特訓というもの
会話文多めです
朝食を食べていると、王子様がやってきた。
「おはようございまぁす。」
阻止しようとする騎士達からスルリと避ける姿はランウェイだ。
顔はボコボコだが。
「何しに来た訳?」
冷たくボクっ子がフォークを向ける。お母さん、そんな子に躾けた覚えありませんよ。
心の声(冗談だったのに)を読まれたのかというタイミングで、ボクっ子がこちらをギッと見た。
「ミコ様、あんな事があったのに悠長にサラダつついてる場合じゃありませんよ!なんとか言ってやって下さい!」
うむ。
『ミコたるわたしに見られて困る所など一つも無い!』
バーン!心効果音。ドヤァ。
「い、潔い…じゃなくて!神聖な御身をこのようなチャラチャラしたヤツに晒すなど…。」
珍しくボクっ子がアタフタしている。
「あー。うん。今日もオレ、ビジュいいじゃん。」
顔面をツルリと手でなぞると、あのキラキラ王子フェイスに元通りになった王子様がどうでもよさそうに秘剣を鏡に顔を確認している。
「うわー。朝食が逆流するぅ。」
「吐きそうな奴は退避しろー。」
突然の秘剣晒しに騎士達は阿鼻叫喚だ。
「義姉上様、アンタ裸じゃなかったでしょう。なんで本当の事を言わないの。こうバスタオルを巻いたみたいに薄紅色の薔薇の花を纏ってたじゃん。」
「「「なんだってー!」」」(なんだってー)
てことは、王子様の王子がキラエフェクトかかってたように、シミひとつないわたしの柔肌を晒さないように花で覆われていた訳か。神様も忙しいのに流石過ぎる。これぞ、さす神。
「でもでもお前の穢らわしいモノを見せた事は事実だろ!」
ボクっ子が食い下がる。
『いや、神の采配で見えなかった。大丈夫だ。心配かけたな。』
「ミコ様〜。良かった〜」
泣くなよ、ボクっ子〜。ゴメンて。
「良かった。いや異性の接近を許すなど、一つも良くない。」
セイがブツブツ頭を抱えているが、大丈夫だろうか。
「思春期ですよ。」
わたしの視線に気づいたボクっ子が適当な事を言いながらオムレツを頬張っていた。
※ ※ ※
「よう聖人。昨夜は悪かったな。ウチの騎士も配置しときゃ良かったぜ。」
コロシアムで特訓するというので付いていくと、蛇王が待っていた。
女性騎士達が叫びにすぐ駆けつけてくれたのである。手振りでいやいやとすると、あっそうと軽い返事だ。
「ぐぅ、むざむざと気絶させられやがって。」
ボクっ子のギリギリとした歯ぎしりに騎士達は下を向いた。
「まぁまぁそれだけコイツが強いって事だろ。頼もしいじゃねーか。」
蛇王がとりなすようにボクっ子の肩を叩くが、弾かれていた。
「ただの特訓じゃ、すまない。猛々特訓でアイツを倒すぞ!」
「「おー!」」
いや、倒すのは邪神でしょ。王子様は戦力なんだから倒しちゃダメでしょ。
「まあ、その意気じゃないですか。言ってもゲロゲロしてる程度じゃ、オレにかすり傷一つ付けられませんけどね。」
「「ぐぬぬ」」
ファサっと髪をかきあげ、斜めに見下され、騎士達は悔しそうだ。
王子様が秘剣を早速抜くと、オロロロ組となんとか我慢している組に分かれている。
団長は青い顔で膝をついていて、セイはげっ歯類ではなくなったが、直立不動で時々ブルブル震えている。
「せっかくコロシアム貸したんだから、吐いたやつは後で整地しろよ!」
蛇王の厳しい声が飛ぶ。
「じゃあ、やりましょうか。」
「あ、やっぱりオレもやる感じ?」
「波動を飛ばすので頑張って避けて下さいよ!」
「おいぃ!それ当たったら死ぬやつぅ。」
「頑張れ、蛇王!データ取るから一発位食らってね!」
「死ね!公子!」
フォンと軽く王子様が秘剣を降ると、黒い半月の力が秘剣から放たれる。
「ぐあっ。」
胸に一発食らった蛇王。膝をついて苦しんでいる。
「聖人頼む…。」
しょうがないなぁ。全快!
わたしが回復すると蛇王の服が見事に斜めに裂けていた。
「これキツイぜ。じわじわと蝕まれる感じがする。怨念を感じるぜ。」
「当然でしょう。斬られた神の怨念波ですからね。」
王子様の言葉に怨念がおんねんは不謹慎だなとやめた。
慣れてきたのか、蛇王もなんとか避けられるようになってきた。
全快しなくていいので、わたしも気楽である。三分の一くらいの目の開きで良くなってきた。
蛇王の後ろのコロシアムの壁はボロボロだが。
騎士達も吐く人間が減って来たので、なんか飽きてきた。酷いと言ってはいけない。ミコたるわたしは特訓の必要がないからである。
なんなら騎士段で回復できる人もいるので、そっちで頑張っていただきたい。
そのオーラを汲み取ったのか、ボクっ子が休憩にしましょうかと言ってきた。
「「やったー、休憩だー」」
騎士達と蛇王が喜んだが、王子様が地獄に突き落とす。
「この程度で休憩?何言ってるんですか。義姉上様はいいとして、あんたらは特訓だよ、特訓。」
「回復はどうすんだよ!」
「義姉上様のトコまで運べばいいでしょう。ほらほら時間が無いんだから、続きしますよ。」
「ミコ様がいないと我らがモチベーションががが。」
「義姉上様が見てない時間に、急成長してお褒め頂こう位考えなさい。」
「ハッ!その手があったか!」
「ちなみに邪神とは短期決戦でいきますからね。この秘剣はオレでも1日が限度なんだから。みんなで総攻撃して秘剣でトドメと考えといて下さい。」
「「おー!」」
「ところで我らの神聖力は効くのか?」
「当たり前でしょう。邪神ですよ。」
「じゃあ、なんでそんな邪悪な剣が効くんだよ!」
「これは邪神に効果があって、人が扱える唯一の一振りなんですからね。細かい事は考えない!」
「はあ〜い。」
なんだかんだ仲も良さげである。
これならユキとライに癒して貰いに行っても大丈夫だろう。
「「ああ〜、ミコ様〜」」
「いくな!聖人!オレが死ぬ!」
死ぬ気で避けてくれ蛇王…。
結構酷いミコ様。
これでも一応状況を見極めています。
自分がいなければ王子様が力を調整するだろうと思っていますが、副団長がそうするかどうかは神のみぞ知る…。




