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人魚冒険譚  作者: マコト
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冒険者になろう





「そういえば、どうして冒険者じゃないって分かったんですか?」



ユーラが今更な質問をすると、レーネは軽くこたえる。



「ん?あぁいや、冒険者は大体初めて行く町で最初に冒険者ギルドに行くんだよ。で、そこでここの事を紹介されてくるからな。あんたは兵士に聞いたって話だし、見た目も可愛らしかったからね。冒険者じゃないんだろうな〜って思ったんだよ。」



「あながち間違いでもなかっただろ?」と聞き返すレーネに「そう…なのか?」と何となく納得出来てなさそうなユーラ。


実は兵士達の愛想がやけに良かったのはユーラの見た目のおかげでもあるのだが、そこそこ長い間美男美女揃いの人魚の中で暮らしていたユーラは美醜感覚が少し鈍り、普通の範囲が大分広くなっていた。少し考えて、「あぁ、この服のせいかな?」と斜め下に納得する。



「ま、なにはともあれ、あんたは冒険者になって、この宿に泊まるんだ。私の事は気軽にレーネさんとでも呼んでおくれ。」



と、茶目っ気たっぷりでウィンクしてくれたレーネにユーラはクスクスと笑いながら返した。



「分かりました、レーネさん!私はユーラって言います。よろしくお願いします!」



「うんうん、よろしくな!それじゃあユーラ、今から冒険者登録に行くんだろ?ささっと部屋の手続きをしてから行きな。そしたらそのまま依頼を受けるのも町をぶらつくのも出来るからね。」



レーネからのありがたいアドバイスに従ってユーラは宿泊手続きを行った。値段は一泊銀貨1枚のところ、冒険者だと銅貨8枚になる。ユーラはとりあえず5日分を銀貨4枚で払った。食事も朝と夜の分がついており冒険者ギルドに併設されている酒場で提供されるようだ。


冒険者ギルドはこの宿屋のひとつ前にあったが、ユーラはただの酒場だと思って通り過ぎていた。レーネに教えて貰わなければ見つけるのは苦労しただろう。


レーネは他にも、常にある採取依頼の薬草の自生場所や気をつけるべき魔物の種類や生息域などをユーラに丁寧に教えてくれた。見た目によらず、いや、ある意味見た目通りなのかレーネは世話焼きだった。ユーラも素直に話を聞くため、事細かに注意事項をあげていくレーネ。おかんか。いいや、女将だ。



「あぁ、あとユーラは見目がいいからね。裏路地のような場所には近づくんじゃないよ!」



至極真っ当な意見だったが、ユーラは「は〜い」と呑気な返事。他人事である。



「全く……。この危機感の無さで冒険者になって大丈夫かねぇ、この子は…。」



レーネは心配そうだが、ユーラは魔法でも(歌で強化すれば)物理でも敵をボッコボコに出来るのでいらない心配だったりはする。



「よし、教えられるのはこんなもんかね。あとはギルド職員が教えてくれるだろ。とりあえず行っておいで!」



「は〜い、レーネさん、いろいろありがとうございます!じゃあいってきま〜す!」



カウンターから手を振るレーネにニコニコと手を振り返しながら扉をでるユーラ。最初はおっかない見た目のレーネにビクビクしていたが、その優しい対応に「いい宿屋紹介してもらったな〜!」とユーラはホクホクだった。








ユーラが早速隣の冒険者ギルドへ入ると、前世で読んでいたファンタジー物と違わず、強面だったり強そうなガタイのあんちゃん達がテーブルで食べ物をつまみながら談笑していた。


その奥に長いカウンターがあり、今は昼時少し過ぎという事もあってか並んでいるものは少なく、カウンターにも数人しかいない。ユーラはとりあえず空いているカウンターに並んだ。


程なく、ユーラの番となり、受け付け係がにこやかに話しかけてくる。



「こんにちは。ご依頼ですか?」



「いえ、冒険者登録を行いたいのですが。」



ユーラの見た目から冒険者登録とは思っていなかった受け付け係は少し驚いた表情をしていたがすぐに落ち着きを取り戻す。



「では、登録手数料に銅貨5枚かかります。」



そういう受け付け係にユーラが銅貨を渡すとかわりに手続き用紙を取り出した。



「それでは、こちらにご記入をお願いします。代筆が必要でしたらお申し付けください。」



「いえ、大丈夫です。」



文字の読み書きは教えて貰っていたためユーラは自分で描き進める。項目は、名前と得意な戦闘技能、ジョブと書かれていた。ジョブについてはユーラは分からなかったため、得意な戦闘技能の欄に「水魔法、歌」と書くと受け付けに返した。



「はい、確かに……。ユーラさん、ですね。この歌、というのは”呪歌”の事ですかね?」



聞き慣れない単語にユーラは「呪歌?」と聞き返す。



「”呪歌”はですね、歌う事で身体能力をあげたり、逆に下げたり出来る、要するにバフ・デバフの歌、の事ですね。そういうくくりの歌、でお間違いありませんか?」



そんな名称があったんだ…と感心しながらユーラは「はい」と頷く。



「あと、ジョブの欄が未記載ですが"神の宣託"をお受けになった事がないという事ですかね?」



またしても知らない単語に首を傾げながら「はい…」と告げるユーラ。



「大丈夫ですよ。冒険者の中には冒険者登録時に初めて"神の宣託"を受けた方が多いですから。」



と、受け付け係はにこやかに言ってくれるがユーラはそもそも"神の宣託"を知らない。だが、ユーラが知らないという事を思いもしないのか受け付け係は話を続ける。



「それに、冒険者ギルドで受けられる"神の宣託"ではまた違ったジョブにつくことが出来ますからそこまで気にする事はありませんよ。この現ジョブからある程度どのようなジョブがオススメか提案させて頂くために書いてもらうものですので。」



ユーラはとりあえず話を合わせるため頷く事しか出来ない。



「ユーラさんは水魔法が得意との事でしたので、魔術師がオススメですね。魔法の威力が上がりますし、新しい魔法が習得しやすくなります。呪歌が使えるとの事でしたので呪詛師や演奏家などもでると思いますが…こちらはバフ・デバフの効果があがりますが、討伐系の依頼はパーティを組むことをオススメします。」



ユーラは次々に出てくる知らない用語に頭が爆発寸勢になっている。



「冒険者ギルドでの"神の宣託"へのお布施は初回は値下げして登録料に含まれているので追加料金はありません。それでは今から宣託部屋へご案内いたしますね。少々お待ちください。」



そういうと受け付け係は奥にいた他の人と交代してカウンターから出てきた。


「こちらへどうぞ。」という案内に付いていくユーラ。「この世界って神様が身近なんだなぁ」と考えていると程なく宣託部屋へと着いた。中はスイカ程の大きさの水晶が置いてある台座と、その奥にベールを被った顔が見えない神像が鎮座していた。



「では、こちらの水晶に手を置いて自分に合うジョブを教えて欲しいと祈ってください。ジョブ名とどのような効果があるかは神様が教えてくださります。」



「おぉ〜」と部屋の荘厳な雰囲気に感動しながらユーラはおそるおそる水晶に手を伸ばす。神社でお参りする時の事を思い出しながら「神様、どうか私に合うジョブを教えてください…」と祈る。すると、水晶が徐々に光始め文字が浮かびあがる。




--------------------


魔術師

魔法攻撃威力上昇

魔力回復速度上昇


祈祷師

バフ効率上昇(大)

回復魔法回復率上昇


呪詛師

デバフ効率上昇(大)

状態異常付与時間上昇


舞闘士

自身へのバフ効率上昇

連続攻撃ダメージ上昇


演奏家

バフデバフ効率上昇

楽器使用時消費魔力減少


声楽家

呪歌による効果上昇

魔力回復速度上昇


--------------------





想定以上の選択肢に戸惑うユーラ。選びきれず受け付け係に話しかける。



「あの、これってもう一度選ぶ事って出来るんですか?」



「はい、銀貨1枚のお布施が必要になりますが"神の宣託"は何回でも受けられますよ。自身の技術を磨くうちに新しいジョブに着くことが可能になる時もありますから。」



それを聞いてユーラは安心し、とりあえず声楽家を選ぶ事にした。ユーラの戦闘スタイルとしては呪歌でバフデバフをばら撒きながら攻撃していくため、呪歌全体が強化されるのは魅力的だったのだ。



「お決まりになられたようですね。それではこちらへどうぞ。」



促されて部屋を出るユーラ。最初の部屋まで戻ってきたが、カウンターではなく、酒場として利用されているスペースのテーブルへと案内された。



「では、こちらの用紙に選んだジョブを書き入れてください。」



と先程名前などを書き込んだ用紙を再び差し出された。ジョブがあった人はジョブの前に元を付けてまた書き込むようになっていたのだ。ユーラは道理でジョブひとつかけばいいだけのスペースが大きかった訳だと納得した。


ジョブに声楽家と書いてユーラは用紙を返すと、受け付け係は用紙を受け取り、「では、少々お待ちください。」と声をかけカウンターの奥へと引っ込んでいった。しばらくすると受け付け係はカードを持ってもどってきた。



「お待たせいたしました。こちらがギルドカードとなります。カードにはランクがありまして、Fランクからスタートしまして、依頼やモンスターの討伐などでランクがあがっていきます。依頼はあちらの依頼掲示板で確認できます。ランク毎に受けられる依頼や、パーティ募集などもありますのでご確認ください。他に何か分からない事があればカウンターでお聞きくださいね。」



「頑張ってください!」とエールを残して受け付け係は去って行こうとしたが……



「待ってください!」




「あの…図書館ってありますかね?」

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