スケルトン
アーダが右折を選んだ十字路から先は、しばらく行っても交差点等の分岐には行き当たらなくなった。
只々真っ直ぐな道が続いているだけだ。
こんな事は、これまでには無かった事なので、明らかな変化にこの先に何があるのか不安と共に期待もしてしまう。
更に進むと、両脇の壁が少しずつ離れて行き、通路の幅が広がってきた。
「もしかして、出口ですか?」
ルティナが期待を込めて聞いてくる。
だが、そんなに都合よく行く訳がない。
通路はそれまでの二倍程度まで広がった後はその幅で止まり、その先はその幅のままただ延々と続くようになっただけだった。
出口らしきものなどどこにも存在する気配がない。
フィノが左右を見回して言う。
「どういう事だろ、これ」
通路の幅が広がっただけで、他に変化はないのだが、それだけでも随分と不気味に感じられる。
分岐が無くなった事も同様だ。
今まで普通に有ったものが無くなると、どうにも不安に思えてしまう。
「だから言っただろ、どっちに行っても良いような気がしないって」
アーダが少しやけ気味に声を上げる。
そんなアーダの隣にフィノがゆっくり進み出た。
「別にアーダの事を責めている訳じゃないわ。むしろここまで何にもないで来れた事の方がすごいじゃない」
ルティナもそれに続けて言う。
「私もフィノの言う通りだと思います。さっきユウ様も言っていましたけど、私も何もないままここを出られるとは思えません。ここへ来る前の砂漠でも雪原でも、何もない事は無かったですし、ここでもきっと何らかのアクションは有るのだと思います。石碑の事も有りますしね。あっ、そうだ。石碑と言えば…」
ルティナは言っている途中で何か思い出したのか言葉を止めた。
丁度そのタイミングで、前方に何者かの姿が認められるようになる。
「ルティナ、待って。何か来たみたいよ」
フィノはルティナの前に手を翳し、ルティナを後ろに下がらせると、自らは更に一歩前へと進み出た。
まっすぐ前を見つめながら、ゆっくり剣を抜き放つ。
その後ろではアーダは槍を、ルティナは弓を準備する。
はるか前方、通路のど真ん中には白い塊が一つ浮かび上がっている。
それはよく見ると、右手に剣、左手に盾を携えた人の形をした骨の塊、骸骨のようだった。
「なんだよ、ここにはあんな化け物までいるのかよ」
ユウの漏らしたその声に反応するかのように、骸骨はユウ達のいる方へと向かってゆっくりと歩き出した。
ルティナが説明してくれる。
「あれはスケルトンです。倒しても粉々にでもしない限りは復活してしまうと言われていますので気を付けてください。動きは早くないはずなので、フィノやアーダなら慌てなくても充分対応できるはずです」
「了解」
フィノはそう一言言い残すと、そのスケルトン目指して駆け出した。
それを見送ったアーダが槍を降ろす。
「フィノが行くのなら、あたしが行く必要はなさそうだな」
今回は張り合うつもりはないようだ。
というか、フィノに先に行かれてしまっては、とても追いつく事は出来ないだろうから、追いかけても仕方がないと判断したのかもしれない。
フィノは一瞬で相手までの距離の半分を詰めている。
が、フィノがその辺りにまで到達したその時、周囲の壁からわらわらとたくさんのスケルトンが湧き出てきた。
彼等は姿を現すと、すぐに二手に分かれ、一方はフィノを、もう一方はユウ達三人を取り囲むべく動いてくる。
「何だ何だ、骨野郎がたくさん現れやがったぞ」
再び槍を構えたアーダが動き出そうとするのを、ルティナが掴んで引き止めた。
「アーダ、行かないで。後ろからも湧いて来ているの」
言われて後ろを見てみると、いつの間にか後ろにも左右に一体ずつ二体のスケルトンがいる。
やはり壁面から湧き出して来たもののようだ。
スケルトンは、ゆったりとしたスピードではあるものの、徐々に距離を詰め迫ってくる。
最初に現れた一体を先頭に、ある一定の範囲にわたって壁沿いに一列にずらっと並んで姿を現し、そこから通路の中心に向かって歩を進めて来ている所を見ると、彼等は本来その範囲の中央付近におびき込んだ敵を、全員で取り囲む作戦だったのかもしれない。
だが、彼等の起動ポイントをフィノが一人あっという間に通過してしまった為、取り囲む事が出来ず、二手に分かれる様になったものと考えられる。
フィノはあっという間に正面の最初の一体の元へと到達すると、そのまま問答無用で斬り掛った。
そしてあっという間にそのスケルトンをバラバラにする。
だがスケルトンはバラバラにされても、徐々に元の姿に戻ってくる。
ルティナの言う通り、骨をバラバラにした程度では、すぐに復活してしまうらしい。
元の姿に戻ったスケルトンが、再びフィノに襲い掛かる。
そうはさせじとフィノが更に剣を振るうのだが、その時にはフィノは周りを別のスケルトンに囲まれていた。
フィノの目が鋭く光る。
次の瞬間、フィノは取り囲んだスケルトンをあっという間に一蹴していた。
これで決着がついた訳ではないのだろうが、フィノはその攻撃のわずかな合間を利用して、スケルトンの骨の幾つかを粉々に粉砕している様なので、それを繰り返せば時間はかかるかもしれないがいずれは片付けてくれるものと思われる。
フィノとスケルトンとでは、スピードの差が圧倒的なので心配するそのくらいの事は可能だろう。
それよりもこちらの方が問題だ。
先程からルティナが弓で、アーダが槍で戦っていて、それなりに応戦はしているのだが、フィノとは違ってたとえその一部であっても彼らの骨を粉々には出来ていない。
スケルトンは動きが決して機敏ではない為、ユウも短剣で戦ってはいるのだが、今の所、自分の身を守るだけで精一杯だ。
ユウは近づいて来たスケルトンの一体を何とかバラバラにすると、そこへ攻め込んできた別の一体から距離を取るべく、少しだけその場から移動した。




