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幕間 狂宴の始まり

残酷描写あり。

カニバ注意⚠

 

⎯⎯アテネの言葉は正しい。


小石を投じた湖のように、波紋は広がり運命(シナリオ)を変えていく。


⎯⎯ルーベンスは、本来救われない運命にあった。


リュートは知らないが、ルーベンスが救われない運命にあるからこそ、ゲームの暴食√はそのシナリオを刻み始めるのだ。


教会の腐敗を、取り返しのつかない罪を嘆くからこそ、トーリ・クレイシスは悪魔の手を取る。

正しさに囚われているからこそ、トーリは間違った選択をしてしまう。


だが、その運命(シナリオ)は変わってしまった。

すぐにその歪みが生まれた訳ではない。

けれど、確実に物語は歪みを見せ始めている。

何故なら⎯⎯⎯


暴食の悪魔は死んでいない。

故に、暴食悪魔が演じる物語はまだ始まっていないのだ。


リュートの活躍で、悪魔の手を取るのはトーリ・クレイシスではない。

悪魔を望んだのは⎯⎯⎯







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








「レナーっ! 何処にいるのーっ?」


ルーベンスの救済劇から1年、王都の片隅で妹を呼ぶ少女の声が響いた。


「レナー?」


ふぅと、少女は溜め息をつく。

少女が少し出掛けていた間に、少女の妹は外へと出て行ってしまったようだ。


「もう、あの子ったら……あれだけ外に出ては駄目と言ったのに……」


人気の全くない、王都の隅を少女は時間をかけて探し回った。

すれ違う人々はいない。

王都の隅、スラムとも呼ばれるこの土地では最近人さらいが多発している。

被害にあうのがスラムの人間と言うことで、騎士団はまだ動いていない。

この場所に暮らすのは、不法にこの土地にいる者ばかりなので後回しにされがちなのだ。

だから、それを知っているスラムの住民は自衛の為、日が沈む前に家に籠る。

他の者が見れば、日が暮れた中動き回るまだ年端もいかぬ少女の行動は狂気の沙汰であった。


《グチュリ……グチュ》


少女の声だけが響くスラムで、人気のない家で水音が聞こえた。

水音と言っても、肉やトマトを音をたてて食べているような音だ。


「レナ? そこに居るの?」


少女はその音に足を止め、建物の中へと足を踏み入れる。


「おねえちゃん……」


そこに、少女の探し人はいた。


「もう、ご飯なら私が見つけてくるって言ったでしょ?」


少女は大切な妹に怪我がないか心配しつつも、約束を破った事を叱った。


「だって……お腹がすいたんだもん。おねえちゃんがくれる分じゃ、ぜんぜんたりない……もっと、もっとたくさん食べたい」


けれど、少女の妹はそれに頷く事なく、中断していた食事を再開した。


《グチュリ、グチュリ》


少女の妹は、常に飢えていた。

姉の為に空腹を耐えようとしていたが、それももう限界だった。


「分かった……私が何とかする」


こんな事、いつかは終わりが来るのかもしれない。

けれど、少女は妹を諦める事が出来なかった。


《ピチャッ》


妹の方から、液体が飛んで親指にかかった。

飛んだのは赤い、真っ赤な鉄臭い液体。


「レナ、貴方は私が必ず守る」


幼い、幼い妹。

少女は妹が大切だった。

少女にとって、唯一の家族。

可愛い妹。


そしてそれは、その愛らしい口が血でベットリと汚れていようと、その周りに数多の死体が積み上げられていようと変わる事はなかった。



これでこの章はお仕舞いです。

次は間が空くと思います( ノД`)…

1月、2月が忙しい感じなので、他の優先って事で。

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