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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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第19話 状況

 現場に到着してからは、慌ただしく動く状態が続く。

 フクオカたちは、主に被害のあった都市の観測任務に当たっていた。

 それは、大気圏の外から被害のあった都市の被害を目視で確認する作業だ。

 機械に頼る場合もあるが、結局は人力に頼った方が何かと都合がいいのである。


「街のあちこちで火災が発生しています。ビル群が倒壊し、がれきの山と化しています」

「市民から何か救援要請が出ていたりしないか?」

「火災の影響で、地上の様子が良く見えません」

「うーむ。こうなったら、地上にいる消防や警察当局からの連絡を待つしかないか……」


 そういって、上官は記録をさっと取る。


「この街に関する記録は以上だな。さぁ、次の現場に向かうぞ」


 この観測をしていて、フクオカは若干心が傷ついた気がした。

 自分は遥か雲の上から地上の様子を眺めているだけで、実際には何も出来ていないことが気がかりで仕方ないのだ。


「何も出来ない自分がもどかしいか?」


 同じく観測を行っていた上官に指摘される。


「え?」

「いや、なんとなくだが、そんな感じがしていた。どうだ?」

「えぇ……はい。自分は安全な場所から眺めているだけでいいのかと感じてしまいまして……」

「俺もいくらかこういう仕事をしてきているから、なんとなくその気持ちは分からんでもない。しかし、人一人があがこうとしてもなんともならない。現場を見たら、そんな気持ちになってしまうんだ」

「はぁ……」

「だが、人が数人、10人、100人と増えていくと、出来ることもある。そういって巨大化した組織を統合しているのが軍ってやつだ。そして、彼らに確かな復興をやってもらうために、俺たちがいるんだ」


 フクオカは黙って、上官の話を聞いた。


「ま、俺が言いたいのは、ちゃんとやる奴はいるから安心しろってことだ」


 そういって、上官はその場を去っていく。

 不安な心があるのには変わりないが、何かを見出したような感覚を覚えた。

 惑星災害が発生したと思われる時間から、24時間が経過する。

 共和国政府は災害対策本部をすでに設置し、情報の収集に努めていた。

 その情報は統合され、前線にいる宇宙軍や陸軍に送られる。


「陸軍の輸送に第119輸送艦隊が使われるらしいね」


 観測作業の途中に、簡単な食事を取っていたフクオカと同僚が話をしていた。


「それがどうかしたの?」

「いや、子供の頃に聞かされたんだが、遠い親戚のおじさんがいるって話さ。正直会ったかどうかも分からないような事だよ」

「遠い親戚かぁ……。アタシはそんな人たちなんていなかったなぁ」

「そういや、二人はどうして軍に入ったんだ?」

「私は、お父さんが軍に入ってたんだけど、銀河戦争で殉職したの。私はその無念を晴らすために、軍に入ったわ」

「俺は正直、軍の待遇に乗せられて来た口さ。なんたって福利厚生がしっかりしている。退役後の保障もしっかりしているんだ。こんな働き口、他にないだろう?」

「アンタらしいわね」

「そんなフクオカはどうなんだ?」

「アタシ?アタシは……」

(あれ、アタシってなんで軍に入ったんだっけ?)


 義務教育を終えようとした時に、今後の進路を考える時間があった。

 その時、就職も考えた。しかし結果選んだのは、軍学校への進学である。

 ある意味将来を約束されたような選択であったが、何故軍に入ったのか。

 特別家庭が貧しいわけではない。かといって裕福でもない。

 考えれば考える程、先が見えないような感覚に陥る。


「……オカ?フクオカ?」

「……あ、ごめん」

「こっちもごめん。複雑な事情を持っている人もいるよね……」

「いや、そんなのじゃないけど……」


 そして休憩時間は終了した。

 時間は経過し、災害が発生したと思われる時間から72時間が経った。

 すでに災害派遣として、陸軍3個師団が投入されている。

 それにより、要救助者は次々と救出されていた。

 都市間が寸断されていたり、ライフラインが絶たれていたりする場所もあった。

 そんな場所には、陸軍の救いの手が差し伸べられる。

 ずいぶん前から導入されているヒト型トレース式機動重機、いわゆる操縦者搭乗型ロボットも現場に投入されていた。大きさも様々で、2mクラスから20mクラスまでいろいろある。

 その重機ロボットを投入し、がれきを撤去し、人々の復興の手伝いをしていた。

 その様子を宇宙空間から覗いているフクオカ。

 自分の仕事が、こうして巡り巡って誰かのためになっている事を実感していた。


「どうだ、満足したか?」


 フクオカの後ろには、彼女にアドバイスをした上官がいた。


「……はい。なんとなく」

「そうか。分かったのなら、こちらとしてはありがたい限りだ。これからも頑張れよ」


 そういって去っていった。


「……ところで今の人誰なんだろう?」


 そんな疑問の答えは、遠く彼方に飛んで行ってしまう。

 災害が発生したと思われる時間から120時間が経過した。

 すでに即応部隊が到着し、初期救出が完了する。

 そしてその応援として、陸軍部隊が配属され、合計10個師団が被災地に投入された。

 クィリアム星系や、その他星系でも被災地の復興支援が行われる。

 こうして、支援の手が回っていくのだった。

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