1/13
イントロダクション
『ありがとう。こんな風に私を想ってくれて嬉しいよ。』
この物語を読み終えた後、霞野翔音さんは私に言った。
「いえ、過去の自分を綴ってみただけですから。もう遠い昔の話という事にして下さい」
私は翔音さんから目を逸らして奥にある小さな人工池を見る。視界に入ると同時に青い光に照らされながら勢いよく噴水が飛び出る。
『いや~!よく覚えてるね。読んでみると、こっちまでいろんなこと思い出せたよ』
すごいね、本当に。と翔音さんは月島雅に投げかける。
「ほんと、柚木は記憶力凄いですよね」
「私は記憶力だけはいいみたいです。それも雅に言われてから知るようになったんですけどね」そう私は笑う。
立川にあるグリーンスプリングスにて私、五十嵐柚木と恋人である月島雅、一つ年上である霞野翔音と三人で話していた。元々は雅が〝霞野さんにお会いしたい〟ということで落ち合った。今日で初である。
今となってはこれでよかったんだって思える。あの日からずいぶんと時は経ったけれど昨日の事のように思い出せる。今となってはいい思い出だ。噴水を見ながら回想してみる。あれは私が小学生の頃だった――。




