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再びカノンの入口

以前ツォーナと会った巨大な木のある所までは、意外にすぐに着く事が出来た。

その巨木を「時空の扉」を目指して登って行く。


「時空の扉」はすぐに見つける事が出来た。

ツォーナに教えてもらった道筋を、きちんとトレース出来たという事だ。

残念ながらそこにツォーナの姿はなかったが、ツォーナはどこかへ行くような事を言っていたと思うので、きっとそうする事にしたのだろう。

もう解放されたのだから、とどまっている理由はない。


その後、ユウ達が「時空の扉」の前に集まると、「時空の扉」は青白い光を発し始めた。

その光をくぐり、「時空の扉」を通り抜ける。


光を抜けると、緑豊かな草原の一角に出た。

少し先に見覚えのある小さな小屋が建っている。


その質素な小屋の外観を眺めると、少し懐かしい気持ちが湧き上がって来る。

ようやくここまで来たのだと思うと、少々感慨深くもある。

が、前回はこの小屋で飛ばされてしまった訳なので、ここで気を緩める訳にはいかない。

それはフィノ達他の三人も同じ様に思っている様だった。


「ここからは念の為手を繋いで行く事にしよう」

ユウの提案に、皆素直に従った。


四人で手を繋ぎ、小屋の前へと進み出る。

何かあった場合にバラバラにされない様にする為の予防措置だ。

前回来た時の教訓でもある。

ユウは、窓のない質素な小屋に唯一ある扉の前で一旦立ち止まり、そこで覚悟を決めると、扉を開き、小屋の中へと足を踏み入れた。


小屋の中は、前回来た時と何も変わっていない様だった。

中央に石碑がある以外は何もない、とても簡素な室内だ。


そんな室内に、ユウ達の全員が入り終わると、それを確認したかのように、無地だった石碑の表面に次第に文字が浮かび上がってくる。

その文字も前回と全く同じものだった。


カノンの地に立ち入る者、

渇きの時、剣を持ち、剣に従い地を穿て

凍えの時、盾を持ち、盾に従い光を放て

畏れの時、珠を持ち、珠に従い心を護れ


そして、それらの文字が完全に浮かび上がると、今度は特定の文字が金色に光り始める。

光を発しているのは、「剣」と「盾」、それに「珠」の3文字だ。

同時に、フィノの剣とユウの盾、それとバーランド家から借りて来た珠も、金色の光を放ち始める。


これはある意味予想通りの現象だと言っていい。

そして、この時点で皆が無事だという事は、前回、リスティ近郊まで飛ばされた地点は通り過ぎたと考えても良いのだろう。

ユウは密かにホッと胸をなでおろした。


しかし、まだ安心する事は出来ない。

なにしろ、ここから先は未知の領域なのだ。

何が起こるかわからない状況にある事には変わりがない。

まだ、何処か知らない場所へと飛ばされる可能性だって全く無くなったとは言えないのだ。


ユウはフィノと繋いでいた手を改めて強く握り直した。

加えて、フィノを通じてルティナとアーダとも繋がっている事を確認する。

手を繋いでいたからと言って、同じ場所に飛ばされるとは限らないのだが、四人がバラバラになる確率は出来るだけ小さくしたいし、その為のリスク管理はきちんとやっておかなければならない事も間違いない。


そうやって全員で手を繋いだまま、しばらくの間身構えて待っていると、それまでは確かに何もなかった石碑の向こう側、ただの壁の真ん中に、入口と同様、何の飾り気もない普通の扉が、浮かび上がるようにして姿を現した。

その扉は、見た目も大きさも入口の扉と全く同じ扉に見える。

一瞬、入口と見間違えたかと、急いで後ろを振り向いてみるが、しかし、入口の扉はもう跡形もなく消えて無くなっている。

それはつまり、もう戻る事は出来ないという事を意味している。


ユウは、その場で少しだけ待って、小屋の中に何も起こらない事を確認すると、三人を促して扉の前に立った。

そこで、何かあった場合にはすぐに対応できる様注意しながら、それまで繋いでいた手をゆっくり離す。


「今回は大丈夫みたいだな」

ユウはもう一度小屋の中を見回してみた。

しかし、扉の位置が変わった以外、他に変化は見られない。


「でも、この扉の先がどんな所かはまだわかりませんよ」

「バラバラに飛ばされさえしなければ、平気でしょ。この扉の先がどんな所だって、私達はユウを助けるだけ。する事は何も変わらないわ」

「念声の主はこの先にいるんだろう? とっとと助け出して帰ろうぜ」


ユウは三人とそれぞれ目を合わせ、各々小さく頷き合うと、扉に手をかけ、一気に開けた。

明るい光が扉を越えて小屋の中まで入りこんでくる。

お互いに離れ過ぎない様注意しながら、その光の中へと歩を進める。


そこは、所々に赤茶けた岩の存在する荒涼とした砂漠の様だった。

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