プロローグ & 4月
【プロローグ】
「先輩、結婚しましょう。」
「結婚しますよね。」
「俺が先輩と結婚したらですね、、、」
『私』には今、毎日のように熱烈にプロポーズ(?)をしてくる後輩くんがいる。
その子の名は服部幸多くん。部員たった二人の、文芸部の後輩だ。
『幸せが多い』と書いて幸多くん。その名の通り、彼は毎日をとても楽しく生きている。
これは、そんな後輩くんとの一年間のお話。
【4月】
服部くんが、私の所属する文芸部の部室にやって来たのは、入学式の数日後のことだった。
「新入生だね。入部希望かな?見学かな?」
そう私が声をかける。
「昨日、エントリーグレードのνガンダムを買ったんですよ。」
…はて?予想外の答えが返ってきたぞ。
「エントリーグレードはファンネルが付いてないんですけどね。ハイグレードより、ちょっとマッチョでカッコいいんです。ほら見てくださいここ。違うの。」
そう言うと、彼はカバンから作りかけのロボットを出して私につきだした。
近い。目にツノ刺さるからちょっと離して。
「ええと、ロボットはいいんだけど、君は何か用事があって、ここに来たんじゃないの?」
そう私が問いかけると、彼は思い出したように辺りをキョロキョロ見渡した。
「ここ、たくさん本がありますよね。」
「文芸部の部室だからね。」
「ガンプラの本はありますか?」
「無いけど。」
「そんなバナナ…。」
そう言うと、しかし彼はさして落ち込んだ様子も見せず、模型を作り始めた。
自由すぎないだろうか?
「ちょっと待って。ここは文芸部の部室。君は部外者。駄目だよ勝手に入ってきちゃ。」
「じゃあ俺、文芸部に入部します。」
「え?文芸に興味あるの?」
全然無さそうだけど。
「俺、本読みますよ? 魚とか昆虫とか危険生物の図鑑でしょ。それから『図解お城』とか『ドラゴン最強決定戦』とか、それと…」
なんか違う。
「小説は読むかな?文芸部は小説やエッセイが中心だよ。」
「子供の頃、怪傑ゾロリ好きでした。あと、教科書読みますよ。」
うん。小説には興味が無いね。
そして、はなし終わるとまた模型作りを再開する彼。出ていく気配がない。
困った。可怪しな子が来てしまった。
とはいえ、この文芸部、現在部員は私一人。存続の危機であった。部員は欲しい。
少なくとも活字アレルギーでは無いだろう。そう思うことにして、彼の入部を認めたのだった。




