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石塊の中の光

フィルスが部屋から出て行くのを見送ると、ユウはいまだ部屋の中程で話しをしているフィノ達の所へ戻るべくゆっくりと歩き始めた。


歩きながら何となく部屋の中を見回してみると、部屋の中には決して多くはないものの、以前は無かったような調度品が幾つか飾られている事に気付かされる。

と言っても、決して過度に飾られたモノではなく、どちらかと言えば控えめに見える地味なものばかりなのだが、それでもそのおかげで以前よりは貴族の部屋らしく見える様になっている。


骨董品か何かなのだろうか、よく見ると、年代物の古いものも多くあるようだ。

ユウがそのひとつである飾り台の上に置かれた美しい女性の像を見つめていると、それに気づいたラビアがユウの元へと駆け寄ってきた。


「その女神様の像、きれいでしょ。ラビアも大好きなの」

「へえ、これ、女神様の像なんだ」


ラビアの後ろからはフィノも付いて来ている。

「でもそれ、前に来た時にはなかったものよね。買ってもらったの?」


そこへアテルも話に加わるべく近づいて来る。

「それは、バーランド家の当主に代々受け継がれてきた女神像だよ。ついこの間、父上が買い戻したんだ」


「なるほど。随分と古いものに見えたのはその所為なんだね」

「でも、よくそんな大事そうなものを買い戻す事が出来たわね。運が良かったんじゃない?」

確かにフィノの言う通りだ。

もしこれがそんな大事なものだとしたら、買い戻せたのは奇跡に近い。

それとも、この像はバーランド家以外の者にとっては全く価値のないモノなのだろうか。


等と思っていると、アテルが説明してくれる。

「これを手放した時に引き取ってくれた商人が父上の友人だったので、その人が家にとって大事な物については店に出さないで取って置いてくれたんだ。だから買い戻す事が出来たんだって父上が言っていた」


という事は、市井の者の中にはバーランド家に近しい者もいるという事なのだろう。

それはそうか。

王が変わる前まではそれなりに親しくしていた者も多くいたはずで、そういう者達が密かに味方になってくれている場合があるという事だなのだろう。


フィルスが今会っているのも、そんな人達の中の一人なのかもしれない。

表だってのあまり派手な動きは出来ないでいるはずなので、どちらかと言えば密やかで目立たないレベルでのやり取りをしているのではないだろうか。


「他にもそういうものがこの部屋にはあるのよ。ほら、ここに置いてある指輪とか、そこに飾ってある肖像画とか」

いつの間にかラビアが少し先へと移動して、棚の上を指している。

なるほど、確かにそれらは以前に来た時には無かったものだ。

そうは言っても、指輪や女神像はともかく、肖像画のようなものにはあまり高値がつくとは思いにくいのだが…。


見回すと、他にも以前は無かったものが幾つか飾られている。

その全てが買い戻した物かどうかはわからないが、この部屋に飾られているという事は、皆それなりに大事なものなのだろうと推測される。

その大部分が、それほど贅沢な物には見えないものではあるのだが、しかしそう見えるのは、やはり過度に飾り立てすぎない様心がけているせいなのかもしれない。

その辺の事についてはフィルスも心を砕いている事が窺える。


「新しいものなら、こっちにもあるわ」

更にその先にも何かが飾ってあるのだろう、それを見せるべく、ラビアが小走りに駆けて行く。

ユウもその後を追いかけるようにしてゆっくりとラビアの後をついて行った。


その途中、何かに惹き付けられるような感覚があり、そちらの方を振り向くと、そこには手のひらサイズの古い木箱が置かれていた。

何の変哲もない普通の木箱なのだが、ユウはその木箱に見覚えがあった。

なので、立ち止まってその箱を眺めていると、やはりその箱には違和感がある。

木箱の色が、やけに赤っぽく見えるのだ。


うっすらと赤みがかって見えるその様子は、しかし、よく見ると窓から入ってきた夕日の所為だと気づかされる。

なので、そのままそこを通過してしまってもおかしくはなかったのだろうが、何故か無性に気になってしまい、ユウはもう一度じっくりその箱を見つめた。


「あっ、それは父様の物だけど…、新しい物ではないわ」

ユウがその場所から動かないのを見て、ラビアが戻って来て背伸びする。

その木箱が置いてあった場所が、ラビアの背丈では背伸びをしなければ見えない場所だった為だ。

そして、箱をひと目見て小さく驚きの声を上げた。


「これ、光ってる」

そう言われて、良く見てみると箱は確かに光っている。

違和感の正体は夕日が箱に当たっていた訳ではなく、中からの光が漏れる事で木箱の表面が少し赤っぽく見えたという事だったらしい。


確か、この木箱の中には拳より一回り大きいくらいのただの石ころが入っていたと記憶している。

ユウは何かに惹きつけられるかのようにその木箱を手に取り、そのまますぐにその木箱の蓋を開けてみた。


開けてみると、箱の中は淡い光で満ちている。

その光は木箱の中に収められた石ころの内側から発せられているようだった。

石ころの内側に、ぼんやりと光を発する球形の光原が透けて見える。


ユウはその光る石ころのような塊を木箱の中から取り出した。

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