珍客現る?!
やっとだ。
長い道のりだった。
けど、僕はやったんだ!!
本当の本当にココ『スーパー中路』に着いたんだ!!!
噂通りの看板を見上げながら、木の扉を叩いた。
トントン。
胸の鼓動が激しくなる。
遂に、遂に憧れの人に会える。
「どうぞ、開いてますよ?」
柔らかな声がして、木の扉は内側から自動で開いた。
違った!!
開けてくれたんだ。
「おや?
コレは珍しい。
えーと、犬族でいいのかな?
あれ?君ってば…あーー!!!
大丈夫?気を確かに!!!」
ぼやけてゆく意識の中で優しい腕に抱き留められた気がした。
ー信太郎視点ー
うわっ!!!
久しぶりのお客さんは犬族のお子様だった。
ようやく、ご飯にありつけるって期待したのにそのまま気を失っちゃったよ。
しかも、葉っぱやら木屑やら沢山つけて汚れてるなぁ。
普段なら身構えるけど、こんな可愛いお客さんだし久しぶりだからそっと汚れを落とす為にお風呂に湯を沸かす。
この世界には、あんまり湯船がないから驚くかなぁ。
ソファに寝かせたお客さんは、当然いつもの様にスキャナーでピッとする。
うーん。
なになに…。
[ウレ]
犬族 ラフバル村出身
年齢 5歳(人間換算 13歳)
性別 男
体力 50 (現在25)
魔力 0
能力 特になし
備考
子沢山の家から追い出された
憧れの人 中路信太郎
将来の職業 査定屋希望
目の前に浮かんだ査定表をいつもの様に眺めてため息が出た。
人物査定はやっぱり苦手だ。
どうも、正確さに欠けるよ。
何で憧れの人物が俺なの?
あー、自分の妄想補正が入ってるし。
こんなの当てにならない。
だからかなぁ。
お客さんが増えないし、ひもじいし。
そんな考え事をしながら、ソファの方を眺めてまた、ため息をついた。
やっぱりやるしかない。
村のサテさんの所へ行って、お願いするしかない。
借金が嵩むのは辛い。
ここに来る前もブラック企業で働いていていい事なかったけど借金はなかったのに。。。
風呂場のお湯が溜まったから止めると扉へと向かった。
だが、開けるまではいかなかった。
そりゃそうだ。
珍しく二人目の来訪者があったのだから。
しかも、それはこれから尋ねる予定のサテさんなのだから。
「いたーーーー!!!
やっぱり警戒網をくぐり抜けたヤツがいたのか。油断ならないなぁ。
あ!!!
信太郎さん。大丈夫かね?
無事??」
あのね、犬族のお子様くらいでどうにもなりません。それにね、何度も言いますがこんなど田舎の査定屋如きに何もないですって。
平凡中の平凡だけが特技の俺だよ?
と、説明するけど全く聞いてない。
ぺたぺたと身体中を触って無事を確かめるいつもの作業になった。
まぁ…通常運転のサテさんかなぁ。
でも。
そんかサテさんのお裾分けのご飯の美味しさは格別なんだ。
だから、サテさん様々だよ。
サテさんは、安心した様でようやく馬車から荷物を下ろし始めた。手伝いはとうの昔に諦めた。
だって、1ミリも動かなかったから。
わぁ、お裾分けも豪勢だなぁと楽しみしていられた平凡な今日はここまでとなる。
ここから予想外の展開になるからだ。
どうする、俺…。