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結界の鏡

カラスの住処は、村の西側に見える赤茶けた頂を持つ山の向こう側にあるという事だった。


ユウは当初、アーダの回復を待ってからアーダも一緒に連れて行こうと考えたのだが、小人達にそれでは遅いと言われ、すぐに発つ事となった。

何でも、今ある結界は術者の術によるもので、定期的に術を上掛けしなければならないらしく、宝具の無い状態では術者の負担が大きくて、術者の体が術に耐えられなくなりそうだというのだ。

今はやむなく結界の範囲を可能な限り小さく絞っているのだそうだが、それでも長くは持ちそうもないらしい。


とはいえ、さすがに夜動くのはまずいだろうという事で、翌朝の早朝に出発する事に決まり、歓迎の宴はそのまま続けられる事となった。

宴では小人達がひっきりなしに料理を運んでくれた為、結局、ユウ達は皆、満腹になるまで美味しい料理を充分堪能できた。


一通りの食事を終えたところで、ユウはバウジフに聞いてみた。

「ところで、その宝具ってどんなものなのですか?」


「このくらいの大きさの鏡じゃ」

バウジフは両手を使って小さな円を描いてみせた。


その所作は意外に大きなものだったのだが、冷静に見ると描かれた円はさほど大きなモノではなかった。

ユウ達から見れば、手のひらほどの大きさの、せいぜい手鏡くらいの大きさの鏡だ。


「そのくらいの物なら、持って帰ってくるのもさほど大変ではなさそうですね。で、その鏡にはそれとわかる特徴みたいなものはあるのですか?」

カラスが鏡をたくさん持っていたら間違いかねない。

ユウはそう思って聞いてみたのだが、そんな心配も必要ないようだった。


「その鏡の裏側は漆で黒く塗られていて、その漆に竜の飾りが埋め込まれる様にして描かれておる。美術品としても価値のある見事な逸品じゃ」

そもそも鏡自体が珍しいと言うのに、そんな特徴があるのなら間違える事もないだろう。


そう思い、安堵していたユウの後ろから声が掛けられる。

「結界はその鏡でなければ張れないものなのですか?」

ルティナだ。

いつの間にかユウの隣に割り込んできている。


バウジフは、ルティナが急に話に入ってきたので、初め少し驚いたように目を見開いたものの、すぐに笑顔になってそれに答えた。

「そうじゃ。あの鏡には特別な力が埋め込まれておるからの、他の(もの)には変えられん。だからこその宝、宝具なのじゃ」


ルティナは明らかにがっかりしたようだった。

そんなルティナの向こう側で、小人達が何やら大きな声を上げている。

その声につられ、ふと、ルティナの向こう側に目をやると、フィノが何故か背中の大きな剣を身体の前へと持って来て、その柄を握っている。

近くの小人たちがざわついていたのは、その剣を警戒しての事だったようなのだ。


「フィノ、こんな所で剣をいじらないでくれないか。特に、その剣は目立ちすぎる」

慌ててユウが注意すると、フィノは急いで剣を鞘に戻した。


フィノに剣を抜くつもりがあった訳ではない。

ユウとバウジフの話に加わる為、ルティナがユウの隣に割り込んで来た時、ルティナの身体がフィノの剣に当たってしまった為、フィノはそれを直していただけなのだ。


「ち、違うの。ごめんなさい。すぐにしまうわ」

なので、フィノはすぐに剣を背中に背負い直し、両手を広げてユウやバウジフの方を向く。

剣を振るう意志の無い事を表しているのだ。


それを見てその事情を察したユウは、早々に話題を変える事にした。

「そういえば、鏡を盗って行ったカラスって、どんな奴です? もしかして、何か特別な力を持っていたりしますか?」


バウジフもすぐにそれに応じてくれる。

「いいや、少しばかり体が大きい以外は普通のカラスじゃ。ただ…」

「ただ?」

「…ただ、そのカラスは人の言葉がわかるのじゃ」


「わかるってどういう事ですか?」

再びルティナが口を挟む。

どうやら興味があるらしい。


バウジフはユウ越しにルティナの顔をちらと覗き見た。

「言葉の通り、我らの話す言葉を聞き、理解する事が出来る、と言う事じゃよ」


「と言う事は、返してくれ、と言えば通じるのではないのですか?」

言葉が通じるのなら、交渉はできる。

ルティナが言いたいのはそういう事だろう。


バウジフはゆっくりと(かぶり)を振った。

「我々は奴らに、鏡をとられた時を含め何度も呼びかけてはいるのじゃが、奴等に応じる気配はないのじゃ。聞こえていないのではない。明らかに分かっていて無視しているのじゃ。その点が厄介といえば厄介じゃろう。彼等にも何か理由があるやもしれんからの」


確かに、ただ光るものを集めていた訳ではなく、明確な意図を持って鏡を持って行ったのだとすれば、そう簡単に返してくれないかもしれないので、厄介は厄介だ。

強引に取り返すにしろ、その抵抗は大きくなるに違いない。


とはいえ、今はそんな事を気にしてもどうしようもない。

どのみちここでは彼等の真意はわからないのだ。


気が付くと小人たちも食事を終え、ユウ達とは離れた場所から片づけを始めている。

明日は早く発つ事にしているため、ユウ達も早く寝た方がいい。


ユウ達はこの村の建物には入りきらない為、外に寝るしかないのだが、村人たちは村の敷地の端にある、この辺りの木の中では最も大きな木の根元に、干し草をひいて寝床を作ってくれている。

普通に野宿するよりは、寝心地ははるかに良さそうだ。


ユウは最後にバウジフに一つ頼み事をし、もう一度アーダの所へ寄ってから、フィノとルティナを伴い、その寝床へと向かった。

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