共鳴
石ころの光は意外に淡いものであったらしく、ユウが石ころを箱の中から取り出すと、その光は周りの光に紛れてうっすらとしたぼやけたものになってしまった。
それでも近くで見ると光っている事がわかる為、気の所為などではない事も間違いない。
ユウは辺りを見回し、部屋の隅に薄暗くなっている場所を見つけると、そこへ向かって移動し始めた。
もっとしっかり光の様子を見てみようと思ったのだ。
途中、フィノのすぐ横を通り抜ける事になる。
その時、突然石が強い光を発し始めた。
今までの淡い光とは明らかに違う、部屋の中くらいなら明るく照らす事の出来る程の強い光だ。
石の中に球形に光る光源がある事まではっきりわかる。
ユウはその場で立ち止った。
すぐにフィノがその石を覗きこんでくる。
「なに、これ。どういう仕組み?」
「わからない。けど、この石の中に何か光るものが埋め込まれているらしい」
その光源が今何かのきっかけで強く光るようになったものと推測される。
だとすると、もしかしたら最初に見た弱い光にも何らかのトリガーがあったのかもしれない。
と、ユウの後ろからアテル驚いたような声がする。
「ユウさん、背中…」
「フィノさんも…」
振り返ると、ラビアはフィノの背中を指差している。
言われて見てみると、ユウの持っている石だけではなく、フィノの背中も光っている。
光を発しているのは、どうやらフィノの剣の様だ。
「ユウの背中も光っているわよ」
フィノは背伸びをするようにしてユウの後ろを覗きこんでいる。
だが、ユウはもう後ろを振り返るまでもなくわかっていた。
光っているのはユウが背負っている大地の盾だ。
この盾とフィノの剣がユウが手に持つ石ころに反応して光っているに違いない。
石ころに剣と盾が共鳴している、という所だろう。
正確に言えば、石ころに共鳴している訳ではなく、石ころの中にある球形の物体に共鳴しているのだろうが…。
つまり、この石ころの中に閉じ込められている物こそが、あの石碑に書かれていた「珠」だという事になる。
フィノもその事に気が付いたのだろう、背負っていた剣を下ろし、確認している。
ユウも背中の盾を身体の前へと持って来た。
その途端、三つの光がそれぞれさらにその強さを増していく。
フィノが小さく目を瞬かせている。
「これって…」
「ああ、たぶんこの石の中に閉じ込められているのが、カノンの入口の石碑に書かれていた「珠」だと見ていいだろう」
「っていう事は、これがあればカノンにも入れるっていう事?」
「絶対、とは言えないかもしれないけど、その可能性は高いんじゃないのかな」
カノンの入口で飛ばされてしまったのは恐らくはあの時「珠」を持っていなかったからだ。
なので、あの入口に拒絶されてしまった以上、もう一度あそこまで行く為には、そうなった原因である「珠」を探さなければならないと考えていた。
「珠」を持っていなければ、また同じ事になってしまうと考えられるからだ。
その「珠」を探しに動く前に、思いがけず身近な場所で見つける事が出来たのは、ついているというしかない。
今から思えば、この石がここにある事は神域に行く前から知っていた訳なので、あらかじめこの石を持って行っておけばもっと良かったのかもしれないが、あの時点でこれが必要な物だとは分かるはずもないので、ここでそれがわかった事は充分ラッキーな事だと言っていい。
とはいえ、この石の持ち主はフィルスの訳で、フィルスの承諾を得なければ持ち出す事は出来ない。
フィルスからは、これは前王からの預かりものかもしれない、という様な聞いたような気もする。
しかし、フィルスなら訳を言って頼めば貸してくらいの事はしてくれるに違いない。
何とか頼み込んで持って行くしかないだろう。
「一体何が起こったと言うのです?」
アテルが首をひねりながら近づいて来る。
「この光、きれい…」
ラビアも光に興味をそそられていようだ。
ユウは、フィノに目で合図して、三つの光源をラビアにも見えやすくなるよう、ゆっくりと降ろして行った。




