サテの覚悟…
ーサテ視点ー
焦った。
久しぶりの出迎えに当然の事ながら、シンさんを一番に馬車に乗せた筈だった。
居ない?
乗せてたはずの馬車は空っぽのまま、我が支店へと到着したのだ。
何故?
担当者は切れ者と言われていた支店長だったのに。言い訳はしどろもどろで要をえない。
『北ヘダン』は、都市としては大きな方だ。
ガイエ様から、大切な用事があるから王家に繋ぎを取ると言われ急ぎ立ち寄ったのだ。
もちろん、我々も今後の旅に必要なものを揃える必要があった。
あまりの展開に驚くも不可侵との絡みともなれば我が兄上にもお伝えせねばなるまい。商会を開いてからは、なるべく連絡を取らない様にしていたのだが…。
そんな考え事をしていたせいなのかもしれない。シンさんの事を確認しないなんてミスをするとは。
「サテ。コレはお得意のシンさんの特技が炸裂していると思うぞ。彼は事件を引き寄せる天才なのだから」
ブヤン…まぁ間違えではないがその言い方は直接的過ぎる。
「あのな、シンさんと付き合うのだ。この際、駆け引きとか建前なんてモノ意味を為さないぞ。とにかく、俺も心当たりを探しに出るから!」
そう言うと猪突猛進なブヤンらしく、何処へ行くとも言わず駆け出した。背中に「見つけたら連絡をくれ。総動員して探すから」と声を掛けたが姿は見えない。
虎族は耳がいい。更にSSSランクの彼の能力ならば、聞こえるだろうと予測して支店長へと振り向いた。
ガタガタ震える彼は、彼がそれほど重要な人物だと理解してなかったのだろう。見た目で判断するのでは、この商売は向いてない。
ふむ、後で人事考査をしなければな。
とにかく、今はシンさんだ。
「いいか、総力を上げてシンさんの捜索をしてほしい。見つけ次第、連絡をくれ」
その言葉を聞いた支店長が指示を出す。各員がバラバラに走り出すも、連絡係をそれぞれに付ける辺りは全くの無能ではないのか?
「サテ様。シン様の行かれそうな場所に心当たりはございませんか?」
真っ当な質問だが、難しい。
とにかく、いつでも私の想像など軽く超えてゆく人だから。難しい顔をする俺に、支店長が話しかけ様としたら、ブヤンから連絡が入る。
なんとシンさんはギルドにいるとの連絡だ。
何をしに?
様々な人智を超えた能力を持つシンさんだが、戦闘能力は完全に0だ。いや、マイナスかもしれない。
慌ててギルドへ向かう前に支店長へ指示を出す。
「他のお客様はこれまでの指示通りにしてくれ。シンさんの泊まる場所は予定を変更する。『隠れ家』で頼む」
俺から『隠れ家』の一言を聞いた支店長は、ギョッとした表情をしながらも、結局何も口に出さず「畏まりました。」と深々お辞儀をしたのを見届けて《転移石》でギルドへと飛ぶ。
《転移石》は、恐らく王族ですら滅多にお目にかからない品物だろう。それほどの値段で価値なのだ。だが、この緊急事態に使うのに躊躇いはない。とにかく…シンさんを。
転移した先のギルドで俺から見たモノはなんと。。。
《招石》から飛び出した《金鵄》に続いて《ラック》
シンさん!!!
これまでの俺の努力は木っ端微塵だ。
《ラック》が手元にある理由よりも、コレが人の目に触れた事実の方が重い。
人目があるギルド内の出来事だ。
各国の密偵もいるはず。
シンさんの存在がこれでバレたのだ。
ため息混じりのブヤンにチラ見され、説明を請け負う。
《ラック》の価値を確実に知らないシンさんは悪い事をしたと恐縮している。
違うのだ。《ラック》と言うモノ事態がこの世界に存在する事実が起こす大問題よりも、更にシンさんの存在こそが我々が必死に守ってきた秘密そのものだのだから。
説明をしようとした俺を見つめる、シンさんの申し訳無さそうな瞳に改めてガイエ様の先読みの力を思う。
『シンさんは、恐らく世界に知られる事になる。それは其方らが如何に努力しても逆らえぬ事実。問題はそれからだ。だからこそ、そこな眞族の間抜けとも手を組んで王宮へ向かうのだ。
サテ。お主はシンさんを信じみよ。彼はお主が思うより…』
「サテさん。サテさん。どうしましたか?
俺の《ラック》が迷惑かけて申し訳ないです。古代竜のボウさんから高値で売れるよって教わったので…つい出来心です。コレはサテさんの管理にしてください。もう、ボウさんと一緒に拾いに行かないので…」
相変わらず斜め上の思考で詫びるシンさんに笑顔で「大丈夫です。《ラック》は人びとに喜ばれる品物です。まずは説明をしますね」と話す。
話しながらも、今一度心の中で自分に言い聞かせる。
『ついて行こう。自分の精一杯の力を持って、この人と共に在りたい』と。




