表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/200

カノンの入口

結局、フィノはルティナを抱きかかえたままの状態で枝の上を走り、その状態のまま枝から飛び降りて来たという事のようだった。

もたもたするルティナを見て、我慢できずにルティナを抱きかかえて飛び降りたらしい。


ユウがフィノにルティナのフォローを頼んだのはそういう意味ではなかったのだが、結果的にフィノを最後にした事は間違いではなかったという事になる。

ルティナも時間を掛ければ自らの力で降りる事が出来たのかもしれないが、その場合はどれだけ待たされる事となったかわからない。

少なくとも時間の短縮になった事は確かなようだ。


全員が無事に移動した事を確認したツォーナが、ユウに声を掛けて来る。

『よろしいですか』


ユウは、助かった、とばかりに意識をそちらに切り替えた。

フィノとアーダの間で小競り合いが始まりそうな雰囲気だったからだ。


『構わないよ。なに?』

ユウが答えると、それを察したフィノはアーダに向けかけていた闘気をスッと収めた。

それを見たアーダも同様に気を鎮めている。


ツォーナが後ろを指差して言う。

『この洞窟の奥にあるのがカノンの入口へと通じている「時空の扉」です。扉の前に立って待つと、扉が青白く輝いてきますから、そうしたら扉の中へと入ってください。扉を抜ければ、カノンの入口は目の前です。私は行っても飛ばされるだけなのがわかっているので今は行くつもりがありません。ですから、申し訳ありませんが私が案内できるのはここまでです』


ツォーナの指差す先には洞窟があり、その奥には微かに木製の扉らしきものがあるのが見えている。

洞窟はその扉の所で行き止まりになっているらしい。

入口から見えるくらいなので、そんなに距離はないようだ。


『ありがとう、ツォーナ。助かったよ』

ユウがお礼を言うと、ツォーナはにっこりほほ笑んだ。


『いえ、お役にたてたのなら良かったです。ただ、前にも言いましたけど、カノンに入るのなら、覚悟をしてくださいね。許されなかった場合には、どこに飛ばされるかわかりませんので…。もし気が変わって行くのを止めるのでしたら、帰りはこの「時空の扉」は使えませんから、入口とは逆方向に向かって歩いて戻って来るしかありません。でも、そうする事も選択肢の一つだと思います。慎重に判断なさってください』

そして、そこまで言うと、ツォーナはユウ達が洞窟の中へと入れるようにと洞窟の横へと移動した。


ユウはツォーナにもう一度お礼を言った後、皆を伴い洞窟の中へと歩を進めた。

この洞窟は、洞窟と言っても外の光がかなり奥まで届いている為、視界は意外に開けている。

その為、「時空の扉」と思しきものの姿は、外からでもぼんやりとではあるもののしっかりと見えている。

それは、小さな砦の入口くらいの大きさの木製の枠の様な構造物で、扉と言うよりは、岩の側面に立てかけられた門と言った方が近いものの様だった。


ユウは、その枠だけしかないような扉の前まで進むと、そこで立ち止まり、皆を自分の周りに呼び寄せた。

扉の前に立つと、視界には目の前の岩しか入らなくなる。

なので、感覚的には洞窟内の他の壁の前に立っているのと変わらない。

どう考えても、ここから前へは進めそうに思えない状況だ。

しかし、ユウはツォーナの言葉を信じ、そこですぐ目の前に見える岩を見つめながらじっとその時を待った。


数秒後、目の前の岩に変化が起こった。

岩が青白く光り始めたのだ。

正確に言うと岩ではなく、木製の枠の内側全体が青白く光り始めた訳なのだが、ユウの目には今までそこに見えていた岩が青白い光を発し、その所為で視界が光で一杯になったように見えた。


しかし、そう感じたのはそこに岩があると思っていたからで(実際、その直前まで岩はそこにあったのだが)、なかなか前に進めないでいると、

『早く行かないと、扉が閉まってしまいますよ。そうなると今日はもう扉は使えなくなってしまいます』


ユウの頭の中にツォーナの声が響いてきた。

ユウがなかなか扉の向こうへ行かないので、心配して声を掛けてくれたのだ。

ユウは三人に目線で合図をしてから、青白い光に向かって大きく一歩踏み出した。


たちまち身体が光の渦に飲み込まれる。

前後左右のあらゆる方向から青白い光に襲われる。

だが、足元は意外としっかりしていて、歩くのには支障はなさそうだ。


なので、そのまま歩いて行くと、少しして突然その光が綺麗に消えて無くなった。

一歩遅れてフィノとアーダが、そしてフィノに引っ張られる様にしてフィノと手を繋いだルティナが、同じく光の渦を超えてくる。


そこは、広い草原の一角と思われる緑豊かな場所だった。

少し先に小さな小屋が建っている。

振り返ると、すぐ後ろには人の背丈の二倍ほどもある大きな岩があり、それ以外は視界を遮る物は何もない。

一面の大草原だ。


今さらだが、元居た場所とは全く違う場所である事は間違いない。

だとするならば、目の前に建つ唯一の建造物であるあの小屋が、カノンの入口である可能性が高い、という事になる。

というよりも、そうとしか考えられない状況だ。

小屋の先もただの草原のようにしか見えない為、仮にそこがカノンなら、そもそも小屋になど入らなくても行けそうにも思えるが、それならツォーナがそんなに苦労する訳がないはずなので、やはり入口から入るしか方法はないのだろう。


光の扉はもうなくなっている。

方向からしてユウ達はすぐ後ろの岩の辺りから出てきたはずなのだが、その岩に扉らしきものの痕跡などは見当たらない。

ツォーナが言っていた通り、こちら側からは「時空の扉」を使う事は出来ない、という事なのだろう。


ユウは小屋の前まで行ってみる事にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ