いそうになったからだろうか。

 

「今度は私から質問させてほしい。私の夢はいつもテイトが私を助けてくれる夢だった。テイトが見ていた夢の内容はどんな感じだったの?」


「――俺の夢は逆でいつも君や仲間を助けることができず目の前で失う内容だった。庇われはしたけどこうして君が無事で本当によかった」


「テイトが無事でよかったのは私も同じ。私は獣人の中でも珍しい種族だから……魔法には耐性がある」


「魔法に耐性のある種族なんて聞いた事がないな。イスラン獣王国では有名な種族なの?」


「ん……テイトに迷惑かけたくないからまだ秘密。でも猫系ってことだけは言っとくね」


「……わかった。それとリビアの夢についてもう一個聞きたいんだけど、君の夢の中に俺の事をマスターと呼ぶ人は居た?」


「……居なかったと思う。私の夢はシチュエーションは毎回違うけど、テイトしか出てこなかったはずだから……」


「なるほど、ありがとう。俺の夢は君と『アイツ』と呼ばれる敵以外の声が聞こえないんだ。多分君以外に夢に出てくる仲間の内の一人なんだろうけど……」


「でもどうしてそんなこと聞くの?」


「戦闘中に声が聞こえたんだ。お陰で俺に魔法が切れる事が分かった」


「そういえば切ってたね。エンゲージリングの効果?」


「……わからない。この力については明日以降検証していこうと思う」


「結局話してみてもあまりハッキリしたことは分からなかったね」


「まぁお互い夢の話だしそれはしょうがないさ。そこまで期待してた訳でもないしね」


 そこでリビアのお腹からぐぅと可愛らしい音が聞こえてきた。


「ん……お腹すいた……」


「はは、流石にそろそろ来るともうよ。っと、話をしたらちょうど来たみたいだ」


 タイミングを計ったかのように店員さんが料理を持ってくる。どうやら魔獣の肉を使ってステーキとハンバーガーを作ってくれたようだ。


 他にも白米とキャベツ・トマト・ブロッコリー・トウモロコシなどを使用した色合い鮮やかなサラダ、魔獣の肉の欠片が入ったコンソメスープを作ってくれた。


 運ばれて来た料理を凝視するリビア。よほどお腹が空いていたのか口から涎が垂れていた。


「早速食べようか。いただきます」


「ん、いただきます。これはそのまま包み紙ごと持って食べればいいの?」


「そうそう」


 リビアはそう聞くやハンバーガーに頬いっぱいに噛り付く。というかハンバーガーを食べた事が無いのか?

 そう思ったが俺もお腹が減っていた為、いつものようにまずサラダから食べ始めた。


「あふ……ほへおいひぃね」


「あはは、それはよかった」


 どうやら魔獣の肉を使っている事なんて忘れるくらいお腹が減っていたようだ。

 リビアはハンバーガーを半分ほど食べ終えた後、口の周りにソースが付いた顔で質問してきた。


「そう言えば洞窟から街に来るまでに妹が二人いるって言っていたけれど、家族とご飯食べなくてよかったの?」


「あぁ、いつもクエストを受けた日はいつ帰れるか分からないし、街で食べてから帰る事になってるから気にしないで。それにさっき携帯で連絡しておいたから」


「そう……ならよかった。家族と仲が悪いのかなと不安に思って……」


そういう彼女の表情は俺の家族仲が良かったことに関して表情を安堵させた後、すぐどこか寂寥感を感じさせる表情をした。


「答え難かったら答えなくていいんだけど……リビアは家族とあまり仲が良くなかった?」


 彼女は街に来るまでの間あまり自分の事を話したがらなかったので言葉を選びつつ質問をする。


「……私は仲良くしたかったけれど、お母様とお父様以外の家族にはその……疎まれていた」


「……そっか」


 俺は少し考えてからリビアに提案をする。


「もし良かったらなんだけどさ……俺の家部屋空いているから、リビアも一緒に住まない?」


「え……いいの?」


「もちろん、命の恩人とも言えるしね。この時間だと街の宿も基本埋まっているからね。今日だけでも是非泊まって欲しい」


「――分かった。明日以降はまだ分からないけど、今日はよろしくお願いします」


「おっけー。まずは料理覚めちゃうしご飯食べきっちゃおうか」


「ん……食べる」


「ちなみにだけど、リビアの口の右側ハンバーガーのソース付いているよ」


 そういうとリビアが顔を赤くして俺をキッと睨んできた。


「……もしかしてずっとソース付けたまま話してた?」


「……」


「……いぢわる」


 彼女は頬を膨らませて口周りをナプキンで拭くと、その後はまるでお嬢様のように上品に料理を食べていくのだった。

挿絵(By みてみん)

※ノベルAIにて作成した挿絵です。

※AIイラストの為毎回キャラの雰囲気は変わる可能性が有ります。


明日も22時頃に投稿予定です!

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