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【コミカライズ2026/1/10発売決定!!】乙女ゲームヒロインの『引き立て役の妹』に転生したので立場を奪ってやることにした。【書籍1巻2巻発売中!】  作者: 陸路りん
第三章

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24.レイラ

「ええーと、これはあなたを見つけたということには……」

「ならないわ。当然でしょう?」

 彼女はミモザの対面に腰掛けて、のんびりと紅茶を味わいながらそう言った。

 目の前のテーブルにはケーキやクッキー、マカロンなどがところ狭しと並べられている。すべて彼女が持ってきたものだ。

「手作りなの」と、彼女は持参したお菓子のように甘くてふわふわとした笑顔で笑った。

「だって今回はわたしが出てきたんだもの。あなたが見つけたわけじゃないわ」

「ですよねー」

 残念ながらそう甘い話はないらしい。

 ミモザはちらりと階下の庭園を見る。いつもは五人いるはずの偽物令嬢達は、よくよく見ると今日は四人だった。

(芸が細かい……)

 それとも、ミモザが全員が偽物だと勘違いしただけで、なんらかの手段を使って本物の彼女が五人の中に紛れ込んでいたのだろうか?

「わたしね、お兄様から話を聞いて、一度ミモザさんと話してみたかったの」

 その言葉にミモザは視線をレイラへと戻した。

「話……?」

「ええ。ミモザさんってご結婚なさっているのでしょう?」

「ええ、まぁ……」

 一体なんの話かといぶかるミモザに、彼女はずい、と身を乗り出した。

 その翡翠の瞳は星を宿したかのようにきらきらと輝いている。

「元聖騎士様とミモザさんは大恋愛をして公開プロポーズをしたって噂を知ってるの! 旦那さんってどんな人? どうやって出会って恋に落ちたのかしら? プロポーズって本当にあの噂の通りだったの?」

(これは……っ!)

 そのあまりの勢いにミモザは若干身を引いた。

 そして悟る。

(恋バナだ……っ!!)

 恋バナを彼女はしようとしている。それもまずいことに、今回はミモザは聞き役ではなく話す役を割り振られているらしい。

 ミモザ、人生初体験だ。

 フレイヤとの恋バナは常に聞き役に徹しているミモザである。

 しどろもどろになりながらも、彼女はなんとかレイラと向き合った。

「え、えーと、どんな人かと言われても……。なんか、恐怖の魔王みたいな……」

「怖い人なの?」

 ミモザは斜め上方を見上げる。少し考えて納得したように頷いた。

「そこそこ」

「怖い人なのに恋に落ちたの? どうして?」

「『どうして』?」

 ずいぶんと難しいことを聞く。

 ミモザはうんうん唸って言葉をひねり出す。

「う、うーん……、怖いだけじゃなくて、放っておくと勝手に不幸に突き進んで行きそうな人だったのでちょっと不安で……」

「『不安』? それって心配だったってこと?」

「まぁ……」

「心配しているうちに恋になったのね! 素敵! ミモザさんは旦那さんのことを支えているのね!」

「『支えて』……?」

 それはどうだろう。

 レオンハルトはミモザなどいなくても一人で立てる人間だ。たとえ不幸に突き進もうとも、不幸なまま、なんの支えもなしに歩み続けることができたことだろう。

 ミモザはそれが気に食わなくて、勝手に彼の進む道を叩き壊しただけだ。

「どっちかというと、余計なお世話をやいた感じですかね。邪魔をしたというか」

 ミモザの返答に彼女はこてん、と首をかしげた。

「『邪魔をした』の?」

「ええ、はい」

「邪魔をしたのに結婚したの?」

「……まぁ」

「両思い?」

「うーん……」

 お互いに好意はある。その形に多少の差異はあるかもしれないが、おそらく、

「両思いと言っても差し支えはないでしょう」

 腕組みをして唸るミモザに、レイラはきょとんとした。しかしすぐにその口元に笑みを浮かべる。

「とっても仲良しなのね」

「え?」

「だって、邪魔をして邪魔をされたのに愛し合っているんでしょう? 仲良しじゃないとそんなの無理よ」

「はぁ……」

 仲がいいか悪いかで言えば仲はいいのだろう。

 ただし、

「今はちょっと喧嘩中ですけど」

 ミモザは手の中にある手紙をぱたぱた振りながら言った。

「たぶんこれも『ラブレター』ではないでしょう」

 とはいえきっと恨み言などは書いてないのだろうなとは思う。

 彼は不満があればこんな回りくどい手段など取らずに物理に訴えるタイプだ。

(たとえば軟禁するとか……)

 ぶるり、とミモザは身を震わせた。

 となると、ますますこの手紙の中身が謎である。

 謝罪をしようとしたにしても、彼が手紙などを寄越すだろうか?

「……そう、そうよね」

(……ん?)

 急に感情を抑えるように落とされた声に、ミモザは顔を上げた。見ると、先ほどまで笑顔だったレイラの顔から、すとんと抜け落ちたように表情がなくなっている。

「レイラさん?」

「どんなに仲が良かったって、相手にがっかりすることくらいあるものね」

 それはミモザに対してというよりも、自分自身に言っているような言葉だった。

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