10話 結界板の使い道
俺はその場にいる者皆に結界板の説明をし始めた。
もちろん、技術的なものは一切話していないうえ、ここ数か月の研究についてはまだ話していない。だが、それでもこの話は衝撃的な内容だったようで、俺の言う説明を否定するものもいたが、飛竜の攻撃を防いだ実績がある以上、頭ごなしに否定することもできず、俺が結界板を作る実演をしたことにより一気に俺の説明を信じる流れに切り替わった。
しかし、だからと言って鎖国が承認される流れにすることは簡単にできるものではなかった。
なぜなら、この結界板がいくら強力なものとはいえ、それだけでは解決できない問題がまだたくさんあるからだ。
だが、それは俺の想定内だ。今ここでそのすべてを説明してしまえば、それについていくらでも難癖をつけることができてしまう。しかし、情報をあえて出さずに質問をさせ、その質問に完璧に答えていけば、相手が勝手に鎖国しても問題ないと判断するように仕向けることができるはずだ。
俺が説明を終えると、案の定質問が飛んできた。
「鎖国すれば当然、国外からの輸入はできなくなります、我が国の食料自給率は例年あまり高くありませんし、周辺には大きな鉱脈は無い故、金属類もあまり取れません。なので、すぐに物資不足に陥ってしまうのではないでしょうか?」
「ふむ、いい質問だ」
俺は想定通りの質問に心の中でほくそ笑みながら、それを顔に出さずに淡々と質問に答える。
「まずは金属の話から答えていこう」
俺は結界板を一つ生成しそれを片手で持ち上げた。
そして、それに少量の魔力を込め、形を変形させていく。
「先程話した通り、この結界板は自由自在に形を変えることができる。それに、かなり硬く丈夫だ。だからこそ、こんな事もできる」
そう言い、俺はその場で作り上げた一振の剣を周りに見えやすいように高く持ち上げる。
少しインパクトを付けるために少々時間をかけて装飾を施したそれは狙い通り貴族達に大きなインパクトを与えられたようで、感嘆の声がチラホラと聞こえてきた。
「このように、剣やその他の道具に加工することもできる……これでどうだ? 金属問題については解決したんじゃないか?」
もちろん、金属にしかない特性もあるため、全てを結界板に置き換えるというのは少々難しい。
しかし、それでもかなりの物は置き換えることができるため、あとは国内の在庫と少量の産出で何とかなるだろう。
「陛下、これは革命ですぞ!? これほどの速度でものを作ることができるとなると我が国の産業は一気に大陸一のものになりまする! 鎖国などせずとも、そのままこの力を使えば…………」
そこまで言い、その貴族はなにかに気がついたような表情をして押し黙る。
「分かったようだな、どうやら我が国の周りには我が国が繁栄することが面白くない国が多いらしい、この力を持っていることがバレれば、熱烈な贈り物が送られてくるだろう」
俺の力に色めきだっていた場が一気に冷え切る。
特に王国派の貴族はその力を国の為に使えない事が悔しいのか、その感情をそのまま顔に出している者も見える。
また、他国との関係のある貴族も、心当たりがあるからか、ぱったりと静かになってしまっている。
「……陛下、その力の素晴らしさは十二分に伝わりました……ですが、流石にその結界板で食料問題の解決まで担うと言うことは出来ないのでは?」
沈黙を破ったのはカブランのその言葉だった。
食料問題に関しては領土面積の小さい我が国ではかなりの死活問題だ。
どれだけ農民を増やそうとも、そもそも耕作地自体が少ないため、限界がある。
その事がわかっているからか、カブランはまだ余裕の様子を保っている。
「まぁまて、それについては今説明しようと思っていたところだ……イリス」
「はい」
俺が後ろに控えていたイリスに声をかけると、イリスはすぐさま俺の要望を察し、一つの小さな麻袋を持ってきた。
「……それは?」
「大豆の種だ、我が国でも主食になっているのは知っているだろう?」
そう言いながら、俺は麻袋の中から種を何粒か取り出す。
突然の行動にカブランは唖然としているが、俺はそれを無視して作業を続ける。
「これは結界板の研究から派生して作れるようになったものだ」
そう言って俺は一つの一立方メートル程の大きさの結界板を取り出す。
結界というものは指定したものならば通り抜けさせることができ、外からは入るが中からは出られないと言う構造を作り出すことができる。
そのため、この結界板は一種の箱のようなものにする事ができるのだ。
そして、その中に単純な土魔法で土を引き、その後に水魔法で水を撒き、イリスにもう一度頼み持ってきてもらった肥料をそこに撒き、結界板ごと動かすことによってそれらを混ぜ合わせる。
そして、その中に先程取り出した大豆の種をばら蒔いた。
「技術的な事を言っても理解できないだろうから、説明は省く……まぁ、体験してみれば分かるだろう、カブラン、この結界板に魔力を流してくれ」
「は、はぁ」
カブランは戸惑いながらも俺の指示に従って魔力を流し始める。
しかし、数分経っても何も起こらない。
「えっと、これがなんなのですか……?」
「まぁ見てみろ」
俺が再度先程の結界板を指差す。
カブランは初め、わけがわからないと言った様子でそれを眺めるがとある事に気づいた瞬間、目を見開いた。
「ま、まさか……もう芽が出ているだと!?」




