おみやげ
隣の家はリビングがかなり広いので、
夕食は学生14人を含めてみんな一緒に食べることになった。
総勢23人と1匹。入寮記念パーティだな。
寮生活は明日から。
今日は夕食後に解散予定だ。
今日の夕食はオレとマーチが料理を担当する。
「学生に料理の下ごしらえできるやつとかおらんのか?」
「ハイ!」
「はい!下ごしらえなら!」
女子が2人、手を上げてくれた。嬉しい。
じゃあ、オレたちの家のキッチンに移動な。
はい。ピーラーで芋の皮をむいて、
千切りスライサーで千切りにしてくれ。
大量にあるからな。
頑張ってくれ
「なにこれ、すごい便利。皮がスルスル向ける。」
「うわっ。千切りが簡単。なにこれ。ヤバいんだけど。」
そうだろう、そうだろう。
ドワーフ謹製だからな。
「これ、どこで買えるんですか?」
ドワーフの里だぞ。
・・・
んじゃ、蒸し器が3台あるから。
それに芋の千切りを入れて。
メシの素1号の香味油をかけて。
これはペペロンチーノ味。
「ぺぺろーち?」
はい。スイッチON。これで放置。
次は、っと。
次世代蒸し器2台で玄米を蒸そう。
洗って吸水させた玄米を入れて。
はい。スイッチON。これで放置。
この人数だとチャーハンにするのはキツいな。
「ちゃはーん?」
インスタントのスープをかけて、
スープごはん仕立てにしてやろう。
はい。寸胴にインスタントスープの粉をドバッと。
「いんすた?」
んで水を入れて。あとは沸騰するまで放置。
おかずに、オレとマーチでウサギ肉を炒めるか。
「仕上げは片栗粉でとろみをつけようや。きっとビビるで。」
いいね。
「かたくり?」
スープにも片栗粉でとろみをつけたらいいかもな。
「やるやん。それでいこうや。」
とりあえず、ウサギ肉を2人して炒めるか。
「ええで。わいが途中でブロッコリー炒めに変わるで。」
ウサギ肉炒めとブロッコリー炒めか。
女子2人がひそひそしてる。
「謎の呪文が多いわね。」
「ヤサイニンニクアブラカラメみたい。」
ジロリアンかよ!
もといジロリエンヌかよ!
この世界にも二郎があるのかよ!
「マーチ先生の指示に従いましょ。」
「いくら無知だからってロットを乱しちゃダメよね。」
「ロット乱しは…。」
「ギルティ。」
確定した。
この世界に二郎がある。
この世界、怖っ!
「あのさ。料理の下ごしらえってもっと大変だよね?」
「そうそう。もしかして私たちいなくても良かったんじゃないの?」
そんなことないぞ。
すげえ助かってる。
はい。んじゃ、蒸し器3台と次世代蒸し器2台を
隣の家のリビングに持っていって。
「え?火傷しちゃいます。」
「無理です。」
大丈夫だよ。ホレ。
「なにこれ熱くない。」
「ほんのり温かいぐらいで全然普通。」
だろ?ただし蒸気口には気をつけてくれよ。
「あ。はい。湯気が出てるので、さすがに。」
あと食器を持っていってくれ。
どんぶりとかスプーンとか。
23人分か、数が足りるかな?
「エルザが学生全員分用意しとったから向こうにあるで。」
マーチがブロッコリーを炒めながら教えてくれた。
なんだ。そうなのか。
じゃあ、オレたちザ・ストームのパーティの分の
食器を運んでくれ。
とか言ってる間に、スープが沸騰した。
水溶き片栗粉でとろみをつけた。はいスープ完成。
ウサギ肉の炒め、ブロッコリーの炒め、次々と完成。
なるほど。マーチの言っていた
タマネギにシャキッとした歯ざわりを残す裏技ってのは
肉と野菜を別で炒めて合わせる技か。
王道じゃん。
(知ってるのと実践するのは違う!)
アインから突っ込まれた。スンマセン。
別々に炒めておいたウサギ肉とブロッコリーを合わせてから、
塩を加えた水溶き片栗粉でとろみをつける。
うまそう!
「間違いないやろ。よーし。運ぶで。」
・・・
学生たちを甘く見ていた。
学生たちの食欲は底なしだった。
若いってすごいな。
千切りの芋は6kgを用意したんだぞ?
6kgってのは6000グラムのことで、
ざっくり20人で割ったら300グラムだから。
300グラムはごはん茶碗の大盛りだから。
玄米を2升蒸したんだぞ?
2升ってのは20合のことで、
ざっくり20人で割ったら1人あたり1合だから。
玄米1合を蒸すと300グラム弱。
300グラムはごはん茶碗の大盛りだから。
芋と米を合計して600グラム。
600グラムの炭水化物だぞ?
とろみをつけたスープは寸胴1つあって
8リットルくらいあったぞ?
ざっくり20人で割ったら400mlだから。
ラーメンどんぶりの半分くらいあるぞ。
さらにおかずとして
ウサギ肉とブロッコリーの炒めもあるから。
どんだけ食うんだ?
「うまい!うますぎる!」
「しあわせー!」
「断言する!俺は無限に食える!」
断言するな。
無限に食うな。
ルカ。学生に張り合おうとするな。
シロ。大食い大会じゃないぞ。
あーもう。
とりあえず手っ取り早いのは芋の千切りなんだ。
あとインスタントスープ。
インスタントスープはさっきのやつが無いな。
コーンスープにするか。
味に変化があるのは、やばいかもしれないが…。
・・・
予感的中。
味に変化があったのは失敗だった。
コーンスープにおかわり続出。寸胴がすっからかん。
さらに芋の千切りにかける香味油のメシの素1号
ペペロンチーノ味が切れたせいで
別バージョンの香味油、オニオン味、チーズ味を
出す羽目になり、
芋の千切り蒸しに満足したはずの連中が復活した。
なんだこれ?
無限に食うのか?
オレはもうスープを追加しないからな。
芋も千切りしないし。
ルカ!恨めしそうにオレを見ない!
シロ!オレにまとわりつかない!
学生さん、もう帰ってくれよう。
・・・
「気持ちいいくらい、みんなよく食ったな。」
ゲイルが爽やかに笑った。
明日からどうするんだ?芋も玄米も残り少ないぞ。
「大丈夫だ。エルフの里で食料をたくさん買ってきた。」
あ。おみやげか!
「やるやん。おみやげガッポリやで。期待どおりや!」
マーチの目が輝いている。
「まずは…。」
ゲイルがためる。ためてためて。
「芋100kg。」
おう。アイテムボックスから5箱出てきた。
「がたったの20ゴールドだったので3セット。」
芋300kgが60ゴールドかよ!安いな!
「わいが欲しているのは芋やない。芋はいらん。」
「そして玄米が…。」
ルカの目が輝いている。玄米がお気に入りらしい。
「10kgの袋を100袋。1袋10ゴールド。1トンで1000ゴールドだ。」
うん。まあ、これは想定内だった。安いけどな。
「ところがおまけがついてきて…。」
なぬ?
「一昨年の古米を1トン、タダで貰った。」
すげえな。ゲイル。
定義として一昨年の玄米なら、
オレは古米とは思わないけどな。
いいぞいいぞ。
「違うんや。キラキラしたおみやげが欲しいんや。」
「わかった。」
ゲイルが自信ありげだ。
「白く光り輝く…。」
マーチの目が輝きを取り戻した。
「塩だ。」
ずこーっ。
マーチだけでなくオレもずっこけた。
「この塩の品質は最高ですよ。」
ミラ。そういう意味でずっこけたんじゃないぞ。
「あかん。ゲイルはわいの期待を裏切ったんや。」
「そうかな?食べ物以外のおみやげもあるぞ。」
おお。なんだ?
「まずは色とりどりの…。」
来たか。キラキラがきたか?
マーチが復活した。目がキラキラしている。
「ワンド。」
ずこーっ。
「しかも廃棄品。」
ああ。アレね。
ウチにはありすぎるだけあるだろ。
「200本買ってきた。全部で200ゴールド。」
うーん。1本1ゴールドでもなあ。
使い切れないだろ。
もうマーチは力尽きてるぞ。
「凄いわゲイル。あなた最高よ!」
エルザが興奮している。マーチが怪訝な顔でエルザを見た。
「なんでやねん。」
「学生たちには卒業までダンジョンで鍛錬してもらうことに
なったって言ったの、もう忘れたの?」
「覚えてるで。」
「学生たちに、このワンドを使わせられるじゃない。」
「使うのは学生であって、わいは無関係や。」
「マーチ。」
「なんや。」
「引率はあなたよ。」
「はああああぁ?」




