スイッチ
今日のオレたちは自由行動日というかバラバラ。
学生たちはダンジョンに潜ってる。
引率はエルザ、マーチ、ステラ、シロ。
4人、じゃなくて3人と1匹は戦わずに基本的に見てるだけらしい。
他のメンバーは開発とか買い出しとか
学生寮の設備改善とかいろいろだ。
・・・
昨晩はみんなの前で偉そうに、バーレルドールを説明したけどさ。
遠隔で射撃をON/OFFする機構は未完成なんだよ。
元の世界のスイッチでオレが思い出せるのは4つ。
1.機械的なスイッチ。
2.金属の温度変化による曲がりを利用したサーモスイッチ。
3.磁石を使ってON/OFFを逆転するリードスイッチ。
4.電子的なスイッチ。
他にもあるかもだけど、思い出せない。
今回は遠隔だから機械的スイッチは無理。
サーモスイッチはサーモスタットと言えばわかるかもしれない。
一定温度を保つ時によく使うスイッチだ。
2種類の金属板を重ねて作る。
金属の種類によって高温になった時の曲がり具合が違うから
機械的なスイッチと同じ感じで、接続したり離したりできる。
これはいけるかもしれないけど保留。
磁石を使ってON/OFF逆転のリードスイッチ。
これは、なんかいけそうな気がするんだよ。
電子的なスイッチはリレーとかトランジスタだから無理。
・・・
リードスイッチを考えてみよう。
普通のスイッチは、繋がるとON、離れるとOFFだよな。
リードスイッチは逆で、繋がるとOFF、離れるとONなんだ。
離れるとONというのはいろいろ工夫できる。
10cm離れてもON、1m離れてもON、10m離れてもONだから、
かなり高い確率でONになる。
いっぽうでOFFにするには、
かなり近い距離まで近づく必要がある。
だいたい5mm未満まで近づけるのが普通だ。
OFFになるのは設計意図どおりの状態のみ。
押し入れを開けたら照明ON。
押し入れを閉めたら照明OFFって感じ。
まあ。オレの理解はこんな程度。
バーレルドールにリードスイッチをつけると仮定しよう。
何に磁石をつければいい?
悪魔か?
オレたちか?
床の青い四角いセーフエリアか?
床の青い四角いセーフエリア以外か?
まあ。
直感では床の青い四角いセーフエリアだよな。
ここの中心に磁石を接着したと仮定しよう。
セーフエリアの中心から離れたらONになるわけだな。
ほう。いいな。
オレたちは大抵の場合、射撃させたい。
だからセーフエリアの中心から5mm以上離れたらON。
いいじゃないか。
セーフエリアの中心から5mm未満ならOFFになる。
初期状態はOFFだな。悪くないぞ。
むしろ完璧じゃないか?
・・・
いや。駄目だ。
そもそも。
ON/OFFを遠隔でコントロールしたいんだった。
1回こっきりのOFF→ONなら
これまでさんざんっぱら使ってきた
頭ポカリの暴力検知パターンでいい。
まあ極論すれば今回も頭ポカリで良いんだけど、
相手は石像だからな。
ステラに弓で撃たせることになりそうだ。
3台だから3本の矢。
なんか違う気がするんだよな。
・・・
リードスイッチで使う「磁石」ってのが
この世界にあるのか不安だよな。
まず、そこから聞いてみよう。
ガンテツ。ちょっといいか?
鉄に強い雷を落とすと鉄にくっつくようになるよね。
磁石っていうんだけど、この世界にもある?
「あるぞい。この世界でも磁石と呼ぶぞ。」
良かった。
「だが、磁石を作るとなると鉄だけ使うわけではない。
専用の金属を混ぜる。わずかに金属以外の素材も使う。」
そうなんだ。
なんで鉄だけじゃないんだ?
「鉄だけで磁石を作ると磁力が弱い。
磁力を強くするために混ぜ物をするんじゃ。」
ほうほう。
それでさ。鉄って電気が流れやすいだろ?
あ。電気っていうのは雷のことだぞ。
「知っておる。」
磁石を使って、電気が流れたり流れなかったり
コントロールする仕組みって、この世界にある?
「ううむ。その説明だけでは理解が及ばぬのう。
絵を描いてもらえんかのう。」
わかった。
オレは木板を出して絵を描いた。
「その仕組みがあるかどうかで言えば、あるぞい。
だが、今のワシは作れないのう。」
そうか。
ドワーフの里に行けば作れる人に会えるかな。
「会えるだろう。作ってくれるかどうかはわからん。」
磁石はどうだろう。
ガンテツは作れる?
「磁石ならば作れるぞい。強力なやつがな。
ドワーフの里に行かなくても、この街で作れる。」
じゃあ作ってほしい。
「混ぜる魔法金属がいるぞい。
それを入手せねばならん。
それからひとつ知っておくべきことがある。
磁石の問題点じゃ。」
知っておくべきこと?
磁石の問題点?
「磁石は高温に弱い。
高温になると磁力が大幅に弱まるんじゃ。」
うん?
確かに知っておいたほうがいい問題点だな。
でも少しメリットがあるような。
気のせいか。
・・・
混ぜる魔法金属は、
ダンジョンの第四階層のGから取れるとのこと。
Gを殺したら魔法金属が効果を失うということなので、
生け捕りにして取るらしい。
オレはめちゃくちゃ落ち込んだ。
生きてるGから取るのかよ。
アルコールで即死させたかったのに。
あれ?
あれれ?
もしかしてオレ勘違いしてる?
冷やしたアルコールで急速に凍らせたら、
それって死んでないぞ。生きてると言えば生きてる。
取れるんじゃないの?
・・・
ルカ、ゲイル、ミラ、ガンテツと5人で
ささっとダンジョンの第四階層に行ってきた。
結果。
バッチリ取れたぜ、魔法金属が。
アルコールを大量購入してくれたゲイルに感謝。
「おう。」
「ナイスタイミングのおみやげでした。」
じゃあ、鉄と、この魔法金属だろ。
それから微量の金属以外の素材。なんだっけ?
ガンテツ。オレ聞いたっけ?
「ホウ素じゃ。虫に食わせる毒ダンゴにも使う。」
それって元の世界でも使っていたホウ酸ダンゴじゃないか?
すげえ。同じなのか。
どこで取れるんだ?
「温泉地ならばどこでも取れる。いや。
毒ダンゴが売っているので、それを使えばよい。」
いいね。買いに行こう。
それで素材が揃う。
じゃあ、ガンテツ。
強力な磁石を作ろう。
・・・
オレ、ミラ、ガンテツの3人で
街の製鉄所に行き、磁石を作らせてもらう。
ちなみにルカとゲイルは食料を買い出ししてから家に戻るってさ。
製鉄所で磁石を作りたいと話したところ、
強力な磁石はひっぱりだこということで、
作った磁石をいくつか渡す代わりに使用料が無料になった。
鉄も使っていいという。
ガンテツは鍛冶仕事はまだまだ素人らしいが、
鉄の事はいろいろ勉強していた。
木工職人の神なのに凄い。
あっさりと鉄を溶かしてた。
さらに魔法金属とホウ素を入れて溶かした。
それを型に溶かし入れてしばらく待ち、
取り出した赤い棒を黒い液体に入れて急速に冷やした。
ジュジューッと白い煙があがった。
あとは完全に冷えるまで待つだけ。
うん。冷えたな。
「ほい。これじゃ。ミラ。強力な雷魔法を頼む。」
「了解です。」
バリバリバリ!!
完成だ。
これがこの世界の磁石。
さっそく試してみよう。
うわ!磁力が強い!
あ。コレはネオジム磁石だ。
魔法金属とはネオジムのことだったのか。
うーむ。
これなら幾らあっても使い道がありそうだぞ。
ごめん。ガンテツ。もっと作ってくれないかな。
「構わんぞい。」
あとな。デカい塊で使うわけじゃないんだよ。
磁石をカットするのはどうするのかな?
金属用のカッターの設備があるんだ。
良かった。
カットはオレがやろう。
・・・
大量のネオジム磁石ゲット。
これがあれば、いくらでも工夫が出来そうな気がする。
懐かしいなあ。
元の世界では、子供の時に夢中になって遊んだよ。
ネオジム磁石の取り合いになったりしてな。
仲良しの子とケンカになったなあ…。
…?
仲良しの子って誰だ?
オレは元の世界ではコミュ障のぼっちだぞ。
オレは、何歳からコミュ障のぼっちになった?
生まれた時からコミュ障のぼっちではなさそうだ。
そりゃそうか。
ネオジム磁石で遊んでいた時は周りの子供と
仲良くしたりケンカしてたんだろう。
どうもおかしい。
コミュ障のぼっちの記憶が大雑把すぎる。
具体性に欠ける。
コミュ障のぼっちだったのは事実だろうが、
まるで「コミュ障のぼっち」の記憶を
コピーしてから様々な記憶領域にペーストして
塗りつぶしたみたいだ。
異世界転生の時に、オレの記憶が操作されたのかもしれない。
白いヒゲの神様がそんなことをするようには思えないが…。
まあいい。ネタは集まってきている。
神様は複数。白いヒゲのジジイとマッチョメン。
アシスタントの存在。思い出そうとすると頭が痛くなる。
人工知能アインがスキルの管理者。
享楽的な悪魔がオレを調査。人質を利用するくらい執着。
異世界転生でオレの記憶が操作されたっぽい。
あまり考えると頭が痛くなりそうだ。
よそう。




